日本人は英語を話せない、文教政策に影響を与える政治家諸君も話せない、日本人に英語を話すことができるようにしたい、といって、かなり前から英会話中心のオーラル優先が行われてきた。
しかし一向に、英会話はできないままだ。
文科省も官僚が運営している。今度の新型コロナウイルスに関しても、官僚たちは専門家の声を聞かずに、能力もないくせにカラ自信をもった彼ら(「医系技官」)が言いように方針をつくり、その方針についてくる「有識者」というワンコを引き連れて施策を行ってきた。そして失敗しても、誰も責任をとらずに、間違った施策を平然と続ける。
教育政策も同様だ。
本書は、文部官僚と無能な政治家たちが始めたオーラルの英語教育がなぜだめか、またTOEICなどの業者にカネ儲けさせるために急に叫び始めた「4技能」がいかにダメなスローガンであるかを、失礼にならないように、しかし本質的なところから厳しい批判をしている。
私が英語教育に関してもっている考えとほとんどかわらない内容であった。読んでいて教えられたことはTOEICのことである。
日本では「知識・教養としての英語ではなく、オフィスや日常生活における英語によるコミュニケーション能力を幅広く測定します」とあるが、アメリカでは、TOEICを使えば「企業は、より質の良い従業員をそろえられます。求職者や従業員は、競争力を身につけられます」などとして宣伝しているとのこと。つまり、競争社会における英語の出来る労働者を雇用することを目的としているのだ。
それが大学入試に利用されようとしているのである。
新自由主義の魔の手が、最近の英語教育を侵食しているのだ。
本書は厚い本ではない。簡単に読めるものだ。
私は、英語教育での文法、訳読が重要だと思う。英語の文献が読めなくて、内容のない英会話だけできればよいのか、ということだ。