三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「モービウス」

2022年04月08日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「モービウス」を観た。
映画『モービウス』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

映画『モービウス』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

映画『モービウス』 大ヒット上映中 #モービウス

映画『モービウス』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

 マッドサイエンティストが登場する映画で記憶にあるのは、ジョニー・デップが主演した2014年の「トランセンデンス」やエリザベス・モスが主演した2020年の「透明人間」などが記憶に新しい。
 本作品を観て、ジェフ・ゴールドブラム主演の1986年「ザ・フライ」を思い出した人も多いだろう。テレポーテーションを物理学で行なうために、2つのポッドを用意して繋ぎ、一方に動物を入れてもう一方に転送する実験についに成功した博士が、自分自身を転送する実験を行なうが、その際に一匹のハエがポッドに入ってしまった。そのハエと遺伝子レベルで融合した博士は、異常な活力を得るのだが、、、という話だ。この映画はとても面白かった。

 本作品は「ザ・フライ」ほどの目新しさはないが、それなりに面白い。主人公モービウスは、吸血コウモリの血液によって難病を治療しようとする医学者で、血清を投与した後は驚異的な能力を得るが、その一方で、、、という話。モラリストとしてのモービウスの葛藤があって、作品が平板にならないようにしているところがいい。それにアクションがユニークで、VFXはとても見事だ。だから飽きずに楽しめる。というか、あっという間に終わる。続編ありの終わり方だ。

 冒頭の幼い頃のエピソードは物語にとって重要であり、モービウスの出発点でもあるから、続編でも使われるだろう。物語の決着のつけ方と、マイロとマルティーヌのその後が気になるので、続編も観たいと思う。

映画「キャスティング・ディレクター」

2022年04月08日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「キャスティング・ディレクター」を観た。
映画『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』公式サイト

映画『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』公式サイト

2022年4月2日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開|映画業界で最も重要な仕事の一つでありながら、最も知られていない仕事=キャスティング(配役)。これ...

映画『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』公式サイト

 映画のエンドロールに、洋画なら「Casting」邦画なら「配役」という役割が出ることがある。これまでは何も考えずに、ただ茫然と眺めているだけであった。配役をさして重要な役割だとは考えていなかったのである。大抵がオーディションで決められるか、脚本家が当て書きをするか、業界の力関係で決められるものだと思っていた。
 しかし考えてみれば、すべての作品でオーディションが行なわれる訳ではないし、当て書きをされるのは極く一部の俳優である。芸能事務所や制作会社が決めるといっても、たくさんの作品製作をすべて網羅しているわけではないだろう。
 ということは、配役担当者がそれぞれの役に相応しいと考える俳優を用意する訳で、交渉の段階で業界の力関係がはたらく。配役担当者の力と業界の力のパワーゲームになることもあるのだろう。

 本作品では、かつては優秀な配役担当者がいて、映画の配役を任されていたことが紹介されている。配役によっては作品を台無しにすることもあるし、逆に配役によって役者同士のダイナミズムが生まれて作品が俄然、輝くこともあった。
 特に本作品で中心的に扱われているマリオン・ドーハティは、すべての現役俳優について、長所、短所、特記事項を熟知している上に、様々な劇場を巡って未知の才能を発掘したりもしていた。業界は彼女の実力を知って尊敬し、主張が対立したときは彼女の意見が尊重された。

 しかし映画が商業主義に飲み込まれて芸術としての独立性を失うと、配役担当者もその地位を失ってしまった。業界の力に押されて、独自の配役を通すことができなくなってしまったのである。そうなると芸能事務所のエージェントが仕事をさせたい役者、売り出したい役者を配役することになり、作品のことは二の次になる。役者同士のダイナミズムなんて誰も考えないから、作品が輝くこともない。
 ハリウッドのB級映画がつまらないのは配役も一因だったのかと、配役の重要性を改めて理解した。先日鑑賞した「TITAN」が無名の女優を使って成功していたように、ドーハティのような天才的な配役担当者が、その力を存分に発揮する日が戻ってくれば、ハリウッド映画も芸術性を取り戻せるかもしれない。でなければハリウッドの映画はいつまでもB級のままである。