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ぽかぽか春庭「2003年の貝多羅葉」

2015-05-19 00:00:01 | エッセイ、コラム
20150519
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>2003年5月(3)2003年の貝多羅葉

 2003年の三色七味日記再録を続けています。
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2003/05/06 火 晴れ
ことばの知恵の輪>貝多羅葉

 漢字、SFJ3コマ。

 娘の図書館学総論の宿題に、「貝多羅葉」の読み方と意味を調べよというのが出た。「お母さん、なんて読むの」と聞かれたが、「かいたらは」なのか、「バイタラヨウ」なのか「バイタラは」なのか、わからん。意味もわからない。

 調べたら、「バイタラヨウ。紙が発明される以前の筆記媒体のひとつ。バイタラ(サンスクリット語でPattra)の葉に、鉄筆で経文を書き墨を流し入れたインドの書写物」とわかった。インターネットで調べると、ぞろぞろと資料が出てくる。こんなにいろいろ資料もあり、たぶん、書写媒体の研究とかやっている人には、パピルスなどと同じくらいよく知られた言葉なのだろうが、私は今までまったく知らなかった。

 知らなかったことを新しく知るのは、本当に楽しいことだ。広辞苑にも載っている言葉なので、まったくの専門用語というほどでもなく、仏教関係者にも知られている言葉なのだろう。カタカナ語や若者ことば以外で、言葉が増えることはそう多くない。
 まだまだ知らない言葉がたくさんあるのだと思うと、やはり長生きはしたいね。私が長生きしてたくさん言葉を覚えると、何か世のため人のために役にたつのかと問われれば、何の役にもたちはしないが、私が楽しい。私が楽しければ生きる価値はある。

本日のむいみ:私がことばをどれだけ覚えたところで、世の中社会にとってあんまり意味はない。とわかっていても、ことばコレクションは続く。食玩フィギュアのたぐい。


2003/05/07 水 曇り 
ニッポニア教師日誌>語彙数調査

 午後、教授法2コマ。今年は人数も多いし、日本語教育に興味がないのに単位あわせで受講している学生も多いので、まだきわめてやりにくい。

 貝多羅葉の話などを枕にふって、表記法の発表など。社会人入学の多摩川おじさんは、呉音漢音唐音について発表。レポートもまじめに要約文を書いてきた。1冊は仕上げたが、2冊目はまだ途中という。本気で日本語教師を目指しているらしい。

 NTTの調査表を使って、語彙数チェックを行う。毎年、学生に自分がどれくらい語彙を知っているか、自覚させるためにやっている。NTTの調査票はいろいろなバージョンがあり、一つだけで、「語彙数いくつ」と確定できるものではないが、学生は、自分の語彙数など考えたこともないので、自覚させるためには有効だ。興味をもったら、インターネットにもっと違うバージョンがあるので、やってみて、と勧める。

 最初に日本語学習者は、初級、中級、上級で、どれくらいの語彙数があるか、推測させる。次に、自分は生まれてから今までで、どれくらい日本語の単語を脳内に貯めてきたか予想させる。皆、自分がどれくらい日本語を知っているか、数を数えようと思い立ったこともない。
 それでも、日本語学習者上級者が1万語の語彙数を持つなら、自分はそれ以上はあるだろうと推測できる者もいる。
 去年は「エンゲル係数」の意味がわからなくて「ゲームオーバー」になり、日本語学習者以下になってしまった学生がいたが、今年は皆、順調。一人、懸軍の前まで到達した学生出現。懸軍まで読み方と意味が分った人は、6万語の語彙数。「井上ひさしも懸軍までだったそうです。ちなみに私も」と紹介。
 高校卒業程度で、日本語語彙数3万語が標準。

 私が初めてこの調査をやったとき、自分は人名地名を含めれば10万語ぐらい語彙数があるだろうと思っていた。NTT調査は、人名地名を除いた語彙数だから、10万語よりは少ないとしても、7、8万はいくんじゃないかと思った。6万は予想より少なかった。でも、井上ひさしと同じだからいいや。
 一日一語でもいいから、日本語の数を増やすように言ったが、はたして今時の若者が積極的にことばを覚えようとするだろうか。私はときどき「辞書一冊まるごと読み」をしていることを学生に紹介する。各種辞書類の中から一冊の国語辞書を選び、「あ」から順に各語を読む。知らない語があったら、チェックする。「ん」まで。

 娘の受けた授業では教師が「とっぱぐち」と発言したのだけど、前後の意味から考えて、娘の知らない専門用語として言ったのではなく単に「突破口」のつもりで言ったらしいのだと。私も知らずに自分の「思いこみ読み」をしているかもしれないが、教師たるもの、どこに陥穽ありやもしれぬ。持って心すべし。「思いこみ読み」は、冗談として話していると笑えるトピックでいいのだけれど、授業中やらかすと、とたんに学生から軽蔑の視線を受けることになる。

本日のひがみ:私が学生時代にこの語彙数調査を受けたら、懸軍には届かなかった

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20150519
 語彙数調査は、日本語学と日本語教授法の受講生には、今も毎年実施しています。年々本屋新聞をよく読むという学生は減り続け、よって若者の語彙数も減る一方。ただ、たまに本をよく読むという学生もいる。昔、識字層と非識字層が二分されていたように、これから識語層という階層ができてくるのかもしれません。
 ウェブ友まっき~さんの5月18日のコラム。若者に「よく読書する層」と「まったく本を読まない層」が二極分化していて、中間層がない、という観察、ほんとうにその通りだと思います。語彙貧困層と語彙富裕層。IT株などで儲けるには語彙力などいらないと豪語する人もいるでしょうが、固有のことばの深さと広がりを失ったとき、文化も国力も衰えます。
 
 漢字検定のほかに語彙検定などもできています。どのような方法で日本語力をつけるのであれ、母語で自分の信念や希望を語れない者は、英語にせよ中国語にせよ、習ったところで付け焼き刃になるでしょう。豊かな日本語の基礎力無くして人の成長も国の発展もなし。

 私の語彙力、年々増えていると思いたい。今週は漢字パズルをやって「火床面積」という言葉を知った。焼却炉の火を燃やす部分の面積をいう。焼却炉を製造したり売買したりする業界の専門用語であろう。この言葉を知っても、一生つかう予定はないけれど、新しく知ることは、なんでもうれしい!!

<つづく>
コメント (4)
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