コロナ禍も落ち着かない中で東京国立博物館では『聖林寺十一面観世音菩薩立像(国宝)展』が6月22日より開催されている。
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この仏様を初めて見に行ったのは2009年3月だからかれこれ12年ほど前のことになる。聖林寺は奈良県の談山神社に登る坂の途中にある寺院、元々は談山神社の別院として藤原鎌足の長子・定慧が開山されたものである。ただ、十一面観世音菩薩像はこの寺の本尊ではなく、本尊は地蔵菩薩なのである。
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江戸末期まではこの仏像は大神神社の神宮寺大御輪寺(だいごりんじ)の本尊であった。しかし、廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、大御輪寺の住職が1868年に聖林寺に託し、客仏として今も聖林寺に大切に保管されている。この仏像が東京に来るのはもちろん初めて、しかもコロナの感染状況によってはこの先いつ中止されるかも分からず、混んでいるのを承知で最初の土曜日に行く。
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観覧は事前予約制、ネットで美術館ナビをダウンロード、予約をする。ネット予約は簡単にできるが、我々世代には切符がないため、何となく不安である。国立博物館本館に行くとやはり結構な列、やむを得ず並ぶ。やることもないため、周りの木を見ているが、美術館前に植えてあるユリノキ、ケヤキ、タイサンボクの大きさには驚く。
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しかもタイサンボクには大きな白い花、久しぶりにこの花を見ることができた。
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20分ほど待ち、入場する際にちゃんとチケットも貰うことができるのは嬉しい。出品されているのは十一面観世音菩薩の他に同じ大御輪寺に元々置かれていた地蔵菩薩立像(現在は法隆寺、国宝)、日光・月光菩薩(正暦寺)の四体が150年ぶりに顔を合わせている。
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特別5室という会場に入ると真ん中に十一面観世音菩薩像がガラスケースの中に置かれている。
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奈良時代に作られた像は木心乾漆像で高さが209cm、威厳のある顔立ちで広い肩に引き締まった体躯、天衣や指先の表現も優美な作品。一眼見て何とバランスがいい、クールな仏様だと思った第一印象は今も全く変わらない。
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十一面観世音は通常は頭部に化仏を頂いていて、正面に柔和面3つ、左側に憤怒面3つ、右側に白牙上出相3つ、背面に大笑面、頭頂に仏相と頭上に12面あるはずなのだが、この像には左右3面、頭頂に1面の計7面しか見つからなかったことに気づく。というのは私が奈良県で見た時には仏像の後ろに回り見ることができなかったからである。色々と調べたが、この謎は分かっていない。
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とはいえ、無事に大好きな仏像をじっくり拝めることができて大変満足。前回美術館に行ったのが佐藤可士和展(4月)以来だったがやはり目の保養には最高である。続いて国立博物館では聖徳太子展も行われるが、無事に開催できることを祈るばかりである。