浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

先行きが不安だ

2024-06-30 21:41:11 | 現在社会

 最近、こういうニュースが流れた。23年度税収、70兆円超へ 企業好業績で2年連続大台突破

 税収が増えているのは、一部の正社員の給与が上昇しているからでもあるが、それよりも、消費税収が大幅に伸びているのではないだろうか。「企業業績」もよいのだろうが、大企業は法人税を払っていないところが多い。とにかく、円安→物価上昇→消費税収の大幅増加、というサイクルが確立してしまったようだ。

 明日7月からは、またまたいろいろな物価があがる。ということは政府の消費税収も大幅に増えるということだ。ということはまた、わたしたちがはらう消費税も増えるということだ。

 そうした税金は、大企業などにばらまかれる。大企業は、税金をみずからの懐に入れ、まいないを自民党政治家のパーティー券を購入したり、国民政治協会にカネをまわす。官僚はそうした企業に天下りして高給をはむ。政官財の癒着融合が進み、その中に税金が投入される。政府だけではなく、地方自治体もそれを真似る。

 わが家の食料品などの買い物は、わたしがやっている。週二回程度スーパーに行くが、それぞれ5000円くらい払う。物価の上昇があまりなかった時期には3000円くらいで済んでいた。そのため、金融機関に行く回数も増えた。

 電気、ガス、水道料金は、銀行引き落としになっている。わたしはずっと使用量とその料金をExcelに記録しているが、電気料金が毎月上昇している。

 円安はとどまるところを知らない。政府日銀も、まったくの無策である。日本は、買われる国になってしまった。同時に、庶民の生活を、支配階級である政官財がまったくかえりみなくなった。

 庶民は、そういう仕組みを知ってか知らずか、自民党や公明党に投票し、あるいは棄権する。

 

 

 

 

 先行きが不安になってくる。

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みごと、秘密は守られた!!

2024-06-29 07:42:30 | 社会

 沖縄県において、米兵による性的暴行事件が、沖縄県議選が終わったあとに周知の事実となった。一つの事件は昨年12月、そしてもう一つは今年5月の事件である。これらの事件を、米軍はもちろん、日本政府も知っていたが明らかにしなかった。そして沖縄県警も、である。沖縄県に知らされたのは、県議選の後。秘密はしっかりと守られていた。県議選で、自民党や公明党などが推す候補を当選させるための、「配慮」であった。

 沖縄県はやはり差別されている。本土では、こういうことは起きないだろう。対米隷属の日本政府は、沖縄県警をも指揮下において、政治的配慮を優先させ、このような重大な事件を隠し続けたのだ。

米兵の性的暴行、相次ぎ明るみに 沖縄県に情報共有されなかった背景

 

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「ラベンダー」

2024-06-28 17:34:11 | 国際

 イスラエルによるガザへの侵攻、パレスチナ人に対するジェノサイドを理解する上で、『地平』創刊号は有益な情報を与えている。

 早尾貴紀さんの「イスラエルの過剰な攻撃性に関する三つの問いをめぐって」は、ガザ攻撃の背景など、様々な情報を与えてくれた。

 まずイスラエルの攻撃は、「西洋文明」を背後にしている。彼らの暴力性は「西洋文明」にルーツを持つ。せ「西洋文明」は、アメリカ大陸、アジア・アフリカ、太平洋の諸島へ侵略してきた。そこにあったのは、キリスト教につながる「明白なる天命(Manifest Destiny」がある。そして「西洋文明」のなかにいない者たちを「野蛮人」として大量殺戮を行ってきた。その上で、「西洋文明」の担い手たちは、「入植者植民地主義」を行ってきた。

 イスラエルがやっていることは、この「西洋文明」にルーツを持っているからこそ、たとえばアメリカ大陸に上陸したヨーロッパ人がインディアン(インディオ)におこなったことと相似的なことをするのだ。

 在米イラン人のハミッド・ダバシがこのような主張をしているという紹介であるが、この論考が手に入ったら、翻訳してみたいと思う。

 つぎに、「西洋文明」のもと、「理性の自己実現」を説いたあのヘーゲルが、アジア・アフリカに対する植民地支配と人種差別を正当化する代表的イデオローグだったという。驚きである。

 さらにガザへの空爆の目標には、AIが利用されているというのだ。その名は「ラベンダー」。

 「ラベンダー」は、「約230万人の全住民の行動履歴データが入力された監視システムから自動的に「テロリスト」の確立を判定する。写真や動画、移動した場所、会った人物、通話記録、SNSへの投稿やコメントなどなどが把握されて、それらのデータの集積からAI「ラベンダー」が、ハマースやイスラーム聖戦などの抵抗組織への関与の度合いを評価し、標的生成する。」攻撃対象となる「標的」の生成は、20秒ほどでつくられ、その「標的」が夜間に帰宅したところを爆撃する、その際、家族など20人程度の巻き添えがあることを前提にしている、というのだ。恐ろしい話である。

 そういう世界は、いずれ日本でも行われるだろう。「マイナンバー」がその基盤となるのだろう。

 自由がなく、統制され、国家にとって不要とされる人間が抹殺される、そういう社会が、すでにできあがりつつある。

 

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大杉栄らの墓について

2024-06-28 14:46:41 | 大杉栄・伊藤野枝

 先日、もと毎日新聞記者で、大宅壮一ノンフィクション賞を得たHさんから電話があった。最近静岡市に住むようになり、市営沓谷霊園の大杉栄らの墓(この墓には、大杉栄、伊藤野枝、橘宗一の遺骨が葬られている)に行き、たいへん感動した、ということであった。

 Googleの地図には、大杉らの墓が示されているが、タクシーで行く場合はほかのところに連れて行かれることがある。はじめて行かれる場合は、静岡東中学校の西側、長源院の入り口付近の交差点で降りて、霊園沿いに西方に向かい、左側にある入り口から入ればすぐに大杉らの墓を見つけることが出来る。

 大杉栄・伊藤野枝・橘宗一墓前祭は、昨年の虐殺100周年で、いちおうの幕を引いた。墓前祭は断続的に行われてきた。最近では、2013年から2023年まで毎年9月に行われてきた。

 その実行委員会では、「沓谷だより」を発行してきた。今でもそれを求める方がいるが、現在では最終号しか残っていない。

 今まで大杉についてはいろいろ論じられてきたが、この数年、野枝に注目が集まっている。東大の加藤陽子さんが、NHKの「100分で名著 フェミニズム」で、野枝を取り上げたこと、あるいは「風よ あらしよ」としてNHKのドラマになったり、それが映画化されたりしたからでもある。

 野枝については、もっともっと注目されても良いと思う。私は学生時代から野枝が好きで、彼女の全集はもとより彼女に関係する書物を多数、今でももっている。

 時間的余裕がでたら、もう一度野枝について考えようと思っている。

 さて、大杉らの墓を訪ねた方は、北街道沿いの古書店・水曜文庫に行くとよい。そこでいろいろな情報が手に入るはずである。Hさんも、そこを訪ねていったそうだ。

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日本政府に道義はない!!

2024-06-27 21:03:47 | 政治

 『東京新聞』記事。全文を貼り付ける。

米兵を少女への性暴力で起訴…その後3カ月、国が沖縄県に黙っていたのはなぜ? 「県議選」終わった後に発覚

沖縄でまた米兵絡みの事件が起きた。米空軍兵長の男が16歳未満の少女を自宅に連れ込み、性的暴行を行ったとして、3月に起訴された。外務省も同月に把握していたが、沖縄県に連絡はなかった。速やかに公になっていれば、今月16日投開票だった県議選への影響も計り知れない。起訴後3カ月間、公表されなかった罪深さとは。(宮畑譲)

◆玉城知事は怒りあらわ「強い憤りを禁じ得ない」

 「県民に強い不安を与えるだけでなく、女性の尊厳を踏みにじるものだ。強い憤りを禁じ得ない」。玉城デニー知事は25日、記者団に怒りをあらわにした。
 米兵の男は昨年12月、沖縄県内の公園で少女を誘って車で自宅に連れ去り、16歳未満と知りながら性的暴行をしたとされる。今年3月11日に同県警が書類送検、27日に那覇地検がわいせつ目的誘拐と不同意性交の罪で起訴した。
 起訴を受け、外務省はエマニュエル駐日米大使に抗議したが、今月25日に県が確認するまで連絡しなかった。玉城知事は「信頼関係において著しく不信を招くものでしかない」と非難、抗議する意向を示した。

◆沖縄で繰り返されてきた暴行事件

 沖縄では、米兵による女性への暴行事件が繰り返されてきた。1995年、小学生の女児が米兵3人に暴行された事件では、日米地位協定により、日本側が起訴前に米兵の身柄を拘束できず、県民の反基地感情が爆発。参加者8万5000人の県民総決起大会が開かれた。2016年には米軍属が女性を性的暴行目的で襲い、殺害する事件も起きた。
 「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(那覇市)のメンバーで、沖縄で起きた米兵の性犯罪を調べている宮城晴美さんによると、1945年以降、確認できただけで千件を超えるという。「表に出ているだけの数で、訴えていない人は多数いる」と言い「国は米国に綱紀粛正などを求めたというが、実効性があるのか疑問。人ごとのように感じる」と批判する。

◆いつもは当日か翌日には国から県に連絡

 今回、ふに落ちないのは、国が3月には事件を把握しながら、地元自治体に伝えていなかったことだ。
 
 県基地対策課によると、米兵による犯罪が起きると、多くは沖縄防衛局を通じ、警察などが対応した当日や翌日に連絡があるという。ただ後日、把握していなかった事案が判明するケースもあるといい、同課の担当者は「不起訴などで表に出ていない事案もあるだろう」と話す。
 沖縄防衛局は「こちら特報部」の取材に「被害者のプライバシーに関わるような事案については慎重な対応が求められるものと考えている」と回答。外務省沖縄事務所も「検察当局が関係者のプライバシーなどを考慮し、公表するか慎重に判断していると承知している」と答えた。

◆「政局を優先したのか、と勘繰りたくなる」

 気になるのは、16日に投開票された沖縄県議選への影響だ。この選挙では米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設が焦点になり、反対を掲げる玉城知事の支持派が半数を割り込んだ。
 外務省沖縄事務所は「県議選への影響を考慮したというご指摘は当たらない」とするが、沖縄国際大の前泊博盛教授(日米安保論)は「事件が選挙前に明らかになっていたら、大きなハレーションが起きたのは間違いない」と断じる。
 
 日本政府と捜査当局、そして県が歩調を合わせ、被害者のケアに当たるべきだったという声も上がる中、前泊氏は「日本政府は国民の人権、生命財産よりも、政局を優先して隠蔽(いんぺい)したのか、と勘繰りたくなるタイミングで明らかになった」と憤り、さらにこう嘆く。
 「日米安保と米軍基地がある限り、米兵の犯罪行為はなくならない。これは宿痾(しゅくあ)だ。今の政権では米国にものは言えない。再発防止もおぼつかないだろう」
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無駄遣い

2024-06-27 20:41:54 | 政治

 東京都庁のライトアップを、ユーチューブではじめて見た。一日の経費が700万円だとのこと。一回の経費が100万円と「いわれているから、10分間のそれが7回行われているのだろう。

 しかし、これって無駄遣いではないか。東京都庁の近くで、食べることさえ困難な人たちに食事を配布している人びとがいる。かくも物価があがり、生きていくのさえままならない人たちが増えているのに、この無駄遣いは一体何だ!

 行政は、生活困難となっている人たちの生活を支えるべきで、こんなことに公金をつかうべきではない!

 そして公金は、電通の子会社に支払われているという。利権そのものである。

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【本】『芸術新潮』7月号 「愛され夢二の一生」

2024-06-27 08:23:54 | 美術

 夢二の絵や詩も好きである。

 今、東京都庭園美術館で「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」という展覧会が行われていて、『芸術新潮』7月号は、その展覧会に対応して編集発行されたものだ。

 私は夢二に関する本や図録をすでに持っているのだが、しかしこうして夢二の特集号が出版されると、どうしても買いたくなる。

 いくつかの記事があるが、「意外!? 夢二は女性を搾取していない」という対談は、よかった。夢二の人生にはいろいろな女性が登場し、また離れていくが、夢二が女性との間に悶着があったことはない。別れても、夢二を悪く言う女性はいなかった。この標題通りである。対談の中で、「たまきもお葉も、やはり自分の意志で動いている。女性たちを束縛して夢二だけが好き放題していた、というわけではなさそうです。自分で自分の道を決めようとする女性たち、社会にも進出し始めた女性たちに、夢二の作品を通して触れることができる。」と話されているが、その通り、夢二は家父長制的な志向を持っていない。さらにいうなら、夢二は、「大日本帝国」を支える国家主義や侵略的な志向などとは無縁に生きた。

 私はこの点でも、夢二を評価している

 夢二の絵や詩は、いつみても、何らかの抒情を感じる。また一冊本が増えてしまった。

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「才能豊かな空虚な画家」

2024-06-26 20:20:32 | 美術

 日中戦争から太平洋戦争までの間、多くの画家が戦争画(陸軍は「戦争記録画」とした)を描いた。そのなかで、突出して描いたのは戦後日本国籍を捨ててフランス国籍をとった藤田嗣治である。

 藤田は、たくさんの戦争記録画を描いた。その記録を以下に掲げる。画の標題の後に、どの展覧会に出されたかを記した。

南昌飛行場の焼き討ち(1938~9)第 5 回海洋美術展
武漢進撃(1938~40)第 5 回海洋美術展
哈爾哈河畔之戦闘(1941)第 2 回聖戦美術展 
十二月八日の真珠湾(1942)第 1 回大東亜戦争美術展
シンガポール最後の日(ブキテマ高地)(1942)第 1 回大東亜戦争美術展
ソロモン海域に於ける米兵の末路(1943)第 2 回大東亜戦争美術展
アッツ島玉砕(1943)決戦美術展
〇〇部隊の死闘ーニューギニア戦線(1943)第 2 回大東亜戦争美術展 
血戦ガダルカナル(1944)陸軍美術展
神兵の救出到る(1944)陸軍美術展
大柿部隊の奮戦(1944)戦時特別文展陸軍省特別出品 
ブキテマの野戦(1944)戦時特別文展陸軍省特別出品
サイパン島同胞臣節を全うす(1945)戦争美術展
薫空挺隊敵陣に強行着陸奮戦す(1945)戦争記録画展

 藤田の戦争記録画は、すべてが戦意高揚を表現したものではなく、有名な「アッツ島玉砕」や、「サイパン島同胞臣節を全うす」は、陰惨な場面が詳細に描かれている。

 今は亡き評論家・加藤周一は、藤田の絵についてこう書いている。

藤田は戦時中の日本を経験し、陸海軍から委嘱されて戦場の絵を描いた。ノモンハンの敗戦から、シンガポール攻略の成功を通って、太平洋諸島に繰り返された全滅の悲劇まで。軍部の担当者が戦闘を記録する大画面を藤田に任せた理由は、彼の画面が抜群の迫真性を持っていたからだという。藤田の側からいえば、そういう仕事を引き受ける他に戦争中絵を描いて暮らすことはできなかったに違いない。その画面には戦争賛美も、軍人の英雄化も、戦意高揚の気配さえもない。藤田は確かに軍部に協力して描いたが、戦争を描いたのではなく、戦場の極端な悲惨さをまさに迫真的に描き出したのである。そこから戦争についてのどういう結論を導き出すかは、画家の仕事ではないと考えていたのだろう。(「藤田嗣治私見」朝日新聞「夕陽妄語」2006年5月24日付)

 私は、文中の「・・・違いない」という点については、戦争の画を描かなかった画家たちもいた、したがって「・・・違いない」は、加藤のあくまでも想像である。そして「その画面」についての記述、「戦場の極端な悲惨さを迫真的に描き出した」という点で、「アッツ島玉砕」はそういう捉え方もできるとは思うが、しかし、藤田は戦時中、こう書いている。

 戦争画を描く第一の要件は、作家そのものに忠誠の精神がみなぎって居らなくてはならぬ。幕末当時の勤皇憂国の志士の気魄がなくてはならぬ。(中略)今日の情勢においては、戦争完遂以外には何物もない。我々は、少なくとも国民がこぞってこの国難を排除して最後の勝利に邁進する時に、我々画家も、戦闘を念頭から去った平和時代に気持ちで作画することも、また作品を見る人をして戦争を忘れしめるような時期でもない。国民を鞭ち、国民を奮起させる絵画または彫刻でなくてはならぬ。戦争は美術を停滞せしめるものとか戦争絵画は絵画を衰頽せしめると考えた人もあるけれども、かえってその反対に、この大東亜戦争は日本絵画史において見ざる一大革命を呼び起こして、天平時代、奈良時代また桃山時代を代表するような昭和時代の一大絵画の様式を創造した。(中略)今日我々が最も努力し甲斐のあるこの絵画の難問題を、この戦争のおかげによって勉強し得、さらにその絵が戦争の戦意高揚のお役にも立ち、後世にも保存せれるということを思ったならば、我々今日の画家ほど幸福なものはなく、誇りを感ずるとともに、その責任の重さはひしひしと我等をうつものである。(『美術』1944年5月号)

 この藤田の文を読む限り、加藤の指摘は当たらないと、私は考える。

 また戦後パリで藤田と交遊のあった野見山暁冶は、こう書いている。

 藤田さんという人は非常に素直な人でした。人を信じてはしょっちゅう騙されていた。私たちにとってフジタの帰化は、一種のコスモポリタンとしての見事な資格を、人格的に掴みとったように思っていたが、どこの土地の人間でもないただの旅人ではなかったのか。常にライトに当たっていなければ生きてゆけない人生がそこにあるようだ。アッツ島もパリも光りだった。帰化さえ光にしたがっている。

戦争がみじめな敗け方で終わった日、藤田は邸内の防空壕に入れてあった、軍部から依頼されて描いた戦争画を全部アトリエに運び出させた。そうして画面に書き入れてあった日本紀元号、題名、本人の署名を絵具で丹念に塗りつぶし、新たに横文字でFUJITAと書き入れた。先生、どうして、と私の女友だちは訝しがった。何しろ戦争画を描いた絵かき達はどうなることかと生きた心地もない折だった。なに今まで日本人にだけしか見せられなかったが、これからは世界の人に見せなきゃならんからね、と画家は臆面もなく答えたという。つまりフジタにとって戦争は、たんにその時代の風俗でしかなかったのかも知れない。

 私は、総合的に見て、野見山の見方に賛同する。藤田は、自画像を何枚も描いている。その自画像をみると、彼はかなりのナルシストだと思わざるを得ない。そして彼の身の処し方から、私は藤田を以下のように結論づけた。

 ライトがあたるなら、何でも描いた。藤田にとって、現実も、戦争も、パリの女たちも、ただ目に映る風景でしかなかった。その風景を、藤田は描いた。その風景が、どのようなものであろうと、そこになにがあろうとなかろうと、喜びがあろうと、悲しみがあろうと、藤田にとってはそれはどうでもよいことだった。ライトがあたる風景を、藤田は描きつづけた。そしてそのライトを藤田は浴びたかった。

 藤田は、もちろん才能豊かな画家であった、しかし空虚な画家であった。

 こういういい方が許されるなら、「専門ばか」とでも言えようか。才能がありすぎたからこそ、描こうとしたその背後に何があるのかをみつめられなかった。彼は、アッツ島やサイパン島の玉砕の場面を表現した。しかしもちろん、彼はその現場にはいなかった。いなかったからこそ、「戦場の極端な悲惨さをまさに迫真的に描き出」すことができたのである。彼にとって、描き出されたその場面は、「現実」ではなかったのである。

 

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東海本社の「中日新聞」

2024-06-26 08:08:27 | メディア

 浜松市で「中日新聞」を購読すると、通常、東海本社発行のものが届く。私は長い間、「朝日新聞」を購読していたが、小泉内閣の郵政民営化選挙(それ以後の郵便事業のサービス低下は目に余る!)の際の社説を読みびっくりして、購読を止めた。その後、しばらく購読しなかったが、新聞販売店から「中日新聞」を購読しはじめたが、これがまたすさまじく、一面トップや社会面に、地元の記事満載の紙面があるにもかかわらず、地方ネタが堂々とトップの位置を占める。それも、批判的な記事ではなく、ヨイショ記事、どうでもいいようなものばかり。そのため、「中日新聞」もやめた。とにかく地域のどうでもいいような記事が、満載。そういう記事を並べ立てて、購読者を増やそうという魂胆なのだろうが、新聞としてのあるべき姿なのか、大いに疑ってしまう。

 しばらく購読していなかったが、ネットで「東京新聞」(中日新聞東京本社発行)を読んでいると、なかなかしっかりした記事が多いので、新聞販売店が来たときに、「東京新聞」なら購読すると言ったところ、半日遅れで届けられる(当初一日遅れ)ということなので購読をはじめた。

 さて東海本社発行の「中日新聞」は、批判的精神はほとんどない。たとえば浜松市の行政運営に反対する動きが掲載されることはあるが、まったくのベタ記事。しかしたとえば、祭典に使う屋台を新調した、という記事は写真付きで大きく扱う。

 今日の東海本社発行の「中日新聞」の一面トップは、「鈴木知事誕生1カ月 「経営の方針」康友流」というヨイショ記事である。新しく静岡県知事になったSUZUKI康友をたたえる記事である。私が鈴木康友を表記するとき、SUZUKI康友とするのは、SUZUKIのトップである鈴木修の言うことをきかない北脇浜松市長を落選させるために、いわば刺客としてのSUZUKI康友が立候補したのであり、市長就任後は、鈴木修の言うことを聞きながら市政を運営し、たとえば浜松市の7区を3区にするという減区案(当初修は、区をなくせと言っていたが、指令指定都市には複数の区を置く必要があるために3区になった)は、修の要求であった。

 そしてそのSUZUKIと「中日新聞」は蜜月関係である。SUZUKIの発表記事は、まず「中日新聞」に掲載され、その後他紙が追うというかたちになっていた(現在は確認していない)。「中日新聞」がSUZUKIにおされて知事になったSUZUKI康友をもちあげるのは、いわば必然と言ってよいだろう。

 「中日新聞」を購読していた友人がもうやめる、と言ってきた。「読むところがない」というのである。そうだろうと思う。

 「東京新聞」は批判的精神が横溢している。東海本社の「中日新聞」は、批判的精神がほとんど見られない。そのような区別がどうしてかといえば、どういう記事を載せれば購読者が増えるのか、そのような経営的な観点からの紙面なのであろう。

 1930年代、戦争へとひた走る「大日本帝国」に、すべての新聞は追従していった。その理由は、国家による統制もあったが、国民が好戦化していくなかで、戦争の記事を国民が求めたからでもある。

 これも経営的な観点からである。メディアとは、そういうものであることを知っておく必要があるだろう。

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ガザのこと

2024-06-24 20:25:35 | 国際

 若い頃、アメリカ軍がベトナムに襲いかかり、無辜の民を虐殺していた事実は、いつも私の心に重くのしかかっていた。それを振り払うように、ベトナム戦争反対の運動に参加した。

 今、同じような、いやもっとひどい状況がガザで繰り広げられている。

 『地平』に掲載された岡真理の「ガザ 存在の耐えられない軽さ」を読み、まさにパレスチナの人びとを根こそぎ一掃するという、イスラエル国家の野望をみる。しかしそのイスラエル国家の野望、すなわちガザの人びとへのジェノサイドが、止まらない。日々、ガザで〇〇人が殺された、というニュースが流れる。

 どうしたらイスラエルの蛮行を止めることができるのか。いやイスラエルの蛮行は、おそらく止まらない。建国前から、イスラエル国家を建国しようとした集団、シオニストは、当初からパレスチナに住む人びとをいずれは一掃して、ユダヤ人だけの国家をつくろうとしていたからだ。ジェノサイドは、イスラエル国家の既定方針であった。

 何度も書くが、ユダヤ人迫害の当事者は、キリスト教徒である。パレスチナの地では、ユダヤ教徒とムスリムとは共存してきたのだ。キリスト教徒がユダヤ人を迫害し、その迫害の後始末をパレスチナに押しつけたのだ。それの流れに乗って、シオニストたちはパレスチナに住む人びとを虐殺し、追放し、難民化させる中でイスラエル国家をつくりだした。

 『週刊金曜日』6月21日号の「真の狙いはパレスチナ難民の帰還権抹消だ」は、国連の動きをあとづけ、国連の動きを無視していたイスラエルと、それを支えるアメリカ合州国の醜い姿を示す。

 そもそも、国連が勝手に、ユダヤ人国家の建設をパレスチナに設定したところからパレスチナ問題は発生した。1947年のことだ。シオニストは、そこにもともと住んでいたパレスチナ人を襲撃し、殺し、そして追放した。あまりにひどい!!

 そこで、1948年12月、国連は「可能な時期での難民の帰還とそれを望まない場合の財産の補償」を認める国連総会決議194号が可決された。それに基づき、国連パレスチナ和解委員会(UNCCP)がつくられた。しかし、イスラエルは交渉を拒否、「和解」はイスラエルによって葬り去られた。UNCCPは機能不全となった。

 そのため、1949年、「パレスチナ難民への人道援助・仕事の提供のための暫定機関」がつくられた(UNRWA)。パレスチナ難民救済事業機関である。UNRWAは、「人道援助に加え、帰還権が実施されるまで難民の生活を国連機関として支える」というものだ。

 国連による、1947年の「パレスチナ分割決議」が、多くの難民を生みだしたのであるから、当然国連には責任がある。

 ところで、難民に関しては、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)があるが、パレスチナ難民には、UNHCRは手を出さない。パレスチナ難民は、国籍を持つ国で迫害を受けて難民となるというふつうの難民とは異なり、国連が生みだした人びとであるからだ。

 UNHCRの難民保護は、物理的保護(難民・国内避難民の安全の確保)、物質的保護(基本的ニーズを満たすための救援)、法的保護(権利保障と永久的解決の保障)の三つの働きをする。ところがUNRWAは、物質的保護、「医療・教育・食料や労働の提供」だけである。安全の確保は、任務外なのである。

 イスラエルのジェノサイド政策により、ガザでは「医療・教育・食料や労働の提供」でさえできない状態だ。

 イスラエルの国連無視、そしてジェノサイド、それができるのは、あのアメリカ帝国が支持しているからだ。

 日本は、アメリカ帝国に隷属した国家である。であるがゆえに、日本政府も、日本政府と仲よくしている日本メディアも、イスラエルを批判しない。ロシアのウクライナ侵攻を強く批判するのに、イスラエルのガザでのジェノサイドにはほとんど関心を示さない。

 先にあげた、岡真理の論文が、それを厳しく指摘する。「イスラエル政府の発表をそのまま検証もせず報道する姿勢ともあいまって、いまだに主流メディアの報道に信をおき、これらを唯一の情報源にしている市民が、イスラエルのありようを批判的に問題にし、政治的に批判をあげることを抑制する結果にもつながる。」と。

 だからこそ、事実を知るためには、今や新聞やテレビではなく、『地平』『世界』『週刊金曜日』という雑誌に目を通さなければならないのである。

 何とかしたい、ジェノサイドを止めなければ・・・・

 

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庶民は生活不安を持ちながら生きているのに・・

2024-06-23 09:37:41 | 政治

 自民党議員は、ほんとうに犯罪者集団だと思う。そういう犯罪者集団にカネを渡し、票を入れている人びとは共犯ではないか。そういう犯罪に手を染めている人びとが政治や経済の権力を保持しているのだ。

岸田総理に新たな“脱法パーティー”疑惑 “岸田方式”と専門家が指摘する手法とは 自民党・萩生田氏にも新疑惑【報道特集】| TBS NEWS DIG

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「新しい地平を」

2024-06-22 21:59:09 | 

 今日の『東京新聞』書評欄に、珍しく、マルクスの『経済学・哲学草稿』が、出ていた。同社の記者が推薦したものだ。

 高校生から大学生にかけて、また歴史研究に従事するなかで、私も同じ世代の人びとと同じように、マルクスやエンゲルス、レーニンを読んできたし、またマルクス主義に関わる著作もたくさん読んできた。社会科学に関心のある者は、マルクス、エンゲルス、レーニン、さらにマックス・ウエーバーをも読みこなしていた。

 私は高校時代、社会科学研究会(社研)という、高校に認可されていないサークルの一員であった。主に、私より一年上の学年の人たちがそこには集まっていた。彼らにはいろいろなことを教えられた。なかでも、Kさんは、個人個人に貸し与えられたロッカーにベトナム戦争関連の本を入れていて、自由に読んでくださいと、いつもあけていた。

 私たちがマルクスなどを読んだ背景には、アメリカによる容赦ないベトナムへの侵略戦争があったと思う。私も、ベトナム戦争反対の運動に関わり、当初はバートランド・ラッセル平和財団のシールなどを購入していたが、のちに浜松ベ平連にも関わるようになった。板屋町にあった喫茶店のマスターなどが中心にいた。

 本稿は、そういう昔話をするためのものではなく、『地平』創刊号に掲載されている酒井隆史の論文の紹介である。「“過激な中道”に抗して」という表題である。

 アメリカには、Nationという雑誌がある。以前は私もアクセスしていたが、最近はまったく見てもいなかった。左派系の良心的な雑誌である。2022年、社長に32歳のバスカー・サンカラが就任したという。同誌も出版部数が減っていたが、サンカラが社長になってから復活したという。

 サンカラは、それ以前、2010年Jacobin(ジャコバン)という雑誌を創刊していた。サンカラは、2009年ジョージワシントン大学で歴史学を学んでいたが、体調が悪化したことから一年間、西洋マルクス主義と社会主義文献をひたすら読んだ。そして発刊したのが、Jacobinであった。そこでは「なによりもマルクシズムをベースとしながら大衆運動とそこから生まれた知的模索の歴史がいくども検証され、現代化する努力がつづけられていた。」このJacobinの論調に、酒井は全面的に賛同は出来ないとしながら、「学ぶべきものは多い」としている。

 サンカラは、Jacobinは「中道」ではなく、「親しみやすさ」と「政治的真剣さ」をあわせもった、ポスト資本主義としての「ソーシャリズム」を打ちだした、という。

 1990年代のイギリスのブレア政権以降の「リベラリズム」の政治は、「過激な中道」といわれる。実質的には「現存の経済・政治システムの保全に貢献する」新自由主義で、みずからを「穏健」と見せながら(みずからを「穏健」だと信じこんでいる!)、実際には「全体主義」的な様相を呈している。

 現在の日本も、以前の「左翼」は、「リベラル」と呼ばれることを喜ぶようになっている。「穏健」とみられたいという欲望が広汎に広がっている、というのが酒井の見たてである。

 立憲民主党を「リベラル」とする人が多い。もし新自由主義的な政策を積極的に打ちだす立憲民主党が「リベラル」なら、私はリベラルではない。対米隷属を是とする立憲民主党が「リベラル」なら、私は対米自立を志向するから、私は「リベラル」ではない。私は、「リベラル」と呼ばれるより、「左翼」と呼ばれたい。

 『地平』の創刊特集は、「コトバの復興」である。「左翼」という呼称も、「復興」したいと思う。

 アメリカでは、Jacobinに若い世代が参加して、マルクス主義などをベースにこの腐臭を放つ資本主義のその先に、「ソーシャリズム」を展望しているという。いいじゃないか。私も、『経済学・哲学草稿』を読み直してみようか。

 

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マイナンバーカードの強制

2024-06-21 19:04:05 | 政治

 暴力的にマイナンバーカードを押しつける河野太郎の脅しには、最後まで、私はのらない。つくらない、つかわない、それが私のマイナンバーカードに対する姿勢である。

マイナカード利用ゴリ押しのえげつなさ…医療機関への一時金倍増、携帯契約まで“人質”に

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県営浜松野球場?

2024-06-21 18:55:38 | 政治

 SUZUKIの鈴木修の、市営浜松球場を廃止し、隣接する陸上競技場を拡充する、浜松市には県営野球場をつくらせるという企画がある。鈴木修の支援を受けつづけるSUZUKI康友静岡県知事は、どうしてもその企画を実現しなければならない。

 さて、日本ハムファイターズが去った札幌ドームはばく大な赤字となった。ドーム型の野球場を、という浜松の経済界、札幌ドームの大赤字をみて、さてどう考えるのか。浜松にはプロ野球球団はない! 

「やっぱりこうなった…」札幌ドーム“6億5000万円超の赤字”「新モード」や「ネーミングライツ」も不発で想定の2倍以上に

 

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金権政治が続く・・・

2024-06-20 21:22:37 | 政治

 最近銀行に行くことが多くなっている。おカネをおろしにいくのである。私は食品などを買うときは、現金主義。もちろんアマゾンなどの通販も利用し、その決済はクレジットカードをつかう。現金支出もカード決済の支出もかなり増えていて、今後の生活に不安を持ってしまう。

 しかし、政治家諸氏にとっては、現在の物価高が庶民に大きな打撃を与えていることに、ほとんど関心がないだろう。というのも、戦前の国会議員と異なり、議員となると多額のカネが各方面から入るからだ。

 たとえば、自民党議員はパーティーを開いて多額のカネを集める。パーティー券を購入するのは企業である。企業はなぜ購入するかと言えば、彼らが政治の上で特権を与えられているからだ。政府や自治体の行政を子細にみれば、税金から多額のカネが企業へと流れていることがわかる。

 すでに明らかになっているように、たとえば電通に依頼された業務が、電通から一次下請、二次下請け・・・・というように、他の中小の企業へ流れていくのだが、その際にそれぞれの段階で企業が多額のカネを抜いていく。業務が下請けに流れていく過程でカネを中抜きできる構造というのは、実際に業務を行う末端において低賃金労働をつくり、政府、自治体の無駄な支出を増大させる。

 政府や自治体が民間企業に多額のカネで業務を委託してくれる、そのお返しとして政治家にカネが渡されるのである。

 現在の日本の政治は、金権主義に覆われている。金権主義というのは、要するに利権ということである。あらゆる政府や自治体の政策は、利権にまみれている。

 こういう利権をなくすためには、まず政権交代しなければならない。それは自治体首長も同じである。利権と結びついている構造を変えなければ、庶民に未来はない。

 

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