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ぽかぽか春庭「明治時代初期の五日市憲法草案」

2015-05-03 00:00:01 | エッセイ、コラム
20150503
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>憲法記念日(2)五日市憲法草案

 明治時代初期に、多数の「私擬(しぎ)憲法」が提出されました。(私擬憲法は、60種も存在しました)。
 その中のひとつ、五日市で千葉卓三郎によって提案された憲法草案の一部分を掲載します。
 現行の基本的人権尊重の法精神に劣らない、卓越した案を示しています。
 現行の憲法と比較しながら読むのもいいかもしれません。

 AB首相は「アメリカは日本に民主主義を教えてくれました」と、米議会で演説しました。たしかに、首相のじじ様は、戦争に負けるまで民主主義者を弾圧する側でした。おじじ様は旧満州で権力をふるい、戦後はA級戦犯被疑者となりました。おじじ様は戦犯被疑者から放免されてから、民主主義をアメリカ様に教わったのでしょう。孫息子が「アメリカが民主主義を教えた」と考えるのも、「じっちゃんの名にかけて」としては正しい。
 しかし、じっちゃんたちに弾圧を受けても、民主主義をこの国に願う人々は存在し、どんな人も等しく人権を持つことを主張する人がいたのです。

 われら民草の祖父たちは、早くも明治の世に、自分たちで民主主義のしくみについて考え抜き、選挙で代表を選ぶ方法を考え抜いていたのです。
 私は、自らの頭で基本的人権や民主主義について考えてきた人々がいたことを誇りに思います。
 そして、私もみずからの頭で考えていきたいです。
 
 「千葉卓三郎らによる五日市憲法草案」引用は「国民の権理」と「立法権」のみですが、興味ある方はぜひ全文を。
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 第一章 国民の権理

 四二 左に掲ぐる者を日本国民とす。
   一 凡そ日本国内に生るる者
   二 日本国外に生るるとも日本国人を父母とする子女
   三 帰化の許状を得たる外国人
     但し帰化の外国人が享有すべき其権利は法律別に之を定む。

 四三 左に掲ぐる者は政権の受用を停閣す。
   一 外形の無能(廃疾の類)心性の無能(狂癲白痴の類)
   二 禁獄若くは配流の審判
     但し期満れは政権剥奪の禁を解く。

 四四 左に掲ぐる者は日本国民の権利を失ふ。
   一 外国に帰化し外国の籍に入るもの
   二 日本国帝の允許を経ずて外国政府より官職爵位称号若くは恩賜金を受くる者

 四五 日本国民は各自の権利自由を達す可し。他より妨害す可らず。且国法之を保護す可し。

 四六 日本国民は国憲許す所の財産智識ある者は国事政務に参与し、之れが可否の発言を為し、之を議するの権を有す。

 四七 凡そ日本国民は族籍位階の別を問はず、法律上の前に対しては平等の権利たる可し。

 四八 凡そ日本国民は日本全国に於て同一の法典を準用し、同一の保護を受く可し。地方、及門閥、若くは一人一族に与ふるの時(特)権あることなし。

 四九 凡そ日本国に在居する人民は、内外国人を論せず其身体生命財産名誉を保固す。

 五〇 法律の条規は其効を既往に及ほすことある可らず。

 五一 凡そ日本国民は法律を遵守するに於ては万事に就き予め検閲を受くることなく、自由に其思想意見論説図絵を著述し、之を出板頒行し、或は公衆に対し講談討論演説し、以て之を公にすることを得べし。
    但し其弊害を抑制するに須要なる処分を定めたるの法律に対しては、其責罰を受任す可し。

 五二 凡そ思想自由の権を受用するに因り、犯す所の罪あるときは法律に定めたる時機並に程式に循拠して其責を受く可し。著刻犯の軽重を定むるは法律に定めたる特例を除くの外は、陪審官之を行ふ。

 五三 凡そ日本国民は法律に拠るの外に、或は強て之を為さしめられ、或は強て之を止めしめらるる等のことある可らず。

 五四 凡そ日本国民は集会の性質、或数人連著、或は一個人の資格を以てするも、法律に定めたる程式に循拠し、皇帝国会、及何れのガ(ママ)門にむけても直接に奏呈請願、又上書建白するを得るの権を有す。
    但し該件に因て牢獄に囚附せられ、或は刑罰に処せらるることある可らす。若し政府の処置に関し、又国民相互の事に関し、其他何にても自己の意に無理と思考することあれば、皇帝国会何れのガ(ママ)門に向ても上書建白請願することを得可し。

 五五 凡そ日本国民は華士族平民を論ぜず、其才徳器能に応し国家の文武官僚に拝就する同等の権利を有す。 

 五六 凡そ日本国民は何宗教たるを論ぜず、之を信仰するは各人の自由に任す。然れども政府は何時にても国安を保し、及各宗派の間に平和を保存するに応当なる処分を為すことを得。
    但し国家の法律中に宗旨の性質を負はしむるものは国憲にあらざる者とす。

 五七 凡そ何れの労作工業農耕と雖ども、行儀風俗に戻り国民の安寧若くは健康を傷害するに非れば之を禁制することなし。

 五八 凡そ日本国民は結社集会の目的、若くは其会社の使用する方法に於て国禁を犯し、若くは国難を醸すべきの状なく、又戎器を携ふるに非ずして、平穏に結社集会するの権を有す。
    但し法律は結社集会の弊害を抑制するに須要なる処分を定む。

 五九 凡そ日本国民の信書の秘密を侵すことを得ず。其信書を勾収するは現在の法律に依り法に適したる拿
     捕、又は探索の場合を除くの外、戦時若くは法ガ(ママ)の断案に拠に非れば、之を行ふことを得ず。

 六〇 凡そ日本国民は法律に定めたる時機に際し法律に定示せる規程に循拠するに非れば、之を拘引・招喚・囚捕・禁獄、或は強て其住屋戸鎖を打開することを得ず。

 六一 凡そ日本国民各自の住居は全国中何方にても其人の自由なる可し。而して他より之を侵す可らず。若し家主の承允なく、或は家内より招き呼ぶことなく、又火災水災等を防御する為に非ずして、夜間人家に侵し入ることを得ず。

 六二 凡そ日本国民は財産所有の権を保固にす。如何なる場合と雖ども財産を没収せらるることなし。公規に
    依り其公益たるを証するも、仍ほ時に応ずる至当なる前価の賠償を得るの後に非ざれは、之が財産を買上らるることなかる可し。

 六三 凡そ日本国民は国会に於て決定し、国帝の許可あるに非ざれば、決して租税を賦課せらるることなかる可し。

 六四 凡そ日本国民は当該の裁判官、若くは裁判所に非ざれば、縦令規程の刑法に依り、又其法律に依て定むる所の規程に循ふも、之を糺治裁審することを得ず。

 六五 法律の正条に明示せる所に非ざれば甲乙の別を論ぜず。拘引逮捕糺弾処刑を被ることなし。且つ一たび処断を得たる事件に付、再次の糺弾を受く可らず。

 六六 凡そ日本国民は法律に掲ぐる場合を除くの外、之を拿捕することを得ず。又拿捕する場合に於ては裁判官自ら署名したる文書を以て其理由と劾告者と証人の名を被告者に告知す可し。

 六七 総て拿捕したる者は二十四時間内に裁判官の前に出すことを要す。拿捕したる者を直に放逐すること能はざるときに於ては、裁判官より其理由を明記した〔る〕宣告状を以て該犯を禁錮す可し。右の宣告は力〔めて〕所能的迅速を要し、遅くも三日間内に之を行ふ可し。
    但し裁判官の居住と相隣接する府邑村落の地に於て拿捕するときは、其時より二十四時間内に之を告知す可し。若し裁判官の居住より遠隔する地に於て拿捕するとき〔は〕、其距離遠近に準じ法律に定めた
    る当応の期限内に之を告知す可し。

 六八 右の宣告状を受けたる者の求に因り裁判官の宣告したる事件を遅滞なく控訴し、又上告することを得べし。

 六九 一般犯罪の場合に於て法律に定むる所の保釈を受くるの権を有す。

 七〇 何人も正当の裁判官より阻隔せら〔る〕ることなし。是故に臨時裁判所を設立することを得可らず。

 七一 国事犯の為に死刑を宣告さるることなかる可し。

 七二 凡そ法に違ふて命令し、また放免を怠りたる拿捕は政府より其損害を被りたる者に償金を払ふ可し。

 七三 凡そ日本国民は何人に論なく法式の徴募に〔 〕り、兵器を擁して海陸の軍伍に入り、日本国の為に防護す可し。

 七四 又其所有財産に比率して国家の負任〔公費租税〕を助くるの責を免る可らず。皇族と雖ども税を除免せらるること得可らず。

 七五 国債公費は一般の国民たる者負担の責を免る可らず。

 七六 子弟の教育に於て其学科及教授は自由なる者とす。然れども子弟小学の教育は父兄たる者の免る可らざる責任とす。

 七七 府県令は特別の国法を以て其綱領を制定せらる可し。府県の自治は各地の風俗習例に因る者なるが故に、必らず之に干渉妨害す可らず。其権域は国会と雖ども之を侵す可らざる者とす。


第三篇  立法権    (*第三篇 79条)

  第一章 民撰議院

 七八 民撰議院は選挙会法律に依り定めたる規程に循ひ、撰挙に於て直接投籤法を以て単撰したる代民議
    院を以て成る。
    但し人口二〇万人に付一員を出す可し。

 七九 代民議員の任期三ヶ年とし、二ヶ年毎に其半数を改撰す可し。
    但し幾任期も重撰せらるることを得。

 八〇 日本国民にして俗籍に入り(神官僧侶教導職耶蘇宣教師に非る者にして)、政権民権を享有する満三十歳以上の男子にして、定額の財産を所有し、私有地より生ずる歳入あることを証明し、撰挙法に定めたる金額の直税を納るる文武の常職を帯びざる者は、撰挙法に遵ひて議員に撰挙せらるるを得。

 八一 凡そ此に掲げたる分限と要款とを備具する日本国民は、被撰挙人の半数は其区内に限り、其他の半数は何れの県の区にも通して選任せらるることを得。

 八二 代民議員は(撰挙せられたる地方の総代に非ず)日本全国民の総代人なり。故に撰挙人の教令を受くるを要せず。

 八三 婦女・未成年者・治産の禁を受けたる者・白痴瘋癲の者・住居なくして人の奴僕雇傭たる者・政府の助成金を受くる者・及常事犯罪を以て徒刑一ヶ年以上実決の刑に処せられたる者・又稟告されたる失踪人は、代民議員の選挙人たることを得ず。

 八四 民撰議員は日本帝国の財政(租税 国債)に関する方案を起草するの特権を有す。

 八五 民撰議院は往時の施政上の検査、及施政上の弊害の改正を為すの権を有す。

 八六 民撰議院は行政官より出せる起議を討論し、又国帝の起議を改竄するの権を有す。

 八七 民撰議院は緊要なる調査に関し、官吏並に人民を召喚するの権を有す。 

 八八 民撰議院は政事上の非違ありと認めたる官吏(執政官 参議官)を上院に提喚弾劾する特権を有す。

 八九 民撰議院は議院の身上に関し左の事項を処断するの権を有す。
   一 議員民撰議院の命令規則若は特権に違背する者
   二 議員撰挙に関する訴訟

 九〇 民撰議院は其正副議長を議員中より撰挙して国帝の制可を請ふ可し。

 九一 民撰議院の議員は院中に於て為したる討論演説の為に裁判に訴告を受くることなし。

 九二 代民議員は会期中及会期前後二十日間、民事訴訟を受くることあるも答弁するを要せず。
    但し民撰議院の承認を得るときは此限にあらず。

 九三 民撰議院の代民議員は現行犯罪に非れば、下院の前許承認を得ずして、会期中及会期の前後二十日
    間、拘留・囚捕・審判せらるることなし。
    但し現行犯罪の場合に於ても拘致囚捕、或は会期を閉つるの後糺治又囚捕するに於ても、即時至急に裁判所より代民議員を拿捕せしことを民撰議院に通知し、該院をして其件を照査して之を処分せしむ可し。

 九四 民撰議院は請求して会期中及会期の前後廿日間、議員の治罪拘引を停止せしむるの権を有す。

 九五 民撰議院の議長は院中の官員(書記等其他)を任免するの権あり。

 九六 代民議員は会期の間旧議員任期の最終会議に定めたる金給を受く可し。又特別の決議を以て往返の
    旅費を受く可し。

  第二章 元老議院

 九七 元老院は国帝の特権を以て命する所の議官四十名を以て成る。
    但し民撰議院の議員を兼任するを得ず。

 九八 満三十五歳以上にして左の部に列する性格を具ふる日本人に限り、元老院の議官たることを得べし。
   一 民撰議院の議長
   二 民撰議院に撰ばれたること三回に及べる者
   三 執政官諸省卿
   四 参議官
   五 三等官以上に任ぜられし者
   六 日本国の皇族華族
   七 海陸軍の大中少将
   八 特命全権大使及公使
   九 大審院上等裁判所の議長及裁判官又其大検事
   十 地方長官
   十一 勲功ある者及材徳輿望ある者

 九九 元老院の議官は国帝の特命に因りて議員中より之を任ず。

一〇〇 元老院の議官は終身在職する者とす。

一〇一 元老院の議官は一ヶ年三万円に過ぎざる一身俸給を得べし。

一〇二 皇太子及太子の男子は満二十五歳に至り文武の常職を帯びさる者は、元老院の議官に任すること
    〔を〕得。

一〇三 諸租税の賦課を許諾することは、先づ民撰議院に於て之を取り扱ひ、元老院はただ其事ある毎に民撰
    議院の議決案を覆議して、之を決定するか、若くは抛棄するかの外に出でず。決して之を変改することを得可らず。

一〇四 元老院の編制及権利に関する法律は、先づ之を元老院に持出さざるを得ず。民撰議院は唯之を採用するか、棄擲するに過ぎず。決して之を刪添す可らず。

一〇五 元老院は立法権を受用するの外左の三件を掌どる。
   一 民撰議院より提出劾告せられたる執政大臣諸官吏の行政上の不当の事を審糺裁判す。其劾告手続は法律別に之を定む。
   二 国帝身体若くは権威に対し、又は国安に対する重罪犯を法律に定めたる所に循ひ裁判す。
   三 法律に定めたる時機に際し、及ひ其定めたる規程に循ひ元老院議官を裁判す。

一〇六 元老院議官は其現行犯罪に由りて拘捕せらるる時、又は元老院の集会せざるときの外、予め元老院
     の決定承認を経すして、之を糺治し又は拘致囚捕せらるることなし。

一〇七 何れの場合たるを論ぜず、議官を糺治し若くは囚捕する時は、至急に之を元老院に報知し、以て該院権限の処を為さしむ。

  第三章 国会の職権 

一〇八 国家永続の秩序を確定、国家の憲法を議定し、之を添刪更改し、千載不抜の三大制度を興廃する事を
    司る。

一〇九 国会は国帝及立法権を有する元老院・民撰議院を以て成る。

一一〇 国会は総て公行し、公衆の傍聴を許す。
    但し国益のため、或は特異の時機に際し、秘密会議を開くことを要すべきに於ては、議員十人以上の求に因て各院の議長傍聴を禁止するを得。

一一一 国会は総て日本国民を代理する者にして、国帝の制可を須つの外、総て法律を起草し、之を制定する
    の立法権を有す。

一一二 国会は政府に於て、若し憲法・或は宗教・或は道徳・或は信教自由・或は各人の自由・或は法律上に
    於て、諸民平等の遵奉財産所有権、或は原則に違背し、或は邦国の防御を傷害するが如きことあれば、めて之が反対説を主張し、之が根元に遡り、其公布を拒絶するの権を有す。

一一三 国会の一部に於て否拒したる法案は、同時の集会に於て再び提出するを得ず。

一一四 国会は公法及私法を製定す可し。即ち国家至要の建国制度、及根原法一般の私法、及民事訴訟法・
    海上法・礦坑法・山林法・刑法・治罪法・庶租税の徴収、及国財を料理するの原則を議定し、兵役の義務に関する原則・国財の歳出入予算表を規定す。

一一五 国会は租税賦課の認許権、及工部に関して取立たる金額使用方を決し、又国債を募り、国家の信任(紙幣公債証書発行)を使用するの認許権を有す。 

一一六 国会は租税全局(法律規則に違背せしか、処置其宜きを得ざるや)を監督するの権を有す。

一一七 国会議する所の法案は其討議の際に於て、国帝之を中止し、若くは禁止することを得ず。

一一八 国会(両院)共に規則を設け其院事を処置するの権を有す。

一一九 国会は其議決に依りて憲法の欠典を補充するの権、総て憲法に違背の所業は之を矯正するの権、新
    法律及憲法変更の発議の権を有す。

一二〇 国会は全国民の為に法律の主旨を釈明す可し。

一二一 国会は国帝・太子・摂政官若くは摂政をして、国憲及法律を遵守するの宣誓詞を宣へしむ。

一二二 国会は国憲に掲げたる時機に於て、摂政を撰挙し其権域を〔指〕定し、未成年なる国帝の太保を任命
     す。

一二三 国会は民撰議院より論劾せられて元老院の裁判を受けたる執政の責罰を実行す。

一二四 国会は内外の国債を募り起し、国土の領地を典売し、或は境(ママ)域を変更し、府県を発立分合し、其
     他の行政企画を決定するの権を有す。

一二五 国会は国家総歳入出を計算したる(予算表)を検視の上、同意の時は之を認許す。

一二六 国会は国事の為めに緊要なる時機に際し、政府の請に応し議員に該特務を許認指定す。

一二七 国会は国帝没(ママ)するときは、若くは帝位を空ふするとき、既往の施政を検査し、及施政上の弊害を
     改正す。

一二八 国会は帝国若くは港内に外国海陸軍兵の侵入を允否す。

一二九 国会は毎歳政府の起議に因り、平時若くは臨時海陸軍兵を限定す。

一三〇 国会は内外国債を還償するに適宜なる方法を議定す。

一三一 国会は帝国に法律を施行するために必要なる行政の規則と行政の設立、及其不全備を補ふ法を決定
    す。

一三二 国会は政府官僚及其奉(ママ)給を改正設定し、若くは之を廃止す。

一三三 国会は貨幣の斤量・価格・銘誌・模画・名称、及度量衡の原位を定む。

一三四 国会は外国との条約を議定す。

一三五 国会は兵役義務執行の方法、及其規則と期限とに関する事、就中毎歳召募す可き徴兵員数の定数、
     及予備馬匹の賦課、兵士の糧食屯営の総則に関する事を議定す。

一三六 政府の歳計予算表の規則、及諸租税賦課の毎歳決議、政府の決算表並(ママ)に会計管理成跡の検
     査、新公債証券の発出、政府旧債の変更、官地の売易貸与、専売並(ママ)特権の法律、総て全国に通
     する会計諸般の事務を決定す。

一三七 金銀銅貨及銀行証券の発出に関する事務の規則、税関・貿易・電線・駅逓・鉄道・航運の事、其他全
     国通運の方法を議定す。

一三八 証券の銀行、工業の特準、度量衡製造の模型・記印の保護の法律を決定す。

一三九 医薬の法律、及伝染病・家畜疫疾防護の法律を定む。

  第四章 国会開閉

一四〇 国会は両議院共に必ず勅命を以て毎歳同時に之を開くべし。

一四一 国帝は国安の為に須要とする時機に於ては、両議員の議決を不認可し、其議会を中止し、紛議するに
     当りては其議員(ママ)に解散を命するの権を有す。然れども此場合に当りては必らず四十日内に新議員
     を撰挙せしめ、二ヶ月間内に之を召集して再開す可し。

一四二 国帝崩して国会の召集期に至るも尚ほ之を召集する者無き時は、国会自ら参集して開会することを
    得。

一四三 国会は国帝の崩御に遭ふも、嗣帝より解散の命ある迄は解散せず。定期の会議を続くることを得。

一四四 国会の閉期に当りて、次期の国会未だ開かざるの間に国帝崩御することあるときは、議員自ら参集し
    て国会を開くことを得。若し嗣帝より解散の命あるに非ざれば定期の会議を続くることを得。      

一四五 議員の撰挙既に畢り未だ国会を開かざるの間に於て、国帝の崩御に遭ふて尚ほ之を開く者なきとき
     は、其議員自ら参集して之を開くことを得。若し嗣帝より解散の命あるに非ざれば定期の会議を続く
     ることを得。

一四六 国会の議員其年限既に尽きて次期の議員未だ撰挙せられざる間に、国帝崩御するときは、前期の議
     員集会して一期の会を開くことを得。

一四七 各議院の集会は同時にす可し。若し其一院集会して他の一院集会せざるときは国会の権利を有せず。
     但し糾弾裁判の為〔に〕元老院を開くは其法庭の資格たるを以て此限にあらず。

一四八 各議院議員の出席過半数に至らざれば会議を開くことを得ず。


~~~~~~~~~~~

 むろん、五日市憲法草案とて、完璧なものではありませんでした。しかし、旧帝国憲法と比べてみれば、ずっと現行憲法の基本的人権の考え方に近いことがわかります。
 米議会で「日本はアメリカに民主主義を教えてもらった」と、しっぽをふりふり愛想をふりまいたりせず、「日本には明治時代から民主主義を達成しようとした人々がいたけれど、僕のじいさまたちはそれを弾圧したから、戦争に負けるまで主権は国民にありませんでした」と歴史的事実を述べたらよかったのです。

 五日市憲法草案など、明治期の私擬憲法について、私と同じ感想を持つ方がいたことを知り、たいへんうれしく思ったので、昨年の5月3日に引用しました。こちらも再録します。

皇后様コメント(2013年10月誕生日のおことば)
 5月の憲法記念日をはさみ,今年は憲法をめぐり,例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。主に新聞紙上でこうした論議に触れながら,かつて,あきる野市の五日市を訪れた時,郷土館で見せて頂いた「五日市憲法草案」のことをしきりに思い出しておりました。明治憲法の公布(明治22年)に先立ち,地域の小学校の教員,地主や農民が,寄り合い,討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で,基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務,法の下の平等,更に言論の自由,信教の自由など,204条が書かれており,地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が,日本各地の少なくとも40数か所で作られていたと聞きましたが,近代日本の黎明期に生きた人々の,政治参加への強い意欲や,自国の未来にかけた熱い願いに触れ,深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で,市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして,世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います。    

<おわり>
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