三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「ヴァチカンのエクソシスト」

2023年07月16日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ヴァチカンのエクソシスト」を観た。
映画『ヴァチカンのエクソシスト』 オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

映画『ヴァチカンのエクソシスト』 オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

悪魔は存在する。今でも―。映画『ヴァチカンのエクソシスト』7月14日(金)全国の映画館で公開

映画『ヴァチカンのエクソシスト』 オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

 これはかなりオススメの作品である。

 キリスト教の悪魔や堕天使は、日本では日常的にはあまり登場しないが、サタンやルシフェルやベルフェゴールやベヒーモスといった言葉には聞き覚えがあるし、メフィストフェレスはゲーテの「ファウスト」でお馴染みだ。エクソシストが悪魔祓いをするカトリックの聖職者であることは、1973年の映画「エクソシスト」で広く知られるようになった。
 ローマ・カトリック教会は歴史的な紆余曲折を経て、ローマ教皇を頂点とするヒエラルキーの典型みたいな現在の組織になっている。ローマ教皇-大司教-司教-司祭-助祭という階級である。カトリックでは聖職者のことを神父と呼ぶこともある。ローマには大司教や司教から選ばれる枢機卿がいて、コンクラーベという儀式によって教皇を選出する。

 エクソシストは階級ではなく役職名で、主に司祭が担当する。本作品のガブリエーレ・アモルト神父は司祭で、教皇から特命を受けた首席エクソシストだ。スペシャリストだからやりたいようにやる側面があって、司教や大司教はそれが気に食わない。
 尊敬されている一匹狼みたいな立ち位置のアモルト神父を、ラッセル・クロウが貫禄たっぷりに演じる。サン・セバスチャンは歴史的にもいわくつきの修道院だ。何か起きそうな気配に満ちている。舞台装置は揃った。あとはどんな恐ろしい悪魔を登場させてくれるか。

 それから先は観てのお楽しみである。ホラーにしては映像は明るめで見やすかったし、ストーリーも分かりやすかった。登場する悪魔の来歴にも説得力がある。最も邪悪な堕天使はかなりの強敵だ。アモルト神父は孤軍奮闘だが、使えるものは人でも物でも何でも使う。人は自分に危険が迫ったら頼れる人に頼るものだ。そして信頼を獲得するのは味方だけではない。敵にもこいつは本物だと思わせる。まさに百戦錬磨の技術だ。
 ジョークを言ったり、緊迫している場面でいきなり告解をはじめたりと、細かいシーンに予想外の驚きと面白さがある。緊張と弛緩を繰り返しながら、物語は大団円に向けて収斂していく。とても盛り上がる展開である。傑作だ。

映画「君たちはどう生きるか」

2023年07月16日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「君たちはどう生きるか」を観た。
君たちはどう生きるか - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

君たちはどう生きるか - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

君たちはどう生きるか。 原作・脚本・監督:宮﨑 駿 製作:スタジオジブリ ...

 製作側が情報を極端に非公開にしているから、ネタバレしないレビューを書くのが難しいが、確実に言えることは、物語の力を感じるファンタジーだということである。とても面白く鑑賞できた。

 ストーリーが進むためには人々の強い思惑が必要だから、本作品には様々な思惑が登場する。最も単純な思惑は、単細胞で俗物根性丸出しの底の浅い人物のそれだ。相応しい人が声優を担当していて、声を聞いた途端に笑ってしまった。その他の登場人物もそれぞれに思惑があり、行動は大胆だ。このあたりはファンタジーの王道を踏襲している。

 序盤に登場するトリックスターがナビゲーターの役を務める物語は、時空間を自在に設定して、様々な可能性を広げる。突拍子もない場所に連れて行かれ、想像もしなかった事態が待っている。慌てるのは禁物だ。落ち着いて状況を見極め、考える基準を見つけ出さねばならない。どの道を選ぶのか。否応なしの展開もあるから、主人公に与えられる選択の機会は多くない。であれば、尚更よく考えなければならない。

 世界は緊迫している。悠久の時間がコラージュのように重なり合う中で、考えなければならない事柄、想像しなければならない未来が主人公の前に課題となって積み重なっていく。古い考え方や使い回しのパラダイムはもはや通用しない。考えろ、考えろ、もっと考えろ。物語自体が、我々に何を選択するのかを問いかけているようだった。