浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

議論ができない時代

2015-11-30 21:45:30 | 社会
 最近書店に行っていない。10月中旬に風邪を引いてから、もう治ってはいるが、人混みのなかには行かないようにしているからだ。

 もう随分前から、とても活字にはすべきではない内容の本が発売されるようになり、そういう本が一定の読者を得ているようだ。週刊誌も、日々のニュースを深く追究するというものではなくなり、センセーショナルな、根拠薄弱な内容のものへと変質した。その際の立場が、きわめていい加減になっている。活字にするならきちんと根拠をもつべきであるし、また論じようとする内容も多方面から照射した客観的なものに仕上げるべきなのに、そうではなく、一方的な「放言」になっている。

 週刊誌などで、理性的な議論ができなくなったと感じ始めてから、もう長い時間が経過している。その思いは強くなりこそすれ、弱まることはない。

 今日もリテラの記事を読み、溜め息をつく。

 http://lite-ra.com/2015/11/post-1735.html
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なんだかおかしい日本人

2015-11-30 16:46:20 | 政治
 アベの経済施策は、大企業や富裕者によりカネが集まり、庶民の生活は、苦しくなっても仕方がない、というもの。それでも、アベがいいという日本人がいる。おかしな人たちだ。

 『日刊ゲンダイ』の記事。

消費支出2カ月連続減…アベノミクスが低下させた生活水準


 先週27日に公表された家計調査(総務省)を丹念に見ると、家計がどれほど苦しくなっているかがよ~く分かる。10月の消費支出(実質)は、前年同月比でマイナス2.4%と2カ月連続で減少した。

「市場予想は前年並みだったので、衝撃の結果でした。円安の影響もあり、食料品の物価は高騰。家計は節約志向を強めたままです。その傾向がクッキリした調査結果です」(株式評論家の倉多慎之助氏)

 10月の消費者物価指数(CPI)は、全体では0.3%上昇に過ぎないが、生鮮食品だけを取り出すとナント9.6%上昇だ。財布のヒモが固くなって当然だろう。消費支出を項目別に見ると、値上がりしても購入量をなかなか減らせない米やパンの支出は増えている。家庭での料理に欠かせない食用油(油脂)の支出も増加だ。弁当や調理パン、おにぎりを指す「主食的調理食品」の出費額も増えた。

「茶類(緑茶など)の消費も増えています。できるだけ外出せず、自宅で食事をする人が多くなっているからでしょう」(スーパー関係者)

 とはいえ、食卓に並ぶおかずの種類や量は減った可能性が高い。生鮮魚類(刺し身など)は2.5%減、生鮮肉(牛肉・豚肉・鶏肉など)も0.8%減だ。ハム・ソーセージといった加工肉は4.8%減、生鮮野菜も6.6%減となっている。

 これだけ節約しても、食料品の値上がりは凄まじく、家計は火の車だ。全体の消費支出は減らしているのに、食費は減るどころか0.8%増えた。こうなると、他の支出を極力抑えるしかない。洋服(4.7%減)は買わず、髪はボサボサでも我慢し(理美容サービス8.2%減)、ベストセラーは図書館で借りる(書籍4.0%減)。傘やカバン類、腕時計などの「身の回り品」(27.6%減)はもはや高根の花だ。

「現状は、収入が増えないのに、食費ばかりがかさんでいます。エンゲル係数も上昇傾向だし、庶民生活は悪化するばかりです」(市場関係者)

 安倍政権がスタートする前の2012年10月のエンゲル係数は23.6%だった。昨年10月は24.1%、そして今年10月は25.7%まで上昇した。アベノミクスは間違いなく日本の生活水準を低下させている。
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ネット中毒

2015-11-29 23:41:12 | 日記
 こういう記事が配信された。


フェイスブックやめると幸せに? デンマークで千人調査

2015年11月29日 16時19分

 【ロンドン共同】ネット交流サイト「フェイスブック(FB)」をやめると幸せになれる? デンマークのシンクタンク「幸福度研究所」は29日までに、FB利用をやめた人は、続けた人と比べて生活への満足度が高まったとする実験結果を公表した。

 日本でも人気のFBは、利用者が身辺の出来事を文章や写真で投稿し合うのが特徴。同研究所は多くの人が他人の素晴らしい経験などの投稿をうらやむ傾向にあるとし、「自分に何が必要かよりも、他人が何を持っているかを気にするようになる」と指摘している。

 実験はデンマーク在住の1095人を二手に分けて行い、一方のグループだけFB利用を禁止した。



 電車に乗ってもスマホをみている人がほとんどだ。犬の散歩をしている人も、自転車に乗っている人も(あぶない!!)、育児をしている人も、スマホの画面に目をやり、あるいは指を動かしている。

 それほどスマホの画面が気になるのか。

 ボクは、FacebookやTwitterは、最初からやるつもりはない。したがって、スマホは持たない。今でも携帯電話だ。それも電話とメール、目覚ましにしか使わない。それに、遠方に行くときしか携帯は持っていかない。日常的には、カバンの中に入れてあって、カバンの近くにいるときだけ、携帯の呼び出しに応じる。

 今、講座の準備をしている。もちろんパソコンの前に座っているのだが、パソコンからはグリーグのピアノコンチェルトが流れている(勿論スピーカーは別に購入してつけている)。パソコンは、情報集めと、ブログと、メールと、原稿作り(プレゼンの準備)にしか使わない。

 ネットなんかに拘束されたくないという思いが強いからだ。
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元気を出せ!

2015-11-29 09:54:21 | 社会
 一昨日、労働組合の学習会で講師を務めた。

 総会の後で、現在の政治情勢について話すことになっていたのだが、総会中の静寂、元気のなさは、一体何だ!!!

 学習会では、マスメディアでは流通していないことを、スライドを使って説明したのだが、なかなかよきく聞いてくれた。1時間のつもりが質疑応答を含めて、90分になった。関心を喚起する材料を提示すれば、よく聞いてくれるのだ。

 だがだがだが・・・・、その元気のなさは何だ!!

 これでも聴こうぜ!

https://www.youtube.com/watch?v=XxAA1KyS3Q0
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「占領時代の仕組みを変える」?

2015-11-29 09:08:17 | 政治
 以下は、『毎日新聞』配信記事。


<首相>「占領時代の仕組み変える」改憲に意欲   毎日新聞 11月28日(土)


 安倍晋三首相は28日、東京都内で自らが会長を務める保守系超党派議連「創生日本」の会合に出席した。首相はあいさつで「憲法改正をはじめ占領時代に作られた仕組みを変えることが(自民党)立党の原点だ」と強調した。その上で、「そうしたことを推進するためにも、来年の参院選で支援をお願いしたい」と訴え、参院選後に憲法改正論議を進める意欲を示した。



 昨日、昔NHKで放映した「NHKスペシャル 海上自衛隊はこうして生まれた」を見た。日本海軍は、なかなかすごい。どういう点ですごいかというと、海軍の利益をどうように守り、拡大するかという方針を貫徹しているからだ。

 海軍は、海軍への予算配分を確保するために日中戦争にのめりこみ、さらに予算獲得のために、対米戦争を煽った。そして敗戦。するとすぐに戦争関係の書類を焼却し、今度は海軍の参謀などエリートへの戦争犯罪追及をかわすために、戦争責任を陸軍になすりつけるように口裏合わせをしたり、あの米内光政にGHQと話し合わせたりした。そのために、エリートの海軍関係者には、かの嶋田繁太郎ですら処刑されなかった。

 さてそれから今度はすぐに海軍再興を図る。その中心となったのが吉田英三(ひでみ)もと大佐である。福島県出身。彼を中心に、第2復員局に海軍再興の研究会を発足させ、GHQはもとよりアメリカ海軍にも手を回し、アメリカの「威光」を利用して、海上警備隊を1952年4月26日に創設させる。アメリカ軍から艦船を払い下げてもらって、幹部や下士官はほとんどが旧海軍出身者である。

 1952年4月26日は、まだ占領下である。

 しかし、戦時中、アメリカ軍と戦った海軍が、すぐに旧敵の力を借りて再興を図るなんて。

 国民は、いつもそうしたどす黒い「野望」の犠牲に供せられるのだ。

 占領下に、日本のアメリカの「属国」制度がつくられた。米軍基地も安保条約もだ。これこそまさに「占領時代につくられた仕組み」ではないか。
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エネルギー

2015-11-28 14:53:34 | 日記
 今日実家で工事があった。給湯器がダメになったので新調したのである。その工事が終わるまで、ボクはWOWOWをみていた。

 1970年代、大学でも高校でも、あるいは街頭でも、大規模なプロテスト運動があった。しかしその後、それは引き潮が足元の砂をさらっていくように、サーッと引いていった。その後は、静かな時代が続いてきた。

 それは日本だけではなく、世界的な傾向でもあった。しかしあのエネルギーはどこへいったのか。

 1970年代後半、その沈滞を吹き飛ばすように、セックスピストルズというパンクロックのグループが誕生した。その一人が今、パブリックイメージリミティッド(Pil)というグループを率いている。セックスピストルズも、放送禁止の歌をつくったり、結成当時から「物議」をかもしてきた。そしてその流れは、今も引き継がれている。
 引き継いでいるのは、そのメンバーであったジョン・ライデン。もちろんもうかなりの年齢ではあるだろうが、しかしその炸裂するリズムは、自然に身体の深奥に眠っているエネルギーを引き出す。

 青春の時期、エネルギーを思い切り表出した者どもよ、起て!と言いたくなるような、エネルギーの爆発だ。吠えろ!叫べ!跳べ!

 人生は一回きりだ。

https://www.youtube.com/watch?v=hGv14xeGUrQ
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右派の大攻勢

2015-11-28 09:45:32 | 政治
 1920年代、アメリカの富裕層は様々なところに投資し、莫大なカネを稼いでいた。しかし、1929年、株価が暴落し、アメリカは恐慌に陥り、それは世界に拡大した。我が国にも1930年代初頭に波及し、「昭和恐慌」として多くの人々を貧困のなかに落とし込んだ。

 アメリカのルーズベルト大統領は、景気の回復をめざし、ニューディール政策を推進した。有効需要を国家が喚起するTVAが有名であるが、それだけではなく、富裕者どもが投機をくり返したことに、恐慌の原因があるとし、投資などに関して様々な規制策を行った。それにより、アメリカは分厚い中流層が誕生し、安定した経済をつくりだした。しかし石油ショック以後、アメリカ経済は低迷状態に入り込んだ。通常のやり方では富裕者がカネ儲けができなくなった。

 そこで富裕者は1920年代の、自由に投機をして、莫大なカネを儲けられた時代を懐かしむようになった。そういう時代の復活を求め、ある人物を大統領にしようとカネを富裕者から集めた。そして、ルーズベルトが行った規制を撤廃させる大統領としてレーガンを支援した。見事にレーガンは大統領となり、富裕者がカネ儲けができるように規制を撤廃しはじめた。その背景にあったのが新自由主義という、あのフリードマンらのシカゴ学派の考え方だ。資本主義をより野蛮なものにする考え方だ。

 富裕者は、みずからのカネ儲けを保障する政治家にカネを与え、そうした政治を継続してきた。さらに彼らは国境を超えてカネ儲けができるように、様々な方策で、たとえばIMFや世界貿易機構などを利用して、アメリカの富裕者がカネ儲けをできるシステムを世界に押しつけていった。もちろん、世界各地の富裕者にもその恩恵は行き渡るようにだ。

 かくて世界は、新自由主義の経済、グローバル経済に覆われるようになった。富裕者がカネをつかって思い通りの政治をやらせるという方法。カネがあれば、政治家だけではなく、学者だって、評論家だって、カネがあるところにすり寄っていく。
 
 みれば分かるように、庶民だって、理念ではなくカネで動く。カネを求めて生きている。生きていくためには仕方がないといえばそれまでだが、カネでみずからを売るということはすべきではないだろう

 さて、そうした方法をいま、ultra-nationalistたちが採用し、湯水の如くカネをつかって、雑誌をだし、本を出し、集会を開き、まだみずからの手中に入れていない新聞やテレビに激しい攻撃を行う。その執拗さは、それに関係する輩の人間性・品性を疑ってしまうのだが、しかし彼らはそんなことはどうでもよいのだ。目的のためには手段を選ばない。嘘もつくし、揚げ足を取るし、捏造もする。嘘も何遍も唱えれば、人びとは信じるようになる。彼らはかのヒトラーの手法を学ぶ。あの麻生もそうしたことを言っていた。

 彼らnationalistたちは、賢明な人々に対して全面戦争を挑んできているのだ。ボクたちは、自由、人権、民主主義、立憲主義を守ることができるかどうか、そういう原理的な闘いに際会しているのだ。

 次の文は、その一端を示している。

http://lite-ra.com/2015/11/post-1725.html 
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トルコによるロシア機撃墜

2015-11-27 17:20:23 | 国際
 この問題は、アメリカとトルコ政府による、計画的な行動ではないかと思っている。トルコがロシア機を撃墜すれば、ロシアが何らかの対抗措置にでてくることは予想される。したがって、トルコによる撃墜は、事前にアメリカの認証を受けているのではないか。

 ISをはじめ、中東に於ける反政府勢力は、なんらかのかたちでアメリカの支援を受けているというのがボクの見立てだ。というのも、ISなど反政府勢力は、中東のもっとも大きな矛盾の焦点であるイスラエル、イスラエルを最大限支援しているのはもちろんアメリカだが、それに対して、いかなる行動もとっていない。ISなど反政府勢力は、アメリカの中東戦略の傘下にはいってその行動が展開されているはずだ。

 今回は、ロシアの反政府勢力に対する攻撃に対するけん制、露仏が協調しようとする動きを停止させたいなど、そういう思惑があるのではないか。

 次の記事も、重要だ。

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-832d.html
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【本】NHKスペシャル取材班『日本海軍400時間の証言』(新潮文庫)

2015-11-26 10:12:49 | 
 これもすばらしい本だ。笠原十九司の『海軍の日中戦争』(平凡社)の趣旨と、この本のそれは基本的に重なる。日本海軍の開戦に果たした役割、日本海軍の影の部分が、この二冊でほぼ明らかになったということだろう。

 陸軍悪玉、海軍善玉説は、ここに崩壊した。

 この本のもとになったのは、NHKスペシャルの同名番組である。ボクもそれを見たのだが、どうもその趣旨を明確にとらえきれなかった。しかしこの本を読んで、この番組の重要性を理解することができた。

 笠原の本も、この番組であつかった「証言」などを参考にしている。

 いすれにしても、海軍の参謀ら、エリートたちは誰も戦争責任を追及されなかった。彼らは、戦争責任を免れるために、証言を合わせたり、GHQに働きかけたり、なかなか卑怯な真似をした。

 今、ナショナリストたちに、東京裁判を再検討しようという動きが出てきているが、本来責任を負うべき者たちが訴追されなかった。

 もう一度、1945年に終わった戦争の責任について、きちんと議論すべきであると思う。日本人は戦争に関する様々な責任について、追及することをしてこなかった。その結果が現在という状況を作り出している。

 ぜひこの本を読んでい欲しい。750円+悪税である。読む価値は十二分にある。
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教育費

2015-11-25 09:27:19 | 政治
 また国立大学の授業料があげられるという情報がある。東京など生活費がかかる大都市の大学に行けない学生たちは、地方の国立大学に行く。しかしその国立大学の授業料も、私立大学をめざして上昇している。また私立大学は、それに追いつかれないように値上げ。


 奨学金の問題も大きいが、それもこれも、自民党公明党政権が、教育に公的な投資をしないからだ。

今日のニュース。


日本の公的教育支出、また最下位 12年のOECD調査



 経済協力開発機構(OECD)は24日、2012年の加盟各国の国内総生産に占める学校など教育機関への公的支出の割合を公表した。日本は3・5%で比較可能な32カ国中、スロバキアと並び最下位だった。OECD平均は4・7%。

 OECDによると前年までは幼稚園など就学前教育への支出を含めた統計で、日本は5年連続で最下位だった。今回から就学前教育を除き、小学校から大学までの支出で統計を取ったため、単純比較はできないが、日本の公的支出が依然低い実態が浮き彫りとなった。

 1位はノルウェーの6・5%。ベルギーとアイスランドの5・9%、フィンランドの5・7%と続いた。

(共同)
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東芝製品は買わない

2015-11-25 08:54:33 | 社会
 東芝が原発産業であり、また会計処理に関して永年に亘って不正を働いてきたことは周知のことである。しかし東芝は反省していない。何という厚顔無恥な会社であることか。

 こういう会社の製品は買わないに限る。

http://mainichi.jp/premier/business/entry/index.html?id=20151110biz00m010018000c
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大学の様相

2015-11-24 17:26:30 | 日記
 『現代思想』の今月号の特集は「大学の終焉」である。この号を購入しようかどうしようかと迷ったが、結局購入した。町田の住人からは、今月号はどうだろうか、読むべきだろうかと尋ねられ、その時には購入してない旨を伝えた。しかし今、読む必要はないかも知れませんと答える。

 すでに大学は、国家や資本の隷属下に置かれている。今月号は、文科省の教育系や人文系の学部学科を淘汰しようという動きのなかで企画されたものだ。この問題を真面目に取り組んでいる文や対談はある。しかし読んでいても展望はない。いずれの分野でも同様の事態が起きていることを確認するだけである。文科省が資本の要求を受けて、あるいは忖度して行おうとしてることに対して、大学関係者はこれに対抗できるのかと問えば、それは無理だと答えるだろう。学校教育法が改悪されても、そして大学の自治が根本から粉砕されようとしても、いま大学のキャンパスには、教員らの闘う姿勢はどこにも視られない。

 正当にこの問題を取り扱っているのは、鵜飼哲・島薗進の対談、池内了・石原俊の論文である。この人たちの研究成果は時に参照させていただいている、立派な研究者である。そこでいわれていることはその通りだと思うが、しかし先述したように、正しいことを正しいと主張し実現する物質的なあるいは人的な動力源がない。

 藤原辰史の「見知らぬ人との人文学」、これは肩肘張らずの優しい文であるが、これがなんとまあ素敵な内容だ。藤原は「自由と平和のための京大有志の会」の主要メンバーだ。農業史を専攻しているようだ。藤原は、有志の会が作成したあの「声明書」の草稿を書いたそうで、なるほどと思った。難しくもなく、格調高い、真実をついたあの声明を書くような人だからこそ、こういう文が書けるのかと思った。

 藤原は、「「見知らぬ人」の声に冷静に耳を傾け、耳で咀嚼する聴力を鍛えることが、人文学を志す人間の毎日の務めである」という。人文学の未来は、なるほどこういうところにあるのだと、自然に納得してしまう。勿論藤原は、そうした例をいくつか書き込んでいるのだが・・・

 ネットで検索してみたところ、なかなか面白い研究をしている人であることを発見した。この人を発見しただけでも、『現代思想』を買った価値があると思った。

http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~fujihara/


 上野俊哉、吉見俊哉の文は、ひねりが利きすぎて、キャッチャーミットに入っていない。それにバッターである読み手も、そのボールがよく見えない。

 まだ全部を読んでいるわけではないが、良い文があったらまた紹介しよう。
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破壊・開発における「資本」

2015-11-24 12:32:53 | 政治
 近所で、民家が破壊されている。こうしている間にも、破壊される音とともに、ときに地が揺れることもある。破壊された家の後には、新しい家が建てられるという。

 家新築のための破壊である。

 
 今、シリアへの空爆が、フランスやロシア、アメリカなどによって行われている。人びとの日常生活がおくられていた街並みが、いとも簡単に破壊され、瓦礫と化している。もちろん、その空襲の現場には、人びとが今も住み、日常を生きているのだろうが、その姿は見えない。破壊と同時に、そうした人びとも殺戮されているのだろう。

 なんという人道に悖る行動かと怒りを持つのだが、その背景にある「資本の論理」を想像すると、その破壊にも「経済合理性」があることに気付く。

 破壊する行為のなかで、軍需産業はおそらく大いに儲けているだろう。ミサイルにしても爆弾にしても、軍需産業は需要に応じて生産に励んでいるに違いない。

 そしていずれかの時期には、戦闘は終わる。そこに人が住まなければ、建物が破壊され尽くしてしまえば、空襲は無用になる。

 そこででてくるのが、「復興」である。瓦礫を片付けて、そして再び人びとが住むことができるような街並みをつくる。人びとが日常を生きるためには、破壊された水道、電気供給システム、道路などのインフラを整備していかなければならない。

 軍需産業は、戦争のための兵器だけではなく、こうしたシステムの販売にも進出を図っているという。

 破壊で儲けて、復興で儲けて・・・・・まさに最大原利潤追求の「資本の論理」は、ここに貫かれているのだ。現在の「資本」には、道徳もなにもない。それは今の経済社会状況をみれば明らかではないか。

 トリクルダウンなどという虚構のメッセージが流されるなか、富裕者はより富裕となり、大企業は内部留保をしこたま貯め込み。労働力は低賃金の「非正規労働者」を利用し、庶民の生活の改善にはいっさい関わらない。

 「資本の論理」は、規制撤廃により、自由に世界中で儲けまくる。その最悪な集団が「死の商人」として忌み嫌われる軍需産業である。

 
 わが日本も、軍需産業を育て、兵器を輸出し、その兵器で破壊された後の復興で、日本の様々なインフラ、システムを輸出してカネ儲けにいそしもうとしている。

 「資本の論理」は、今や「錦の御旗」だ。これが掲げられると、資本の前には舗装された道が準備され、その道の、資本を邪魔すると思われるものはきれいに取りのぞかれる。人びとは、周辺にひれ伏して、資本に頭を垂れる。中央や地方の行政も、教育も、何でもかんでも、資本に役立つように改変させられる。

 そういう社会が、今目の前にある。この「資本」を、「資本の論理」を克服することはできないのか。これらは、庶民の幸せを奪い、庶民の生活を貧困化し、社会の安定をなくす。

 庶民は、それほどまでに無力なのか。

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国家

2015-11-23 23:04:34 | 日記
 ずっと昔、岩波書店から『転換期における人間』という全11巻の講座が発行された。ボクはそれを、書店からもらった。注文した人が、中途解約したらしい。ボクが注文した本ではないので、今まで書庫にしまったままだった。

 一昨日、書庫から取り出して、そのなかの一巻「国家とは」の月報を読みはじめた。最初は、立松和平さんの文だ。彼は与那国島にサトウキビ畑に働きに来ていた。
 与那国島、そこは台湾の隣の島である。だから当然、台湾と与那国島の住人とは、昔行き来が頻繁だったという。当たり前だ。隣の島だからだ。

 彼は末尾にこう記す。

 与那国島からの視座で見るかぎり、島の前と台湾との間の国境線は、ただ理不尽なものなのである。

 1970年代はじめ、ウェールズの木賃宿に宿泊した川北稔さんは、その宿の息子さんと英語で会話したという。会話中、その妹が出てきたので英語で話しかけたら、息子さんが「妹はまだ学校に行っていないので、ウェールズ語しか話せないんだ」といわれたそうだ。イギリスの「国民国家」は、20世紀後半においても、確立していなかった。

 片倉もとこさんは、遊牧アラブのことを記す。国境というものを意識していない。国境をこえる彼らの日常の生活圏は、300~400㌔もの行動半径があるという。

 「地球的規模をもつウンマ(宗教共同体)の確立をめざすイスラーム世界においては、国家は、小さな存在となる」「かれらのアイデンティティは、国家とは関係なく、イスラームによって確立している」

 なるほど、西欧的概念でイスラーム世界をみてはいけないというわけだ。

 そのイスラーム世界が、相互に殺しあっている。それはなぜか、が問われている。

 この本は、1989年の出版である。それからの変化は、急激だ。この時代が牧歌的に見えてくる。
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文を読む

2015-11-23 19:44:53 | 日記
 最近二人の人が書いた文を読んだ。

 一つは、「第五福竜丸事件」に関するものだ。その文は一応テーマに沿って書いているように見えるが、その内容は、「ボクはこれも知っているんだ」、「こういう本も読んだんだ」と、テーマに関わる(関わっていなくても牽強付会で)森羅万象についてとにかく言及していくというスタイルのものだ。まさに衒学的な文。以前のような超悪文ではない(悪文がなくなったわけではない)が、文の性格は変わっていない。要するに、何をあなたはこの論文で解き明かしたの?と尋ねても、その答えが返ってこないというものだ。要するに、結論がない。主に歴史の過程だけが記されてそれでおしまい。つけられたグラフなども、なくてもよいものだ。

 付記 もう少し読んでみたら、一文が長いので主語がなくなったり、主述の呼応が狂ったり、最初から主語がなかったり・・・この本、編集委員の審査があるというのに、なぜ?と思ってしまう。

 もう一つは、笠原十九司氏の『海軍の日中戦争』(平凡社)。これは名著である。証明すべきことを、様々な史資料を駆使して、明確に示す。おそらく笠原氏がこの本で主張したことは、誰も否定できないだろう(少しの事実の確定において、異論が出ることはあり得るが、総体としてその主張は裏付けられている)。同書の帯には、「日中戦争を対米英戦の実戦演習ととらえ、南進と大規模な空爆を決行、さらなる泥沼化を進めたのは海軍だった。国の命運より組織的利益を優先させ、ついにはアジア太平洋戦争へ。東京裁判でつくり上げられた「海軍免責論」「海軍神話」に真っ向から挑む力作」とある。
 まさにその通りの書である。実証的な本。

 問題意識が鋭角的でないと、文は空中分解を起こしかねない。とくに長文の場合。

 笠原氏はもちろん鋭角的。前者は、鈍角。

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