映画「帝一の國」を観た。
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平日の夜スタートの回だったが半分以上の席が埋まっていて、その8割を女性客が占めていた。流石にいまをときめくイケメン俳優たちの競演である。
予告編ではバンカラの男子校が舞台のギャグ映画にしか思えずあまり期待していなかったが、なかなかどうして、結構内容のあるいい作品だった。
永井聡監督は「世界から猫が消えたなら」も「ジャッジ!」も世の中の権威や既成の価値観を相対化し、改めて問い直すいい作品だった。本作も学内の権力闘争を描いていながら、国家の権力闘争よろしく世論の動向を気にしたり、実弾が飛び交ったりスキャンダルの暴露があったりと、現実の政治の馬鹿馬鹿しさをギャグにして相対化し、笑い飛ばしている向きがある。
政治権力というヒエラルキーの頂点に向かって互いに蹴落とし合う姿は、総理大臣を目指す政治家や事務次官を目指す官僚たちと少しも違わない。権力を手にしてこの国をどのようにしたいかという哲学に欠けている点も同じである。大真面目にやっているところが可笑しくもあり、空恐ろしくもある。
共謀罪が成立しかけているこのタイミングで公開されたことは、この映画にとって幸運である。政治の内情を暴露したという罪で逮捕されかねないからだ。
日本の若手俳優は男女とも達者な人が多い。主演の菅田将暉は、脱力系の演技が得意なのかと思いきや、こういった前のめりに力んだ役も簡単にこなす。氷室ローランドを演じて存在感を示した間宮祥太朗は、発声の仕方がひとりだけ独特で、屋内なら壁を顫わせるような、屋外なら雷鳴のようなと表現したくなる、そんな声を出す。舞台でハムレットを演じれば、さぞかし客が入るだろう。
テンポのいいストーリー展開、メリハリのある演出、大胆で力のこもった演技と、三拍子そろった作品である。