映画「丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部」を観た。
この一年に映画館で鑑賞した戦争関連の映画。
「島守の塔」
「ファイナルアカウント 第三帝国最後の証言」
「長崎の郵便配達」
「バビ・ヤール」
「愛国の告白-沈黙を破るPart2-」
「ラーゲリより愛を込めて」
「ヒトラーのための虐殺会議」
「Paper City 東京大空襲の記憶」
「世界が引き裂かれる時/クロンダイク」
そして、本作品。
戦争の記録やそれに類する映画を観るたびに、人類はいつまでも愚かだと実感する。どれだけ多くの人々が命を失えば、戦争は絶対に回避しなければならないということに気づくのだろうか。
本作品で印象に残ったのは、戦後の沖縄の人々は日本国憲法の理念が沖縄で実現することに希望を抱いたという話だ。憲法の三本柱である平和主義、国民主権、基本的人権の尊重は、沖縄の人々の悲願でもあるのだ。
国民の生命と身体と財産を守ることは国家の義務だが、戦争をすることは、他国の攻撃から守ることを口実に、国民の財産を奪い、身体を傷つけ、最後は生命まで奪ってしまうことになる。まさに基本的人権の蹂躙そのものである。基本的人権は平和主義と国民主権があってこそ尊重されるのだ。
しかし戦後の歴代政権は、沖縄の人々の悲願を無視して、人権を蹂躙してきた。唯一、鳩山由紀夫だけが辺野古移設に真っ向から反対し、最低でも県外を主張したが、CIAによってあっという間に失脚させられてしまった。日本の政権はいずれも従順なポチだったから、鳩山総理の発言にアメリカ政府は随分驚いただろう。飼い犬に手を噛まれた思いだった筈だ。
丸木夫妻の絵は、終戦時の沖縄の人々の悲惨な記憶と、戦後民主主義への希望を描いている。現代の人々が忘れかけているものだ。人類は愚かだから、油断すると戦争をはじめてしまう。不断の反戦運動によって戦争の現実を伝え続けなければならない。
しかしそれには勇気がいる。丸木夫妻の絵は、その勇気を与えてくれる。反戦には継続的な努力も欠かせない。原動力となるのは戦争の危機感だ。本作品は構成も音楽もよく出来ていて、現実の危機感を呼び起こす。
日本は憲法の理念を歪めて、再び全体主義、国家主義の道を歩きはじめているのではないか。戦争法案が成立し、軍拡予算が国会を通過した。この道はいつか来た道だ。現在の日本の為政者たちは、沖縄戦で責任を取らなかった人たちとそっくりである。丸木夫妻の絵の向こうから、戦争の足音が聞こえてくる気がした。