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ぽかぽか春庭「1997年の日中漁業協定における尖閣諸島の取り扱い、について」

2015-07-29 00:00:01 | エッセイ、コラム
20150729
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>70年前の夏に(3)政治音痴が知りたい、一九九七年のいわゆる日中漁業協定における尖閣諸島の取り扱い、について

 衆議院での安保関連法案の論議は、残念ながら仕事中の国会中継だったので、生中継で見ることはできませんでした。7月27日月曜日に、前期の仕事をすべて終え、成績もつけましたので、これで前期は打ち上げ。お茶碗洗いながらそして遅めの昼ご飯を食べながら、国会中継を見ることができました。

 ひとことで言って、「唖然」でした。
 私が見たのは、小川敏夫議員(民主)、大塚耕平議員(民主)、大野元裕議員(民主)の質問に対して「国民にご理解をいただく」のとは正反対の、のらりくらりとしたはぐらかしに終始し、見ていて「質問の本旨にきちんと答えなさい」と、テレビに向かってヤジをいれたくなりました。

 私は無党派ですから、別段民主党に肩入れする気もないですが、今回の質疑では、3議員の質問はきちんと国民が知りたい点をまとめていたと思います。それに対する答弁は、首相、防衛大臣、外務大臣とも、まったく答えになっていない答弁を繰り返すのみでした。質問者は「こういう答弁をしている首相大臣なのだと、国民が理解するに足る答弁でした。国民をバカにしている」と述べていました。首相は、「中学生にもわかるようにとおっしゃるので」と、そのように答えたと、述べました。

 不詳春庭、中学生に国語を教え大学生には日本語学を教えてきて、中学生よりは幾分なりとも文章読解能力も語彙力もあるつもりですが、まったく理解不能な政府答弁の数々でした。(日本語教師だと胸張っている割にボケナスの春庭。不肖の誤変換に2018年5月15日に気づきました。上記の不詳春庭は不肖春庭です)

 首相はこれまで故意にだろうけれど、衆議院では、中国という国名を出しての答弁はしてきませんでした。
 私は医院に行っていたので、午前中の答弁は見ていなかったですが、27日午前中の質疑で、首相は、中国の南沙諸島埋め立てやガス油田開発の問題を出し、集団的自衛権により、米国との安保提携が必要との答弁を出したということでした。

 午後の質疑の中では、具体的に尖閣諸島の名が出されました。尖閣諸島について論議するなら、私はぜひ、議員さんに質問してほしいことがあります。
 1996年自民党橋本内閣時に締結された「(いわゆる)日中両国の海洋法に関する国際連合条約」と、それに付随する「外務大臣小渕恵三書簡」に関してです。

小渕書簡全文をコピーします。
~~~~~~~~~~~
  本大臣は、本日署名された日本国と中華人民共和国との間の協定に言及するとともに、次のとおり申し述べる光栄を有します。

 日本国政府は、日中両国が同協定第6条(b)の水域における海洋生物資源の維持が過度の開発によって脅かされないことを確保するために協力関係にあることを前提として、中国国民に対して、当該水域において、漁業に関する自国の関係法令を適用しないとの意向を有している。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。
                       1997年11月11日東京で
                          日本国外務大臣小渕恵三

日本国駐在中華人民共和国
 特命全権大使 徐敦信閣下

~~~~~~~~~~~~~

 この日中両国が締結した国際条約および当時の外務大臣名で出された書簡によれば、日本は、「海洋生物資源の維持」ができるなら、日本の尖閣諸島周辺(北緯27度以南)の海域で中国漁民が操業していても、日本の法律を適用しない、と自民党政府が認めているのです。

 7月27日午後の質疑で、首相は「中国漁民による珊瑚密漁問題」について言及していました。もし、この珊瑚密漁が「生物資源の確保」に問題を与えるなら、首相は中国政府に対して、この条文をもとに、堂々と抗議をし、国際社会にも「国際的な条約に違反している」と、外交によって訴えるべきです。

 それをしないでこれまできたのは、北緯27度以南の中国漁船の活動を、自分たちの手で認める条約を結んできたからです。

 この条約に対する衆議院質問とその答弁が、衆議院HPの質問答弁情報にあります。
(平成24年十月二十九日提出 質問第九号 一九九七年のいわゆる日中漁業協定における尖閣諸島の取り扱い等に関する質問主意書)

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b181009.htm
 
 その答弁
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b181009.htm 

 答弁の中でも、この小渕書簡について言及され、答弁では「具体的な事例がない」と、されています。

 2015年の時点で、首相が「中国漁船が密漁により、生物資源を破壊している」と認識しているなら、まさしく「具体的な事例」があるのだから、正式な外交問題として中国政府に申し入れをすべきではないですか。
 それができないのは、上記の条文と書簡、すなわち、中国漁船が尖閣諸島近辺で操業しても、日本はそれに対して日本の法律を適用しないと、自分たちが決定したことであるからです。

 「アメリカと仲良しになれば、尖閣問題で中国ともめてもアメリカの傘の下にいて、後ろ盾になってもらえる」かもしれないと、政府が考えているなら、その前に、自分たちが決めた条約について、国民に説明し、尖閣諸島近辺の海で中国漁船が操業していても、日本側は手出しできないんです、そういうふうに中国政府と約束したから」と、説明してから、「尖閣諸島が危ないことになってもいいんですか」ということを論議してほしい。

 かく言う私も、このような日中漁業協定が取り決められていたことについては、まったく知らずに、尖閣諸島近辺の中国漁船の行いはけしからぬ、と思っていました。知ることは大切です。沖縄返還時の密約も、報道したジャーナリストを社会的に葬る形で長年隠してきました。
 原発問題も、さまざまな放射能漏れ事故があったこと、ほとんど報道されず、知らされないまま安全神話を信じてきました。一般庶民は、かくもだまされやすい。

 前回、首相が「つまびらかに読んではいない」と述べたポツダム宣言を読むところから「事実を知る」を始めました。
 毎年5月3日には憲法を文を、8月には9条を、11月3日には各章を一部ずつ読み返してきましたが、ポツダム宣言はほんとうに久しぶりに読み返したのです。

 無条件降伏を受け入れた1945年後に生まれた私たち世代にとっても、過去を考えずに目をつむっては、未来を考えることができません。

 国民は、現行憲法を受け入れ戦後社会を築き上げてきました。憲法により、主権者は一人一人の国民とされました。国家は、ひとりひとりの個人の幸せに奉仕するために存在するのであり、個人を尊重する国になりました(13条)。

 2006年、第1次安倍内閣のもと、教育基本法の改悪がなされました。
 新たな教育基本法1条では、国を支えるのに相応しい国民の育成を教育の目的とし、第2条では「国を愛する態度が教育の目標」と、されました。これは、独裁権力国家の目標です。話が逆です。国家は、国民から支えてもらえるような国を作るべきなのであり、国家が国民を抑圧しようとしたとき、それに抵抗できる信念有る国民を育てることが教育の目標です。それが、近代国家の存立基盤なのですから。

 この法改正がなされたとき、私は反対しました。1974年から教育を仕事としてきた者として、新たな条文を「つまびらかに」読んで、これはとんでもない改悪だと思いましたが、法は改悪されてしまいました。
 2006年11月28,29,30日の「春庭Annex」に「教育基本法」について反対表明を書きました。しかるに2006年12月には改悪教育基本法が成立してしまいました。

 シンゾーさんは、「反対など言い出す者があっても、押さえつければ誰も反対しなくなる」と、考えただろうと思います。
 参議院が安保関連審議に入ってそうそう、礒崎陽輔首相補佐官が26日、「我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない」と、講演で述べました。すなわち、今回審議の法案を通すためなら、憲法無視も許される、という考え方です。ついつい本音が出てしまったのだろうと思います。首相は否定、火消しにまわるでしょうが、私はこの発言を「現内閣の本音」は、「憲法無視しても、法案通す」だと、受け止めました。

 シンゾーさんは、彼を支持する「おともだち」が「沖縄の新聞は反対ばかりするから、つぶしてしまえ」と発言したことに対して、「個人がそういう発言をするのは、言論の自由だ」とひらきなおりました。
 「言論の自由」とは、権力側に立ち向かおうとする言論を、権力側が封じ込めてしまえないようにするためにあるのです。権力にすり寄る者が、タイコ持ちのごとく権力側の意向を代弁することもを称して「言論の自由」と言うなら、世の中に言論の自由などないのです。
 反対する言論を「つぶす」などということが、ひどい暴力行為であることくらい、わかってほしい。

 春庭は、特定の支持政党を持たない「ノンポリ」人間ですけれど、今、これだけは、言っておきます。

1,現行憲法を支持します。
2,政府がこの夏に変えようとしている安保関連法案に反対します。
3,「言論の自由」のはきちがえに抗議します。
4,フクシマの被害保障、ふるさとの復興が完全に終わるまで、政府と東電の責任を追及します。
5,すべての原発の廃炉を求めます。原発再稼働に反対します。
6,LGTB、傷害の有無、国籍や出身地による差別など、あらゆる差別に反対します。こどもの貧困、高齢者の貧困など、経済格差の拡大に対処を望みます。
7,以上春庭の1~6の考え方とは反対である人の立場を尊重し、私とは反対の意見に耳を傾ける努力を続けます。

 「言論の自由」と言うけれど、この程度のことさえ言えない時代が、すぐそこまで来ているのを感じます。
 「政府のやることに反対する新聞はつぶせ」から「政府に従わない考えをのべる者はつぶせ」に飛ぶのは、ほんの一歩。1875(明治8)年の讒謗律(ざんぼうりつ)から1925(大正14)年の治安維持法までは40年でしたが、2006年教育基本法改悪から「戦争できる国」まではたった10年。

 おそらく、この先、若い人が就職活動するにも、「政府に反対する者は、正社員として採用しない」なんてことにもなっていくのかな、黙って体制にしたがい、長いものに巻かれていたほうが、安穏平和な暮らしができるのだろうか、など、いろいろ迷いはします。

 徴兵制なんぞ復活させなくても、いくらでも兵隊は集められるのだそうです。4年間で500万円もの借金となる奨学金の返済ができない若者が増えています。正社員として就職できなかった若者たち、フリーターで働いても、奨学金返済はおろか、生計を維持する金額も稼げない。

 そういう若者に、「奨学金返済免除」あるいは、「大学学資支給」を打ち出せば、貧乏な家の子は、どしどし自衛隊に応募するからだそうです。現に、アメリカの若者の多くが、この「貧しい家庭の子弟が、大学教育を受けようとしたら、数年の兵役につくしかない」という方法を選んでいると。

 なあるほど。金持ちや政治家の家なら、戦争にいくようなことはない。
 自分の家にことが及ばないから、「兵站は最前線じゃないから兵隊をおくる」と言うのですね。
 「平和を守る法案」というなら、法案に賛成した議員自身とその子弟が、まっさきに「国を守る任務」につく、いう条文を加えてほしい。

 ドイツでは、「平和を守るための後方部隊で」働いた兵士が攻撃を受け、ある者は戦死、ある者は負傷、ある者はPTSDによって心を病んでいるとの報道がありました。でも、それもこれも自分の家の子でないなら、カンケーない、と政治家は言うのでしょう。

 将来、このページを見た「思想検閲警察」が、「このページを書いた非国民を逮捕した」なんていうニュースを見たときは「あはは、黙っていればいいものを、余計なこと書いたから、身から出た錆だよ」と、笑ってください。

<おわり>
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