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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】加藤直樹『九月、東京の路上で』(ころから)

2014-05-31 22:38:21 | 読書
 この本も、ぜひ、ぜひ読んで欲しいと思う。素晴らしい本だ。新大久保で生まれ育った著者は、新大久保の路上でおこなわれるヘイトスピーチにノン!を突きつける。

 著者・加藤は、そうした現在の動きを根底から捉えるために、1923年9月を振り返る。そこには、軍や警察、そして一般庶民による朝鮮人虐殺があった。この本に紹介されているそれぞれの事件はおぞましく、活字を追う眼をそこで停止したくなるほどだ。だが、事実は事実として、きちんと視なければならない。

 ボクは、静岡県に於ける在日朝鮮人の歴史を調べ書いたりしているから、そして大杉栄・伊藤野枝・橘宗一虐殺について調べたりしているから、もちろん関東大震災に於ける朝鮮人虐殺は知っているし、山田昭次さんの本も読んでいる。
 
 だが、この本は、過去の歴史的事実を明らかにするという視点だけではない、著者の脳裏には、常に現在のヘイトスピーチの問題がある。現在の問題を理解し、解決しようとして、そのために歴史の襞に分け入っている。まさに歴史研究の大道を行っている。
 
 ボクはこの本を読んで、教えられたことがいくつかある。まず1923年の虐殺の前、メディアが朝鮮人を「不逞鮮人」として、書きたてていたようなのだ。

 1923年9月に至る数年間も、日本の新聞は毎日のように「不逞鮮人の陰謀」を書きたてていた。

 そしてプロレタリア作家の中西伊之助の「朝鮮人のために弁ず」(『婦人公論』1923年11月12月合併号)を引用する。

 爆弾、短銃、襲撃、殺傷、ーあらゆる戦慄すべき文字を羅列して、所謂不逞鮮人ー近頃は不平鮮人と云ふ名称にとりかへられた新聞もありますーの不逞行動を報道しています。それも新聞記者の事あれかしの誇張的筆法をもって。

 そして今も、週刊誌や新聞などが、中国や韓国への敵愾心を煽っている。その書き方に、ボクはやはり中国や韓国への蔑視を感じる。他国を批判すろとき、たとえば欧米のどこかの国を非難する時の書き方とは、絶対に異なる。

 さらに政治家・石原慎太郎の、「三国人」発言。外国人に対する蔑視と威嚇を含んだ、いやそれを前面に出した演説など。

 1995年、阪神淡路大震災が起きた時、ボクは、関東大震災における朝鮮人虐殺を想起した。真剣に心配した。しかしそういう事態は起きなかった。ああそれでも歴史は進歩したんだなあと思い、ホッとした記憶がある。

 だがその頃は、現在のような反韓、嫌韓の思潮はなかった。メディアによる同調もなかった。だが今はある。

 首都直下型地震が想定されるなか、東京は、もう一度あの歴史を繰り返すのだろうか。

 これもこの本で教えられたことであるが、2005年アメリカ南部に上陸したハリケーン・カトリーナが莫大な災害を引き起こした。そのさなか、白人の「自警団」により、黒人に銃撃が加えられたり、非白人が略奪しているという流言飛語が飛び交ったりしという。1923年9月の事態が、アメリカで再現されたのだ。

 加藤は、こう記す。

 週刊誌やネットでは「韓国」「朝鮮」と名がつく人や要素の「間」化の嵐が吹き荒れている。そこでは、植民地支配に由来する差別感情にせっせと薪がくべられている。「中国」についても似たようなものだろう。

 その「間」化に抗するものとして、加藤は「共感」を対置する。彼らは「「共感」というパイプを必死にふさごうとする」、だからこそ、1923年9月、「名前をもつ誰かとしての朝鮮人や中国人や日本人がそこにいた」こと、そこには国籍を超えた「共感」があったこと、それを加藤は示そうとしている。

 本書で紹介されているレベッカ・ソルニット『災害のユートピア』(亜紀書房)は、注文している本だ。これも絶対に読まなければならない。

 あの歴史を、絶対に繰り返してはならぬ。
  
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『中日新聞』社説の心配は正しい

2014-05-31 20:05:48 | 政治
 今日の社説であるが、指摘の通りである。だいたいにして、労働者の労働条件に関わることを、労働者代表抜きで決めていくことは、ILOが認めていないことだ。その意味では、違法なのだ。

 ただでさえ労働者の労働条件の根本法である労働基準法が守られていないのだから、こういう残業代ゼロがまかり通るようになったら、累々たる過労死という死が積み上げられるだろう。

 連合などの抵抗は、あるのだろうか?


残業代ゼロ案 アリの一穴が狙いでは

2014年5月31日


 政府が成長戦略への明記を決めた労働時間の規制緩和は、本当に専門職などに限定されるのか。派遣労働がそうであったように、結局はなし崩し的に働く人の多くに広がる懸念を禁じ得ない

 働く人にとって最も大切な労働時間の制度変更を、労働界の代表が入っていない産業競争力会議で決めてしまう。いわば「働かせる側の論理だけ」という乱暴極まりない手法である。成果によって報酬が決まる新たな労働時間制度はあっさり導入が固まった。

 具体的な制度は今後、厚生労働省の労働政策審議会で詰めることになるとはいえ、早くも対象を「高度な専門職」などと限定する案に対し、財界や経済閣僚から「一握りでは効果がない」と異論が出ている。人件費削減のために一般社員などへ、できるだけ対象を広げようとの思惑が透けて見えるようである。

 少子高齢化の進展で生産年齢人口(十五~六十四歳)が減り、一人当たりの生産性向上が課題となるのは否定しない。効率的な働き方、長時間労働の是正が実現するのであれば歓迎する。しかし、この労働時間規制の適用除外とするホワイトカラー・エグゼンプションは、第一次安倍政権の二〇〇七年に世論の猛反対で頓挫したように、残業代ゼロのいわゆるサービス残業を合法化し、長時間労働を常態化させかねないものだ。

 労働時間でなく成果で評価されるようになれば、従業員は成果が出るまで働き続けなければならない。企業は労働時間を気にしなくてよいから従業員が疲弊していようが成果を求め続ける。毎年百件以上の過労死が社会問題化する中、時代に逆行し、そればかりか残業の概念がなくなれば過労死の労災認定そのものが困難になる

 首相は「希望しない人には適用しない」「働き方の選択によって賃金が減らないようにする」と明言したが、従業員の立場が会社に対して極端に弱いことすら理解していないのか。首相の言うことが通用するなら、これほどまでに過労死も過重労働も起きていないに違いない。ブラック企業すら存在しないであろう。

 働く人を守る労働法制が首相や財界の意向で都合よく変更されてよいはずがない。限定論や美辞に惑わされ、なし崩し的に広まりかねない。派遣労働が典型だ。「働き方の多様化」「柔軟な労働形態」などの名目で緩和され、今や働き手の四割近くが非正規雇用だ。同じ轍(てつ)を踏んではならない。



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本が来た!

2014-05-31 14:26:12 | 読書
 注文していた本が届いた。2冊。1冊は専門書。もう一冊は、『九月、東京の路上で』(ころから、2014年)である。

 これは『毎日新聞』の書評欄で紹介されていたもの。大杉栄・伊藤野枝の墓前祭に関与するボクとしては、読まなければならないと思って注文したのだ。

 東京周辺では、1923年9月1日の関東大震災の時、多くの朝鮮人が虐殺された。その背後には、国家権力の行為が存在していることは確かであるが、実際に朝鮮人を殺害したのは、庶民である。

 この本は、虐殺現場となったところが、今どうなっているかを記したものだ。現状については、小さな写真がついているだけだが、地図もあり、またそこで起こった殺戮事件の詳細が記されている。

 また文学者などが、この朝鮮人虐殺を様々なかたちで記していることも紹介されている。その一つ、詩人の萩原朔太郎のもの。

 朝鮮人あまた殺され
 その血百里の間に連なれり
 われ怒りて視る、何の惨虐ぞ 


 著者は加藤直樹。新大久保で行われているヘイト・デモに抗議するカウンター行動者のひとり。

 抗議活動に参加していくなかで、過去に起きた朝鮮人虐殺事件を調査した。その報告でもある。

 良い本だ。

http://www.asiapress.org/apn/archives/2014/04/17095322_2.php
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日やけ

2014-05-31 00:56:39 | 日記
 今日(もう昨日になった)図書館に行った。受付の女性から、「○○さん、日に焼けましたね」といわれた。「ええ、晴耕雨読の生活ですから」と、ボクは答えた。「理想的な生活ですね」と、女性は言った。

 毎日、毎日畑に行く。昨日はジャガイモを掘り出した。自分が食べるのではなく、母のところに送るためだ。

 今日は夕方行ったが、昼間行く時は日焼止めクリームを塗っていく。しかし、夕方の場合は塗らない。でも1時間以上作業しているからやはりやけるのだろう。

 仲道郁代のピアノを聴いてから、町田の住人との電話の約1時間をのぞき、ずっとピアノ曲を聴いている。

 ボクはホントはチェロやバイオリンのほうが好きだ。弦楽器には人生を感じるからだが、今日はピアノ曲の気分。

 ピアノは、やはり美しさ、哀しさ、そういった情緒的・感性的なものを感じる。ピアノ曲のなかでは、何と言ってもラフマニノフのピアノ協奏曲第二番、その第二楽章が好きだ。もっとも美しく哀しい曲であると思う。

 ピアノ曲は、ショパンとリストの曲が「きれい」だ。リストの「愛の夢」やショパンの「幻想即興曲」やノクターン。

 ノクターンは、夜、夕顔の花を見ながら聴くのが良い。気温が上がってきたからか、夕顔が次々と芽を出し、葉をつけてきた。今年も夕顔に囲まれる。ノクターンと夕顔には、淡い月の光が似合うのだ。
 
 こういうピアノ曲は、やはり夜聴くのがよい。少し暗くして・・・いろいろな過去を振り返りながら・・・


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ピアノ曲

2014-05-30 22:02:32 | 日記
 いつも、赤鉛筆で線を引いたりして読んでいるのに、上野千鶴子の『上野千鶴子の選憲論』は、ただ読んでいた。読み進めるうちに、その内容の的確さと新鮮さ、そしてわかりやすい表現に感心していった。これは毎月一回書いている某紙に紹介しようと思う。

 そのために、もう一度読み直し、ところどころ赤鉛筆でしるしをつけていった。
 そのとき、NHKFMを聴いていた。

 ピアニスト仲道郁代の番組だった。彼女はルービンシュタインの演奏をかけていたが、最後に自らの演奏曲、モーツアルトのソナタを聴かせた。

 仲道郁代というピアニストは、浜松にゆかりのある人だ。名前は知っていたが、演奏は聴いたことはなかった。

 読むのをやめて聴き入ってしまった。

 しかし今日聴いていて、ひとつひとつの、その音に「華」があるという感じがした。ひとつひとつの音が正確にきこえてくる。フジ子ヘミングの演奏とはまったく異なる。一音一音をきちんと弾きながら、一定の情緒を生み出すというのも、なかなかの芸当だと思う。

 ばからしいが、最近姓名判断をしてもらった。「あなたは孤独に一生を終える」といわれた。高校生の頃読んだ姓名判断の本にもそう書いてあったことを思い出す。

 しかし、こういうピアノの演奏を聴きながら暮らすことができれば、孤独じゃないなあ。

 町田の住人は、いつもクラシックの音楽(声楽)を聴いているので、仕事がはかどるのだろう。音楽は素晴らしい!!
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絶対のオススメ 上野千鶴子『上野千鶴子の選憲論』(集英社新書)

2014-05-30 13:23:54 | 読書
 Uさん、教えてくれてありがとう。とても良い本だと思いました。

 日本国憲法、自民党の改憲案、それらをわかりやすく、新鮮な筆致で説明しています。

 第一章 憲法の精神 
 「琉球共和社会憲法」という憲法草案から憲法を論じ始めたというところが気に入りました。なぜって、日本で凄惨な地上戦があったところ、そして戦後日本から捨てられて米軍による支配がずっと続き、1972年の「返還」以降も集中する米軍基地に苦しめられたところ、それに抗してずっと闘い続けてきたところ、そこの人々がどういう憲法草案を考えているかを知ることはとても大切だと思うからです。

 第二章 自民党の憲法草案を検討する 
 この本は、通常この草案への批判は全てではなく、部分的に行われるのがふつうですが、上野さんは丁寧に読み解き、そしてやさしくそれぞれの条項が持つ問題点を指摘しています。ボクもこの憲法草案に関する本をいくつか読んでいますが、もっともやさしく、すっと頭に入ってくる内容でした。
 もちろん、そこには社会学者としての今までの研究を踏まえた主張で、そこに個性的な記述もあり、教えられました。
 この自民党憲法草案に対する批判は、きわめて新鮮、ここだけでも読む価値があるとおもいます。

 第三章 護憲・改憲・選憲
 上野さんは「選憲」を主張します。現行憲法を選びなおすということでもあります。もちろんすべてではなく、象徴天皇制を規定する第一条はいらない、共和制が最善であるから、と主張しています。

 そしてここで民主主義について論じています。上野さんは他の研究者の説を紹介していますが、その内容はボクが今まで読んだこともないようなもの(本)をもとに説明していて、新鮮でした。
 
 なかでも、精神医学者中井久夫氏の主張、当時17歳であった福岡亜也子さんの「若者が書いた、憲法前文」の紹介は、勉強になりました。

 この本は、皆さんに推薦します。ぜひ買って熟読してください。読んでよかったと必ず思うはずです。740円+悪税です。




 

 
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議員の退廃

2014-05-30 06:39:15 | 政治
 特定秘密保護法にかかわる、名ばかり「監視」機関として設置されようとしている国会の「情報監視審査会」、その設置案が決まった、という。

 衆参両院にそれぞれ8名で構成され、会議は秘密、会議録は非公開という、秘密保護法に関わるから、すべてヒミツなのだ。

 そしてこの機関、強制力はないから、いくらこの審査会が政府に勧告しても、無視できる。だから有名無実の機関となる可能性がとても強い。

 滑稽なのは、「特定秘密」についての情報を漏洩したら、国会議員でも除名など懲罰の対象となるということを、法案に賛成した自民党議員が知らなかったことだ。。
 
 今日の『中日新聞』の「特報」欄は、この特集である。

 それによると、自民党の議員から「(懲罰の対象となることについて)議員の発言に圧力」となる、とか、「信念に基づいて発言したら除名になるのか」という声があがった。

 「秘密法では、公務員のみならず一般市民でも、秘密を聞き出したり、漏洩をそそのかしたりした場合は懲役に処するなどと厳しい罰則規定が盛り込まれている。大半の自民党議員がその秘密法に賛成しておきながら、自分たちが罰せられる可能性があると反発するのは矛盾している

 と「特報」欄担当者は書く。

 だが、自民党議員なんて所詮そんな者。

 地方議会の議員を見れば明らかではないか。何も知らず、何も知ろうともせず、何も考えず、何も調査しようともせず、ただ行政のやることを「賛成!」と追認するだけの、誰でもできることをしているだけ。

 そういう議員を国民は選んでいるのだ。ということは、国民も同じということ。 
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拉致問題

2014-05-29 23:08:16 | 政治
 北朝鮮による日本人の拉致は、北朝鮮による国家犯罪である。拉致された可能性のある日本人は多く、いまだ解決に至っていない。これは明確に人権問題であるから、原状復帰すべきであるし、北朝鮮は不法行為を行ったのであるから、その責任を負わなければならない。

 この問題、小泉内閣のときに進展を見せた。拉致問題の部分的解決と平壌宣言とがセットになっていた。しかしその後、まったく進まなかった。それは、日本側がずっと強硬な姿勢を示し続けたからで、硬軟とりまぜての対応をしてこなかったからだ。敵対関係のなかでは、解決すべきものも解決しない。

 では今度はなぜ進展を見せたのか。まずやはり大きな問題は、朝鮮総連本部の建物の問題であろう。北朝鮮としてはこの建物を何が何でも死守したい。しかしそれは現実的にはきわめて難しくなっている。そこで、拉致問題とこの問題を結合して、拉致問題で妥協する代わりに、建物の継続使用を可能にしてもらおうという魂胆なのだろう。

 どういうかたちであろうと、拉致は不法行為である。拉致問題を取引材料とするのではなく、北朝鮮側が一方的に解決すべきである。人権問題は、即解決されるべきなのだ。

 さて、北朝鮮との間では、植民地支配にかかわる日本の責任についての決着がついていない。拉致問題が解決されていくということは、日本の責任として植民地支配の問題を、解決に向けて努力していかなければならない。ボールは日本に返される、日本はどうする!!
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【本】加藤哲郎『日本の社会主義』(岩波書店)

2014-05-29 15:41:34 | 社会
 加藤氏のたくさんの文献をもとに立論していく作業には、いつも唖然とするのだ。この本の巻末には、たくさんの文献が掲げられている。

 さて、この本、副題に「原爆反対・原発推進の論理」とある。しかし日本の社会主義についての記述は、明治からである。まさか原子力エネルギーは明治期からあるのではない。そこでの主眼は、日本の社会主義のスタートが、社会主義、民主主義、平和主義、国際主義であって、そこには「非戦・平和」という観点があったことを確認しようとするものである。

 というのも、戦後日本の社会主義は、本来コインの裏表であって切り離すことのできない核開発、それを「原水爆」と「原発」、つまり「平和利用」と「兵器としての使用」とを劃然と分け、前者には反対の姿勢をより、後者については推進を掲げてきた、そのことは「平和」とは正反対のものであることを示そうとしているのだ。

 本書を読んでいろいろなことを知った。日本の社会主義を担ってきた日本共産党、日本社会党(社会民主党)。前者が反原発という政策をもっているのかどうかボクはよく分からない。現象的には、「反原発」を唱えているようだが、いつからそうなったのかは分からない。20代のころ、ボクは原水禁世界大会に参加したことがある。そこでは、共産党系が、原発について肯定的なことを主張していたという記憶がある。後者については、1970年代初めから「原発反対」を掲げてきたことを知っているし、また本書にもその指摘がある(264頁)。

 学者のなかでも、武谷三男は有名な自然科学者であるが、彼も当初は原子力の平和利用を熱心に唱えていたようだ。そのほか、平和利用を主導していたのは、平野義太郎、有沢広巳らである。

 しかしボクは、これらの事実を追及しようとは思わない。ボク自身の認識も、原子力の危険性についてはチェルノブイリで気づきはしたが、しかし積極的に反原発の運動に関わっては来なかった。何と言っても、2011年3月の福島第一原発の事故で大いに覚醒されたからだ。自分を差し置いて批判はできない。

 社会主義者に焦点をあてながら、原爆・原発にどういう姿勢を示してきたかが記されているが、もちろん積極的に推進した正力や中曽根の動向も記され、とくに岸信介の弟である「佐藤栄作こそ、日本の自立的核武装を企図し、それを可能にする「原子力の平和利用」=原子力発電を具体的・本格的に稼働させた張本人」(246頁)であるという指摘は重大だ。

 現在の岸・佐藤の系統である安倍政権の原発推進の彼方には、核武装の野望が存在しているからだ。

 そのほか、マンハッタン計画のスタッフのなかにソ連のスパイが入り込んでいたということなど、新しい知識がふんだんに記されている。

 K氏に推薦されて読んだ本。ボクも薦めたい本だ。
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集団的自衛権の論議

2014-05-29 09:28:49 | 政治
 まず『朝日新聞』記事(一部)。

自衛隊派遣、中東も想定 首相、国会で答弁 集団的自衛権

2014年5月29日05時00分

 安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会で、他国を武力で守る集団的自衛権の行使が認められた場合、自衛隊を中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡へ派遣することを想定している、と明らかにした。首相は日本から遠く離れた地域へも自衛隊を派遣する可能性を示し、米国以外の国を守る考えにも踏み込んだ。


 まさに際限なく、自衛隊は海外で戦うのだ。

 次は『東京新聞』記事(一部)。


首相「戦闘地域活動」否定せず 武力一体化の制限緩和

2014年5月28日 22時33分

 安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会集中審議で、自衛隊の海外任務拡大に向け、憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」の制限緩和を検討していく方針を表明した。一体化を避けるため設定してきた「非戦闘地域」の考え方の見直しにも言及し、戦闘地域での自衛隊による支援活動を明確には否定しなかった。戦闘地域での活動に実際に乗り出せば、安全保障政策の大きな転換となる。


 そして『中日新聞』社説。
 
集団的自衛権 平和主義守り抜くなら

2014年5月29日

 国民の命と暮らしを守るには、軍事的対応の強化が唯一の回答だろうか。戦後日本の「繁栄の礎」を築いた平和主義という憲法の理念を、一内閣の判断で骨抜きにすることがあってはならない

 安倍晋三首相の記者会見を受けて「集団的自衛権の行使」容認をめぐる本格的な国会論戦が始まった。きのうの衆院予算委員会に続き、きょうは参院外交防衛委に舞台を移して集中審議が行われる。

 首相は初日の論戦で「日本は七十年間、平和国家の歩みを進めてきた。その道から外れることはないし、これからもその道を歩んでいく」と強調した。同時に「国民の命と暮らしを守らないといけない」とも述べた。

 政府が果たすべき第一の役割は平和を維持し、国民の命と暮らしを守ることである。その点、首相の主張に異論はない。問題は、どうやって守るのかだ。

 例えば、政府が検討事例に挙げた、紛争地から避難する邦人を輸送する米輸送艦の防護である。

 首相は十五日の記者会見で、お年寄りや乳児を抱く母子を描いたイラストを示しながら、「彼らが乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない」と、行使容認の必要性を強調した。

 しかし、これは現実から懸け離れた極端な例である。米艦艇に輸送を頼らなければいけない緊迫した状況になるまで、お年寄りや乳児を抱える母子が紛争地に取り残されるだろうか。そうなるまで手を打たなかったとしたら、政府の怠慢にほかならない。

 首相はきのう「日本人が乗っていない船を護衛できないことはあり得ない」とも述べた。ついに馬脚を現したという感じだ。

 これでは、集団的自衛権の行使容認が、日本国民の命をどう守るかではなく、米軍の軍事行動と一体化することが主目的であると疑われても仕方があるまい。

 集団的自衛権は国連憲章で加盟国に認められた権利だが、安全保障理事会に報告されたこれまでの例を振り返ると、米国や旧ソ連など、大国による侵攻を正当化するものがほとんどだ。そのような権利の行使が、平和主義国家の歩みと相いれるだろうか。

 現実から懸け離れた事例を示して、お年寄りや乳児を抱えた母子を守らなくていいのかと情緒に訴え、一内閣の解釈変更で憲法の趣旨を変えてしまう。

 平和主義を守り抜くというのなら、そんな政治手法をまずは封印する必要があるのではないか。
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日本社会の変容(2)

2014-05-29 08:57:40 | 社会
 少子高齢化は、際限なく進むことがわかっている。少子化は止まるところを知らず、変え声だけはあるものの、それを何とかしようとする政策は皆無だ。若者の生活安定よりも大企業など企業のために低賃金政策を展開していることから、若者は結婚して子どもを育てることができなくさせられている。

 子どもがいない国は、いつかは衰退する。

 ところが、安倍政権は、そうした傾向に拍車をかけながら、「一等国」になろうと必死である。国連の常任理事国は、核兵器をもち、軍隊を世界各地に派遣して軍事行動を行っている。

 安倍政権は、核兵器保持と海外への軍隊派遣、アジアアフリカなどでの殺戮する国家が「一等国」であると頑なに信じているようだ。

 集団的自衛権容認の論議をみていると、とにかく自衛隊を海外にだして戦闘行動に従事させたいということがことの本質であることは明らかだ。そして日本は対米隷属国家という安倍にとってはおそらく屈辱的な状況にあるから、アメリカ軍の艦船などを集団的自衛権で軍事的に防護することで、アメリカと「対等」であるという自己満足を得たいのだろう。アメリカ本土に自衛隊の軍事基地でも建設したいのだろうか。

 対米隷属国家日本は、安倍らの主観的な願望がどんなものであろうとも、アメリカ帝国の掌の上で動くしかない、というのが現状だろう。

 アホな政治家が権力を掌握するとろくなことはない。安倍にしても、石破にしても、彼らの思考には民主主義的な認識のひとかけらもない。おそらく理解できないのだ。

 日本には、問題がたくさんあるが、いちおう民主的な制度はある。だが、彼らはその制度についての理解を持たず、みずからの思考を権力的に実現しようとするだけだ。制度をそのままにして、いや制度も壊しつつ、強引にみずからの主観的欲望をかなえようとする。

 そういう安倍政権に対する怒りや嘆きが、どうも少ない。

 1930年代から40年代前半にかけて、大日本帝国は「大戦争」に突き進んだ。その背後には、帝国臣民の熱い支持があった。今また、そういう支持がみられる。見よ、週刊誌の扇情的な見出しを!週刊誌はそういう記事を載せれば売れると踏んでいるのだ。毎号毎号、新聞に紹介される週刊誌の広告は、現代の帝国臣民の意識を表しているのだろう。

 今、「戦後民主主義」が最終的に否定される段階に来ている。まさに戦後日本社会の変容である。だが、これは地獄への道である。

 近現代史をふりかえるとき、庶民の大勢は非理性的に「時流」に身を投じて、歴史をつくってきたことに気付く。たいがいの庶民は政治的には、「受け身」だ。そして「時流」は、基本的には体制的な思考と親和的である。「受け身」的に「時流」に投げ込まれ、そしてその「時流」をより強化していく。

 ボクは、いつも開高健の小説、「パニック」を思い出す。日本の庶民は、そこに描かれた鼠と一緒なのかも知れない。

 だがそれでも、その「時流」の本質を把握できる眼を、たとえ少数であっても持たなければならない。「時流」に抗する少数が、実は歴史を切り開いてきたのである。
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日本社会の変容(1)

2014-05-28 07:20:25 | 社会
 いわゆる「戦後民主主義」のなかでつくられてきた制度の根本が崩されようとしている。労働基準法である。残念ながら、労働基準法という法律はあるのだが、実際はもう機能しなくなっている。働く人の労働は時間で測定され、賃金と労働時間は対応すべきであるにもかかわらず、第三次産業を中心に、労働時間の規制は有名無実化し、長時間の労働、低賃金が強制されている。

 その労働基準法から、労働の量を測定する労働時間の原則が消されようとしている。

 『毎日新聞』の記事から引用させてもらう。

厚生労働省は27日、「高度な専門職」で年収が数千万円以上の人を労働時間規制の対象外とし、仕事の「成果」だけに応じて賃金を払う新制度を導入する方針を固めた。
 
 なぜ一部分でも、労働時間の原則を崩そうとしているのか。それは産業競争力会議の議員が、もっと幅広く労働者の賃金を低下させようとしているからだ。

産業競争力会議の民間議員が28日に示す修正案の全容も判明した。当初、年収1000万円以上などで特定の業務従事者を対象とする案と、一般社員を対象に年収を問わず適用する案を提示していたが、28日は両案を一本化した修正案を出す。

 修正案では、年収要件を撤廃する。対象者に(1)企業の各部門で中核・専門的な人材(2)将来の管理職候補--を挙げ、具体的には全社的な事業計画を策定したり、海外プロジェクトを手がけたりするリーダー、金融ビジネス関連のコンサルタントや資産運用担当者などを例示した。副課長職以上を想定しているとみられる。


 労働を、時間ではなく、「成果」で測定するというのだ。いったい誰が測定するのか、その測定に客観性はあるのか・・・・そして「成果」で労働を測定するという新たな「原則」は際限なく広がる可能性はないのか。

 安倍政権が主張する、「世界で最も企業が活躍しやすい国にする」、というのは、いうまでもなく、「企業が世界で最も金もうけができる国」にするということであり、労働者の賃金が安い国であるということだ。そうした日本に未来はあるのか!
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【本】守屋英一『ネット護身術入門』(朝日新聞社新書)

2014-05-28 00:02:03 | 読書
 今日届けられた本であるが、数時間で読み終えることができる。

 第一章は、フェイスブックやツイッターなどいわゆるSNSに関する内容である。ボクは、SNSはまったくやっていないし、やろうとも思わない。というのも、今や友人たちや研究会の仲間などとの連絡のほとんどはネットによるメールであるし、情報を得たり、通販でたとえば本を購入したりするために、一日の一定の時間をコンピュータの前で過ごさざるをえない、もしSNSなんかに手を出したら、ネット関連で多大な時間を費やしてしまう。原稿を書いたいるする時間を除き、コンピュータに向かう時間はできるだけ少なくしたいと思っているからだ。したがって、第一章は、参考程度に読んだ。

 第二章は、まさに現代の「監視社会」化の実態の一部が記される。しかし「監視社会」については類書がでているし(そうした本は何冊か読んでいる)、とりたててこの本から新しく知ったことはない。

 第三章は、ボクもインターネットバンキングや通販などでお金の取引をしているが、それに関する犯罪の実態が示されている。くわばら、くわばら、である。

 第四章は、SNSに関わらないボクとしては直接関係ないが、ストーカー、ネットいじめなど、問題とされていることが説明されている。

 この章で学んだこと、1.インターネットバンキングをしている者は、頻繁に口座の状況を確認すべきこと、2.クレジットカードの利用明細をきちんと確かめること、である。

 第五章。自分に関する情報の漏洩、悪用をどう防ぐか。まずネットで自分の電話番号が分かるか確かめてみた。146頁にそのやりかたがあった。見事にでてきた。早速116番に電話して、ハローページへの記載を確かめた。以前、電話帳の記載をやめてほしいと注文したはずだが、ネットのは2007年。ボクのNTTへの注文は、その後だった。残念!そのほか、アマゾンの送り先をコンビニにするとか、いろいろな提案があったが、利便性から考えるとそれを実行することはおそらく無理だという結論となった。
 また159頁にあったGoogleアラートはやっておいた。

 第六章。ここの記述は大切だ。パスワードの作り方や、パスワードをコンピュータに保存するななど。その対策も記されていた。ありがたい。早速これらは実行したい。

 第七章は、まあまとめという感じ。

 いずれにしても、こうした本を読んでできるだけ「護身術」の知識を身につけるべきだと思った。

 怖い時代である。国家権力や企業によって、ネットを通じての行動が読み取られ、実際に情報やカネが盗まれ、プライバシーが侵害される。できうるかぎりの防護をすべきであるという教訓を学んだ。

 さてブログでこの本を購入したと記したら、著者から「購入してくれてありがとう」だって。だから早速紹介した。

 参考になる本でした。実行できることは実行して、「護身術」を身につけます。
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原発再稼働に突き進む?

2014-05-27 22:30:40 | 社会
原発再稼働を推進する政府は、原子力規制委員会のメンバーを、政府と同じ考えの者に変えたようだ。

 政治権力を持つということは、どんなことでもできてしまうということだ。そうさせないために、様々な憲法や法律、制度があるのだが、そうしたものがあるにもかかわらず、すべて無視していこうという安倍政権。ナチスドイツの独裁政治よりも、ひどい。

 下記は『日本経済新聞』の記事。


規制委、島崎氏ら交代へ 後任に原子力学会元会長
2014/5/27 13:41

 政府は27日昼、衆参両院の議院運営委員会理事会に原子力規制委員会の委員2人が交代する国会同意人事案を示した。規制委の委員には9月に任期満了を迎える島崎邦彦(68)、大島賢三(71)の両氏に代わり、田中知東大大学院教授(64)と石渡明東北大教授(61)を充てる案を提示した。任期は5年。人事案は同意される見通しだ。

 規制委の委員は再任も可能だ。ただ地震学者の島崎氏は、原子力発電所の再稼働に向けた安全審査で電力会社に厳しい姿勢で臨んでいることで知られる。与党内や電力会社からは「審査が厳しすぎて再稼働の遅れにつながっている」という批判もあり、再任するかどうかが注目されていた。

 地質学が専門の石渡氏が、9月以降は島崎氏の役割を担うとみられる。

 大島氏は外交官の出身。国連大使や東京電力福島第1原発事故の国会事故調査委員会の委員などを務めたが、与党内から「後任は原子力の専門家にすべきだ」という指摘も出ていた。田中氏は東大工学部原子力工学科卒。日本原子力学会の元会長で、こうした声に配慮したとみられる。

 新任候補の両氏は同日コメントを発表し、田中氏は「東京電力福島原発事故の反省に立ち、これまでの経験を最大限に生かして取り組んでいく覚悟」と述べた。石渡氏は「地質研究者として重要な使命に全力を尽くす」とした。
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「戸惑う自衛隊員」という記事

2014-05-27 13:31:32 | 政治
『東京新聞』記事。読むべきもの。


戸惑う自衛隊員 集団的自衛権 議論を注視
2014年5月25日 朝刊


 海外で武力を使って密接な関係にある他国を守る集団的自衛権について、国会では二十八日の衆院予算委員会での集中審議から、本格的な論戦が始まる。憲法九条の歯止めが事実上外れるとしたら、自衛隊の海外での活動範囲はどこまで広がるのか。自衛官たちの胸中にも不安や戸惑いが広がっている。

 陸上自衛隊のある幹部は「あるべき国家として、グレーゾーン(武力攻撃に至らない領域侵害)などの問題を議論し整えるのは、当然の姿だ」と政府の姿勢を評価する。

 ただ「新聞を見ると、賛否両論がはっきりしている。われわれは政治的意見はなかなか言えないが、国民にとって本当に一番いい形を探してほしい」と今後の議論の行方を見守る。

 一方、ある幹部は「安倍晋三首相はいろいろ説明しているが、日本を戦争のできる国にしようとしているだけだ」と指摘。

 安倍首相は集団的自衛権が必要になる事例として「日本人を輸送している米艦船が攻撃を受ける」との想定を挙げた。幹部は「そんなケースが今まであっただろうか? 極端な事例で、今後も考えられない」と切り捨てる。

 集団的自衛権に道を開くのは「対米関係を考えただけ。『国民の生命を守る』という言葉は、口実で使っているだけだ」と批判する。

 自衛隊内部での関心の薄さを危ぶむ声もある。「若い隊員は新聞や雑誌を読まないから、少しやることが増えた、くらいにしか考えていないようだ」と、関東地方の五十代の陸自隊員。

 安倍首相の言動を見ていると近い将来、どこかの国と武力衝突する事態が起きるような気がして不安だという。二十日から自民と与党協議を始めた公明党は、解釈改憲で集団的自衛権を容認することに反対姿勢を強めているが、あまり期待はしていない。

 「戦前、治安維持法などでさんざんひどい目に遭った支持母体の創価学会が危機感を持って意思表示をしても、政党としての公明党がどこまで踏ん張るか…」

 公明の意向で、与党協議は武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処から議論を始める。自民党は離島に上陸した外国勢力を武力で排除する事態を想定する。陸自幹部の一人はこれにも戸惑いを隠さない。「起きてみないと分からない。事態に即して任務が与えられ、はじめてリアリティーが出てくる」

 また、潜水したまま領海にとどまる潜水艦にはどう対処するのか。海上自衛隊幹部は「追い出そうと、爆弾が当たらないよう外して撃ったとしても、警告と受け取るだろうか」。本格的な戦闘に発展するおそれを不安視している。
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