ペシャワールの会を支えているボクとしては、現地で用水路などを建設修復している人たちの安全を確保するためには、日本が決して海外で戦闘行動に参加しないという原則を、今後も発信続けなければならないと思う。
今日の『朝日』の社説は、その危惧を指摘している。
(社説)安保法制 NGOの危惧にも耳を
2015年8月31日05時00分
新しい安全保障法制の行方が自分たちには死活問題だとして、大きな危惧を抱いている人たちがいる。世界各地で難民支援などに携わるNGO(非政府組織)の関係者だ。
一連の法案には、武装集団に襲われたNGO職員らのもとに自衛隊が駆けつけて警護できるようにするPKO協力法の改正も含まれている。
安倍首相は国会で「自衛隊の近くでNGOが武装集団に襲われた場合でも、自衛隊は駆けつけて救援できない。これでいいのか」と述べ、改正はNGOのためにもなると強調する。
だが、NGOの中には、自衛隊が他国軍への兵站(へいたん)(後方支援)などで活動範囲を大幅に広げることが、やがては自分たちの活動の障害になりかねないとの危機感が強い。
国会審議をにらみ、この思いを共有するNGOが連携する「NGO非戦ネット」を発足させ、これまで58団体と450人が賛同者に名を連ねた。
同ネットが先に発表した声明は、自衛隊の海外での活動が拡大すれば、平和国家としての日本のイメージが一変し、「NGOの活動環境は著しく危険なものに変わることは明らかだ」として廃案を訴えている。
長年の内戦をへて南部が分離独立したスーダンで、07年から人道支援に携わってきた日本国際ボランティアセンター(JVC)の今井高樹・スーダン現地代表は、その背景を次のように説明する。
アラブ諸国への軍事介入も辞さない欧米とは違い、日本は友好的な国と見られている。欧米のNGOがスパイと疑われてしまうのに対し、日本の活動は純粋な人道支援だと評価されている。こうした中、自衛隊が他国軍の後方支援などをすれば、欧米に向けられているのと同様の敵対感情が日本のNGOにも向けられかねないという。
今井さんは11年、政府軍と反政府勢力の戦闘に巻き込まれ、事務所が略奪にあった。非武装の国連車両に救援されて郊外に脱出した。そんな経験から、各勢力が入り乱れるような市街戦の現場に自衛隊が救援に入ることも現実的ではないと語る。
こうした現場の声は、これまでの国会審議では十分に反映されてはいない。
一連の議論では、同盟国との連携強化という「軍」の論理が重視され、国際貢献の一翼を担うNGOなどの「民」の視点が抜け落ちている。
これも、多岐にわたる法案を短期間に一括審議しようという無理が生んだひずみである。