三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「キャプテン・マーベル」

2019年03月26日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「キャプテン・マーベル」を観た。
 https://marvel.disney.co.jp/movie/captain-marvel.html

 前から思っていたが、IMAXの3Dはあまり大したことがない。そこそこの大きさがあるシネコンのスクリーンなら2Dで十分だ。少なくとも、800円も余計に出費する価値はない。という訳で最近は3Dの作品でも2Dの上映があればそちらにしている。本作品も3D作品だが、2Dのスクリーンで鑑賞した。十分だった。
 ジュード・ロウは「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」では才能溢れる若手の作家を情熱的に演じたのが印象的だが、本作品のようなアクションSFでもなかなか堂に入った演技をしている。この人とサミュエル・ジャクソンのふたりの存在感あればこそのストーリーで、いなければ作品が成立しなかっただろうと思われる。
 とは言え、主人公を演じたブリー・ラーソンの演技も大したもので、トレーニングの後の不敵な笑みや、ひしひしと感じる孤独感から自然に流す涙、そして全身に漲る不屈の闘志など、オスカー女優の面目躍如である。元同僚女性の役のラシャナ・リンチはこの作品で初めて見たが、女性らしい丸みと柔らかさを感じさせる演技がいい感じだ。そしてその子供の役の女児がとても達者なのには感心した。
 プロットもストーリーも緻密で中身が濃く、これまでのマーベルの作品とは一線を画している。奇想天外な設定だが、SFらしくて受け入れやすいし、役者陣の隙のない演技が全体を引き締めて、最後までワクワクと楽しめる。このところのハリウッド映画では出色の痛快なSFアクション活劇だ。


映画「サンセット」

2019年03月26日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「サンセット」を観た。
 http://www.finefilms.co.jp/sunset/

 難解な映画である。まず映像の殆どが主人公の顔の大映しなので、場所の把握が難しい。映像酔いしそうな感じさえある。そして映される主人公の顔にはあまり表情がなく、視線の先の光景が説明なしに映される。主人公の意図がどこにあるのか、常に不明である。
 それでも鑑賞中にいくつかの情報を得ることができる。ハンガリーでは日本や朝鮮と同じように、苗字~名前の順で表すようだ。
 主人公レイター・イリスは対人恐怖や対物恐怖といった感情とは無縁である。観客はまったく感情移入できないまま、先の読めないイリスの行動にどこまでもついていくことになる。イリスが唯一はっきりと意思表示をするのは、火事で亡くなった両親の遺した帽子店で働きたいということだけである。その両親には秘密があり、雇っている針子たちのひとりを不定期に権力者に差し出していたようだ。
 兄レイター・カルマンは、両親の罪を背負う覚悟をして、犠牲になった針子たちの復讐をするかのように、貴族をはじめとする権力者にテロを仕掛ける。イリスの無表情で不気味な行動力はストーリーが進むに連れてエスカレートし、心の荒んだ馭者さえ言うことをきかせるほどになる。それは兄の跡を継ぐことに必要な資格のように思える。しかしそれがラストシーンに繋がったのかというと、確証はない。
 製作者の意図は商業目的でないことだけは確かだが、何が描きたかったのかというと、はっきりしない。第一次世界大戦の前年の出来事として、火種の燻るブダペストと、導火線に火を付ける意志の持ち主の誕生前夜だろうか。
 一回の鑑賞では断片的な情報を集めて再構成するまでには至らなかった。しかしもう一度観るにはかなりの忍耐力を要すると思われる。