三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

コンサート「新宿 フォークソングが流れる街」

2016年10月11日 | 映画・舞台・コンサート
新宿文化センターで催されたコンサート「新宿 フォークソングが流れる街」に行ってきた。
六文銭の歌が聞けて、とても懐かしい気分だ。リーダーの小室等はかなり昔に吉田拓郎とラジオで喋っていて、そのときに紹介していた曲を今でも覚えている。
泉谷しげるが作った「国旗はためく下に」を小室等がマイナーコードに変えて歌うのだ。元の曲は泉谷らしい反体制、反時代のやけくそな歌なのだが、マイナーコードに変えた途端にとてつもなくもの悲しい歌になる。
残念ながらこの日は「国旗はためく下に」は歌ってくれなかったが、現在よりももっと封建的な精神性が色濃く残っていた昭和の時代に、自由に考えを述べたり歌を歌ったりする勇気のある人々がいた時代を思い出した。中島みゆきは次のように歌っていた。
「シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく 変わらない夢を流れに求めて 時の流れを止めて変わらない夢を見たがる者たちと戦うため」

あの頃は体制と反体制、或いは保守反動と革新革命というわかりやすい背反構造だったが、いまは格差構造になり、弱い人々が互いに足を引っ張り合う時代だ。そんな時代に自由に考えを述べたり歌ったりすると、袋叩きに合うだろうし、職を失って路頭に迷うか、暴力装置である警察に逮捕されてしまうだろう。しかしどんな時代でも、勇気を出して言いたいことを言い続けないと、自由は簡単に蹂躙されてしまうのだ。場合によっては平和も失われる。

新宿にフォークソングが流れていたことは一度もない。司会のなぎら健壱もそう言っていた。新宿は自由と欲望とカタギとヤクザと過激派とノンポリが入り混じっていたカオスの街だった。アングラの雰囲気に満ちていたが、どこか自由な精神の風が吹いていた。みんな新宿を愛していたし、自由を認めない社会と戦っていた。そして酔っぱらって大声で歌ったり、立ちんぼのババアをからかったりしたのだ。
長い間、そんな自由の風を忘れていたが、このコンサートで少し取り戻したような気がする。