映画「ヴァチカンのエクソシスト」を観た。
これはかなりオススメの作品である。
キリスト教の悪魔や堕天使は、日本では日常的にはあまり登場しないが、サタンやルシフェルやベルフェゴールやベヒーモスといった言葉には聞き覚えがあるし、メフィストフェレスはゲーテの「ファウスト」でお馴染みだ。エクソシストが悪魔祓いをするカトリックの聖職者であることは、1973年の映画「エクソシスト」で広く知られるようになった。
ローマ・カトリック教会は歴史的な紆余曲折を経て、ローマ教皇を頂点とするヒエラルキーの典型みたいな現在の組織になっている。ローマ教皇-大司教-司教-司祭-助祭という階級である。カトリックでは聖職者のことを神父と呼ぶこともある。ローマには大司教や司教から選ばれる枢機卿がいて、コンクラーベという儀式によって教皇を選出する。
エクソシストは階級ではなく役職名で、主に司祭が担当する。本作品のガブリエーレ・アモルト神父は司祭で、教皇から特命を受けた首席エクソシストだ。スペシャリストだからやりたいようにやる側面があって、司教や大司教はそれが気に食わない。
尊敬されている一匹狼みたいな立ち位置のアモルト神父を、ラッセル・クロウが貫禄たっぷりに演じる。サン・セバスチャンは歴史的にもいわくつきの修道院だ。何か起きそうな気配に満ちている。舞台装置は揃った。あとはどんな恐ろしい悪魔を登場させてくれるか。
それから先は観てのお楽しみである。ホラーにしては映像は明るめで見やすかったし、ストーリーも分かりやすかった。登場する悪魔の来歴にも説得力がある。最も邪悪な堕天使はかなりの強敵だ。アモルト神父は孤軍奮闘だが、使えるものは人でも物でも何でも使う。人は自分に危険が迫ったら頼れる人に頼るものだ。そして信頼を獲得するのは味方だけではない。敵にもこいつは本物だと思わせる。まさに百戦錬磨の技術だ。
ジョークを言ったり、緊迫している場面でいきなり告解をはじめたりと、細かいシーンに予想外の驚きと面白さがある。緊張と弛緩を繰り返しながら、物語は大団円に向けて収斂していく。とても盛り上がる展開である。傑作だ。