映画「L.A.コールドケース」を観た。
普通に考えれば、13,000人も警察官と職員がいるロス市警の組織的な不正は、社会にとって一大事だ。それでなくても不祥事の多いロス市警である。市民が警察官を信用できなければ、社会の安全はない。
本作品は法と正義を貫いた立派な警察官であるラッセル・プールの実話に基づいている。ロス市警の闇を執拗に追及したその姿勢は、日本の地検特捜部やマスコミの記者たちが放棄したものだ。プールの爪の垢でも煎じて飲んでほしいと思う。
とはいえ、2022年に鑑賞すると、ロス市警の不正など小さな事件に思えてしまうから不思議だ。本作品が作成された2018年に公開されていれば、もっと強く印象に残ったはずだが、コロナ禍が猖獗を極め、ロシアがウクライナに侵攻し、日本の政権与党がまるごとカルト宗教とズブズブの関係が明らかになったりすると、現実のほうが恐ろしすぎて、警察の組織的な不正などよくある話のひとつに感じる。それは本作品にとっては不運だろう。
ジョニー・デップは好演。やっぱり器用な俳優だ。目に力があるから、海賊から酔いどれから真面目な警察官まで、どんな役を演じても存在感がある。
ハリウッド映画だったら努力が報われて家族との関係も修復するようなラストにしたかもしれないが、そこはイギリス映画。事実に対して真摯である。不明な点は不明なまま残し、組織の闇、ひいては人間の闇として余韻を残した。
公開が遅れてインパクトが弱くなってしまったのは残念だが、映画としてはいい作品だと思う。本来は映画作品は俳優の私生活と区別されるべきで、公開の遅れはジョニー・デップの責任ではない。しかしそこもやはりイギリス映画。世論を真面目に考慮したのだろう。やむを得ないところだ。