たまには「本物の駅そば」が食べたくなる。私が本物というのは「駅のホームにある」「席はなく立喰のみ」「温めてすぐに提供できる茹でそば」の3つの条件を満たしている駅そばのことである。
(常盤軒・品川駅ホーム)
具体的には品川駅の「常盤軒」や高崎駅の「高崎駅五号売店」、高尾駅の「そば処高尾山」などがそれにあたる。今回は上野駅9・10番線ホームにある「大江戸そば」にお邪魔した。
(そば処高尾山・高尾駅ホーム)
上野駅9、10番線は主に上野・東京ラインや常磐線快速などが発着する2階ホームで最も後ろよりにある。
かなり歴史漂う店づくりだが、店前右側に置かれている食券の券売機は最新型。冷・温から選ぶタイプで季節のおすすめは『舞茸しめじのかき揚げそば』らしい。私は定番の『かき揚げそば』(460円)を選択、食券を持って手動で開く扉からカウンターに直行する。
気の良さそうなおばちゃんに食券を渡すとすぐに茹でそばを温め始める。店内には4人の先客、私はお冷を注いで立喰のテーブルに置く。すぐにできると振りネギを2回に分けてたっぷり入れてくれる。
七味唐辛子を振りかけ、そばの丼を持ちテーブルに置く。かき揚げはカリカリというよりしっとり系、茹でそばを手繰る。これこそいわゆる駅そば。やや太く、浅黒い麺、懐かしい。
かき揚げはややぼってり、ツユが染みていい感じ。箸でちぎって一口、玉ねぎ中心だが、桜エビの香りがする。
甘辛いツユを飲みながら外を見ると家路を急ぐ乗客がホームを小走りに。ホームの端にそば屋はあるので急がないと次の高萩行き快速に乗れなくなりそうだからである。
先客はいなくなり、私の後に来たおじさんは私の隣でかけそばを啜っている。チラリと見るとネギはあまり入っていない。壁には諸物価高騰の折からネギ増しは9月30日以降はできなくなりますという世知辛い張り紙。ネギくらいいいじゃないかと思ったが、だから何も言わなくても人の良さそうなおばさんはネギ増しをしてくれたのかもしれない。
隣のおじさんはそそくさと食べ終わると急いでホームへ、私はご馳走様とおばさんにどんぶりを渡す。ありがとうございました、とおばさん。こんなやり取りも嬉しい駅そばでした。ご馳走さまでした。
駅そば大江戸そば
上野駅9・10番ホーム
0338450851