三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「霧幻鉄道 只見線を300日撮る男」

2022年08月05日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「霧幻鉄道 只見線を300日撮る男」を観た。
■霧幻鉄道

■霧幻鉄道

ドキュメンタリー映画『霧幻鉄道』公式HP。2011年、福島で起きたもうひとつの災害はローカル線復活の奇跡のストーリーを生んだー まだ見ぬ絶景を追い続ける 一人の写真家が...

mirufilm ページ!

 

 鑑賞していると、なんだか旅をしているような気分になる。個人的に今年は猪苗代湖に行き、尾瀬に行き、魚沼に行った。奥会津の真ん中を走る只見線は、猪苗代湖の西にある会津若松から魚沼を結んでいる。つまり奥会津は猪苗代湖の西、尾瀬の北、魚沼の東に位置する訳だ。

 アクセスが難しい場所でもある。しかし映画で観る景観は素晴らしい。本作品を観て行ってみたいと思う人が多いだろう。観光で地域が潤えば、只見線も赤字から脱却できるかもしれない。
 奥会津は洪水の被害に遭い、地球温暖化の影響と思われる雪不足に悩まされ、コロナ禍で施設閉鎖の憂き目に遭う。それでもそこに暮らす人々は決して暗くない。奥会津は水が豊かで自然が美しいところだ。住民と行政が一緒になって、奥会津をもり立てようと努力する。その努力は、きっと楽しいことに違いない。
 最近は大都市では夜空の星が殆ど見えない。少なくとも東京ではそうだ。地方にいたときは夜は満天に星が降っていた。「星の降る夜はあなたと二人で」という出だしの歌詞で知られる懐メロの「星降る街角」は1972年の発売だから、その頃は多分東京でも星がたくさん見えたのだろう。
 星空を見るために地方に旅行したり、プラネタリウムに出かけたりする。尾瀬の帰りに泊まった丸沼の湖畔では、驚くほどたくさんの星が見えた。長いこと星が降るような空を見ていなかったので、とても感動した。滅多にない体験であり、大都市に住む人間にとってはひとつの邂逅でもある。
 大都市は夜の星が見えないほどの明かりを灯す必要があるのか。商業施設は半袖だと寒く感じるほど冷房を効かせる必要があるのか。人間が快適さを求めるのは自然なのだろうが、過度になるとむしろ不快である。
 冬は雪あかりで勉強し、夏は蛍の光で勉強したというのは誇張だとは思うが、過度の明るさ、過度の空調は、人間を弱くする気がする。おまけにそれらは電力によってまかなわれるから、発電のために温室効果ガスを大量に発生させる。快適さを求める大都市の人々のために、奥会津の雪が減少したのだとしたら、反省して然るべきだ。
 我々はPCやスマホに囲まれて、情報の洪水に翻弄されている。もはや当日の天気さえ、空を見上げるのではなくスマホの情報を確認する。人間は空を見上げても天気が予想できなくなってしまったのだ。
 地球温暖化は我々が快適さを求めすぎているからだ。快適さにも人それぞれに方向性がある。満天の星空が見えることが快適なのか、寒いほど冷房を効かせることが快適なのか、選ばなければならない。目先の観光収入にこだわっている場合ではない。未来の人間たちに美しい自然を残せるかどうかの瀬戸際なのだ。