
20150512
ぽかぽか春庭アート散歩>新緑アート(1)フェルメール?in 西洋美術館
4月24日に上野へ。東京芸大美術館の「ダブルインパクト展」と、西洋美術館の常設展を見ました。
西洋美術館の常設展は、平日は観覧者も多くなく、ゆったりと見て回れます。常設展示は65歳以上はいつでも無料公開。
3月17日から、公開されている「フェルメールに帰属『聖プラクセディス』」の前も、一人で独占して見ていられます。
『真珠の首飾りの少女』が東京都美術館に来たときの、順番待ち行列に1時間並んで見ることができたのは数分という観覧とは大違いで、じっくり見ることができました。常設展だと、いつでも見られるという気持ちになるので、見る人も少ないのかもしれません。
イギリスのオークションで10億8千万円払って手に入れた作品を、人々に見せてくれている日本人コレクターに感謝。多くの美術ファンや専門家の目に触れることで作品研究がすすみ、真贋論争が進展することを望んでの公開ではないかと想像しました。

コレクターとしては、西洋美術館に研究を委託して、本物のフェルメールだ決定されれば、絵の価値は何倍に跳ね上がるかもしれず、美術館寄託というのは賢明な方法と思います。本物のフェルメールとのお墨付きが得られれば、おそらくは次のオークションで20億~30億円の値がつくかも知れず、、、、、2004年のオークションではフェルメールの『バージナルの前に座る女』は、真作と判定されたので30億円で個人が落札。はい、すみません。いつもの「値段で絵を見る」をやってしまいました。
『聖プラクセディス』の寄託を受けた西洋美術館は、「フェルメール作」としないで、真作の証拠が出るまでは「フェルメールに帰属」ということで展示しています。
イタリア人画家フェリーチェ・フィチェレッリ (Felice Ficherelli1605~1660)が描いた『聖プラクセディス』の絵を、フェルメールが1655年に模写したとされ、フィチェレッリとフェルメールの両作品を並べて解説をつけたパンフレットが配布されていました。
フェルメールのほうは、聖女が十字架を持っている、などの違う点が解説されており、この作をフェルメールのものではないという論者の意見も載っていました。

私は、若き日のフェルメールが、修行中にフィチェレッリの作品を自ら模写したと思って作品を眺めました。どうせ論争中ならフェルメール作と思って眺めたほうが、寄託したコレクターも気分いいんじゃないかしら。よくわかんないけれど。
絵の具の科学的分析などでは、17世紀にフェルメールの国オランダで使われていた絵の具成分と一致したという結果が出たそうですが、まだフェルメール作という決定的な証拠はありません。署名の「メール」が、のちのフェルメール署名と異なるという論文も出されているそうです。
西洋美術館の作品はほとんどが撮影OKですが、『聖プラクセディス』は寄託作品のため、撮影不可です。見たい人は上野の西洋美術館に行って見ましょう。
東京芸大美術館の『ダブルインパクト明治のニッポンの美展』(2015年4月4日-5月17日)は、欧米に渡って欧米美術に大きな影響を与えた浮世絵などの日本美術と、明治の日本美術界に影響を残した西洋絵画を同時に見る企画。ボストン美術館にある日本画が里帰り展示されていました。
ボストンにこれだけの日本美術が所蔵されているということ。明治期に日本絵画が見捨てられていた時期に、どれだけの国の宝が流出したことか。禄を失った武士たち、娘を遊郭に売る没落士族が大勢いたのですから、床の間の掛け軸くらい、二束三文で売ったことでしょう。
また、政府は日本の工芸品を重要な輸出品として博覧会などで紹介して売りましたから、欧米としては手頃な値段で精緻な日本の工芸品をどんどん買い込んだ、ということもありました。関節すべてが動く人体骨格模型など、現在では作れないような工芸品が、「工芸作品」とも扱われないで売られていったのでした。
そんな中、フェノロサはじめ、日本美術の価値に気づいた西洋人もいました。私の好きなジョサイア・コンドルもその一人。東京大学で建築を教え、最初の教え子である辰野金吾に建築学教授の職を奪われて以後も日本に住み続けました。
日本舞踊のお師匠さんと結婚したコンドル。生け花も習い、英文による生け花の書を世界で最初に出版。日本画は河鍋暁斎に弟子入りしました。暁斎からは「暁英」という名を許され、英文で師匠の伝記を書き、イギリスで出版しました。
河鍋暁斎《地獄太夫》ボストン美術館所蔵

黒田清輝記念館が数年の閉館改築を経て、今年1月から開館していたので、見ました。展示の数は少なくて、前回ここで黒田の代表作のひとつ「智・感・情」を見たときのほうが充実感がありました。でも、建物は耐震工事も終えて復活していたので、また、上野公園に来るたびに立ち寄ろうと思います。いつでも誰でも観覧無料なので。
朝から3つの美術館を回ったけれど、東京芸術大学美術館は招待券もらったのだし、西洋美術館と黒田記念館は無料だし、お金使ったのは、芸大の学食「大浦食堂」で食べた「日替わり定食」のみ。
<つづく>