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ぽかぽか春庭「ポツダム宣言・原文と現代語訳」

2015-07-26 00:00:01 | エッセイ、コラム
20150726
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>70年前の夏に(1)ポツダム宣言・原文と現代語訳
 
  私は、30年前にようやくポツダム宣言を読みました。
 中学高校の日本史授業では、現代史は1コマくらいですっとばし、「ポツダム宣言を読む」なんて授業は受けたこともありませんでした。おそらくABさんも同じような日本史学習だったとは思います。しかし、一国の運命に責任を持つべき立場になったのなら、「つまびらかに」読み、日本の現代史を十分に理解した上で権力の座につくべきでしょう。

 このようなポツダム宣言について、私は1985年に2度目に入学した大学の日本史授業現代史4単位ではじめてちゃんと読みました。それまでは、ただ歴史年表に出てくる宣言、というだけでした。
 原文の英語が翻訳されています。ただし、外務省による翻訳では読んでもわけわからない日本語に翻訳されているので、日本語をさらに現代日本語に読み解きながらの理解でした。

 ポツダム宣言は、70年前の1945年7月26日に、日本に対して布告されました。
 第二次世界大戦末期に、ソ連の動きを牽制するために、連合国側がトルーマン、チャーチル、蒋介石の連名で日本に対して出した宣言です。

 日本政府(鈴木貫太郎首相)は、この宣言に対して「黙殺」と返答。この「黙殺」は、日本の通信社である同盟通信社は「ignore it entirely(全面的に無視)」と翻訳しました。またロイター(当時の本拠地ロンドン)とAP通信(当時も今も本拠地ニューヨーク)では「Reject(拒否)」と訳され報道されました。

 「拒否」と受け取った連合国側は、これを利用しました。日本政府が、天皇制維持が確保されることを条件としてポツダム宣言受諾の交渉に入ろうとしていたことを察知した連合国側は、受諾が行われる前に、原子爆弾を落とそうとしました。日本のポツダム宣言受諾への動きは、連合国側に筒抜けダダ漏れであったことは、70年前のアメリカの記録を見れば、わかります。

 ただし、ポツダム宣言の拒否が原子爆弾による核攻撃を正当化し「日本を降伏させるために、原子爆弾投下はやむを得なかった」というアメリカ側の主張を未だに信じている米国民がほとんどです。
 「ソビエト連邦のスターリンを牽制するため、原爆というできたばかりの核攻撃を実施した」のは、トルーマンでした。

 日本が無条件降伏を受け入れることがわかっていながらの原爆投下だったのです。ただし、トルーマン自身は、死ぬまで原爆投下を「戦争早期終結のため」という答弁を続けました。
 しかし、アメリカで当時の事情を記録した種々の回想録その他で、トルーマンの自己弁護は自己欺瞞であったことが知られています。知らないのは、アメリカ市民とAB氏だけでしょう。

 歴史に「もしも」はないのだけれど、7月26日にポツダム宣言が伝えられたとき、せめて7月中に受諾決定をしていれば、原爆投下はなかったのです。

 以下、1)現代語訳 2)外務省翻訳 3)英語原文を掲載します。 

ポツダム宣言(ハフィントンポストの現代語訳)
1. 我々、アメリカ合衆国大統領、中華民国主席とイギリス首相は、我々の数億の国民を代表して協議した結果、この戦争終結の機会を日本に与えることで意見が一致した。

2. アメリカ、イギリス、そして中国の陸海空軍は、何度も陸軍、航空編隊の増強を受けて巨大になっており、日本に対して最後の一撃を加える体制が整っている。この軍事力は、日本が抵抗をやめるまで同盟国によって維持できるものだ。

3. 世界中の自由な人々は立ち上がった。それに対してドイツが採った無益かつ無意味な抵抗の結果は、日本の人々に対しても極めて明快な例として示されている。現在日本に向かって集中しつつある力は、ナチスの抵抗に対して用いられた力―全ドイツ民の生活、産業、国土を荒廃させるのに必要だった力―に比べると、測り知れないほど大きいものだ。決意をもって、我々の軍事力全てを投入すれば、日本軍は壊滅し、また、日本の国土は焦土と化すだろう。

4. 日本が決断する時は来ている。知力を欠いた身勝手な軍国主義者によって制御され続け、滅亡の淵に至るのか。それとも、理性の道を選ぶのか。

5. 我々の条件は以下の通り。条件からの逸脱はないものとする。代替条件はない。遅延も一切認めない。

6. 日本の人々をだまし、間違った方向に導き、世界征服に誘った影響勢力や権威・権力は、排除されなければならない。無責任な軍国主義が世界からなくなるまでは、平和、安全、正義の新秩序は実現不可能である。

7. そのような新秩序が確立されるまで、また日本の戦争遂行能力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、連合国軍がこれを占領するものとする。基本的目的の達成を担保するためである。

8. カイロ宣言の条項は履行されるべきものとし、また、日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定するものとする。

9. 日本の軍隊は、完全に武装解除されてから帰還を許し、平和で生産的な生活を営む機会を与えることとする。

10. 我々は、日本を人種差別し、奴隷化するつもりもなければ国を絶滅させるつもりもない。しかし、われわれの捕虜を虐待した者を含めて、全ての戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を行うものとする。日本政府は、日本の人々の間に民主主義的風潮を強化しあるいは復活するにあたって、障害となるものは排除する。言論、宗教、思想の自由及び基本的人権の尊重が確立されなければならない。

11. 日本は産業の維持を許される。そして経済を持続し、正当な戦争賠償の取り立てに充当する。しかし、戦争を目的とする軍備拡張のためのものではない。この目的のため、原材料の入手はこれを許される。ただし、入手と支配とは区別する。世界貿易取引関係への日本の事実上の参加を許すものとする。

12. 連合国占領軍は、その目的達成後そして日本人民の自由なる意志に従って、平和的傾向を帯び、かつ責任ある政府が樹立される限りにおいて、直ちに日本より撤退するものとする。

13. 我々は日本政府に対し日本軍の無条件降伏の宣言を要求する。かつ、誠意を持って実行されるよう、適切かつ十二分な保証を求める。もし拒否すれば、日本は即座にかつ徹底して撃滅される。.



日本国外務省資料による翻訳(出典:外務省編『日本外交年表並主要文書』下巻 1966年刊)
憲法条文・重要文書

ポツダム宣言
千九百四十五年七月二十六日
米、英、支三国宣言
(千九百四十五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ)
一、吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣ハ吾等ノ数億ノ国民ヲ代表シ協議ノ上日本国ニ対シ今次ノ戦争ヲ終結スルノ機会ヲ与フルコトニ意見一致セリ
二、合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリ自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ右軍事力ハ日本国カ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ連合国ノ決意ニ依リ支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ
三、蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レサル程更ニ強大ナルモノナリ吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ
四、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ
五、吾等ノ条件ハ左ノ如シ
吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス
六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス
七、右ノ如キ新秩序カ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力カ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ルマテハ聯合国ノ指定スヘキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スルタメ占領セラルヘシ
八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ
九、日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ
十、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ
十一、日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルカ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルヘシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルカ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラス右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許可サルヘシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルヘシ
十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ
十三、吾等ハ日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス.



原文(出典:国立国会図書館)
Proclamation Defining Terms for Japanese Surrender
Issued, at Potsdam, July 26, 1945

1.We-the President of the United States, the President of the National Government of the Republic of China, and the Prime Minister of Great Britain, representing the hundreds of millions of our countrymen, have conferred and agree that Japan shall be given an opportunity to end this war.

2.The prodigious land, sea and air forces of the United States, the British Empire and of China, many times reinforced by their armies and air fleets from the west, are poised to strike the final blows upon Japan. This military power is sustained and inspired by the determination of all the Allied Nations to prosecute the war against Japan until she ceases to resist.

3.The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan. The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people. The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland.

4.The time has come for Japan to decide whether she will continue to be controlled by those self-willed militaristic advisers whose unintelligent calculations have brought the Empire of Japan to the threshold of annihilation, or whether she will follow the path of reason.

5.Following are our terms. We will not deviate from them. There are no alternatives. We shall brook no delay.

6.There must be eliminated for all time the authority and influence of those who have deceived and misled the people of Japan into embarking on world conquest, for we insist that a new order of peace, security and justice will be impossible until irresponsible militarism is driven from the world.

7.Until such a new order is established and until there is convincing proof that Japan's war-making power is destroyed, points in Japanese territory to be designated by the Allies shall be occupied to secure the achievement of the basic objectives we are here setting forth.

8.The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.

9.The Japanese military forces, after being completely disarmed, shall be permitted to return to their homes with the opportunity to lead peaceful and productive lives.

10.We do not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation, but stern justice shall be meted out to all war criminals, including those who have visited cruelties upon our prisoners. The Japanese Government shall remove all obstacles to the revival and strengthening of democratic tendencies among the Japanese people. Freedom of speech, of religion, and of thought, as well as respect for the fundamental human rights shall be established.

11.Japan shall be permitted to maintain such industries as will sustain her economy and permit the exaction of just reparations in kind, but not those which would enable her to re-arm for war. To this end, access to, as distinguished from control of, raw materials shall be permitted. Eventual Japanese participation in world trade relations shall be permitted.

12.The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan as soon as these objectives have been accomplished and there has been established in accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.

13.We call upon the government of Japan to proclaim now the unconditional surrender of all Japanese armed forces, and to provide proper and adequate assurances of their good faith in such action. The alternative for Japan is prompt and utter destruction.


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20150726
 自由と民主主義のための学生緊急行動(シールズ) SEALEDs(Students  Emergency Action for Liberal Democracy s)は、安保関連法案反対の集会に7万人を集めてデモをおこないました。25日土曜日、隅田川花火見物の96万人にはかないませんけれど。

 従来の政府批判勢力とは一線を画する若者たちの集まりに、期待しています。
 花火もきれいだから大好きですが、自分たちで考え集まった若者をたのもしく思います。  だれからも動員されたわけでも強制されたわけでもなく「今回の憲法違反法案に反対する」と集まった学生、若者たち。
 
自民党の高村正彦副総裁は、NHKの番組で「刹那的な世論だけに頼っていたら、自衛隊も日米安保条約改定もPKO法もできなかった。国民のために必要だと思うことは、多少支持率を下げてもやってきたのが自民党の歴史だ」と述べました。
 SEALEDsの7万人のデモも、「刹那的」であると、自民党の方々は見ているのでしょうが、今回のデモの主張が、これまでのデモとは異なっていることが見えていないのは、「憲法無視」の法案に対して、国民がどうとらえるのかがわかっていないからでしょう。

 民意を「刹那的な世論」とせせら笑う政権が、このまま我意を通すなら、この国は「国を守る」前に崩壊するでしょう。

 70年前の戦争も、たしか「国防のため、我が国を守るため」だったはず。前回の「なかよし」がドイツイタリアで、今回の「おともだち」がアメリカ、という違いはあるけれど。

<つづく>
コメント (2)
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