遠藤周作さんの小説「沈黙」
たしか、高校生の頃に遠藤周作ブームがあって、この本も手に入れたが、重いテーマに読みきれなかった記憶がある。 そして、映画「Silence」が上映されることを知り、この小説が原作であることを知った。改めて電子本で買い求め、昨夜、一気に読破した。
推理小説で、次の展開が気になり時間が過ぎるのも忘れ読みきるのとは違う気持ちだった。隠れキリシタンへの迫害弾圧、拷問の穴吊り、水張りつけ、俵巻きシーンは、いやおうなしにイメージせずにいられなかった。なぜにそこまで過酷な試練を神は与えるのか・・・、神はなぜ沈黙するのか・・・。殉教とは・・・。読んでいてぺージをめくるのが苦しかった。しかし、読み進めるしかなかった。主人公の宣教師・祭司がいることで、信徒が拷問にかけられ殺されてゆく。棄教を迫られる祭司の苦闘が描かれる。「神の御加護とは何か」 キリストを売ったユダとはなんだったのか・・・。なぜ、あなたはおこたえにならないのか、沈黙するのか・・・。
現代社会の中東の戦争、世界の貧困、福島の原発事故・・その当事者でなく、その外側から意見を言うのは、この物語のヨーロッパの宣教師達がマカオを経由して極東の日本の地に布教派遣され、棄教を迫られていることを批判するのと同じことかもしれない。 だから、どうしたらいいのか、そのような結論じみたものがエンディングにはなっていない。 ユダはキリストを裏切ったが、十字架を背負い歩く場でも許しを乞うていた。はたしてキリストはユダを許したのだろうか・・・・・。 主人公の祭司は、結局、踏み絵を踏み(踏まされ)、棄教し、日本人名をつけられ、日本人の妻子と結婚して日本に生きてゆくことになる。
何が善で何が悪なのか・・・。「そんなものはない」と、作者・監督は言っているのだろうか。壮大な矛盾をつきつけれる作品だが、生きるとは、そういうことなんだ・・・、と悟らずにはおられんな。
なんとも重たい苦しい話だ。 映画には興味はあるのだが、果たして観にいけるだろうか。心が揺さぶられそうで、怖くて観られないかもしれないなあ・・・・・・。