風邪や疲れに「点滴バー」 都心に増加、効果に疑問も 2009年1月11日 朝日夕刊
http://www.asahi.com/health/news/TKY200901100099.html
東京都心で滋養強壮や美白を売り文句にした「点滴外来」が増えている。おしゃれな内装で「点滴バー」と名乗るところも。サプリメント(栄養補助食品)と比べて体内に直接取り入れるため吸収率が高く、抜群の効果があるというのだが――。
金曜の夕方。恵比寿ガーデンプレイス(東京都渋谷区)のTENTEKI10にはひっきりなしに利用者が訪れていた。 「今日はブルーパックで」 「イエローにビタミンCを足して」 予約不要、10分で終了の手軽さが売りだ。08年1月に開店してから約3500人が訪れた。男女比は半々という。
渋谷区に住む婚礼用生花店員の女性(23)はビタミンCを点滴した。「疲れ切ってます」。結婚式が立て込む春と秋には、朝4時の出勤や午前2時までの仕込みがざらだ。「点滴はやってる最中から元気になる。値段は張るけど、即効性には代えられない」
会社員の男性は、女性看護師につぶやいた。「週末も仕事なんで。いま元気つけておかないと」
同じビルには外資系証券会社が入る。点滴を打つ間も惜しんで、持ち込んだ資料を読み込む社員もいるという。
年末年始には「風邪対策」や「宴会準備」と銘打ったメニューが好評だった。
担当医によると、以前から疲労や風邪を理由に点滴を望む患者は多かった。だが医学的には、点滴をするほどでない場合も多い。「現代医療では疲れは置き去りにされている。でも睡眠不足やストレスは万病のもと。何とか要望に応えたかった」。点滴スペースを設けてからは「こういうのを待っていた」という声が多いという。広報担当の矢ノ倉利幸さんは「医者は『ゆっくり寝て栄養をとって』というが、寝られないほど忙しいからみんな困ってここに来る。これが社会の実情です」。
六本木で美容外科や形成外科を開くサフォクリニックは、08年6月から点滴外来クリニカルバーを開いた。ここでは点滴を「ドリップ」、注射を「ショット」と呼ぶ。
医師の問診で薬剤を決めると、カウンターで女性看護師が薬剤を「カクテル」。落ち着いた音楽が流れる中、骨盤矯正ソファに座り、「活性酸素を取り除く」という空気を吸いながら点滴を受ける。
ここでは、美白効果をうたった高濃度ビタミンCが一番人気。劉輝美・副院長は「点滴とサプリメントや運動を組み合わせて解毒や浄化をすることが老化防止には有効です」と話す。
インターネットで「美容点滴」と検索すると、無数の医院が出てくる。特に官庁への届け出は不要なので、厚生労働省も「実態は把握していない」という。
こうしたブームについて、ベストセラー「がんばらない」の著者、鎌田実・諏訪中央病院名誉院長は「点滴は脱水症状などへの一時的な効果しかなく、成分の多くが排出されてしまう」と疑問視する。「日本には昔から『注射や点滴をすれば元気になる』という幻想がある。それがストレス社会の中で商売に利用されている」
ファッションエッセイストのフランソワーズ・モレシャンさんによると、フランスでも老化を防ぐためのアンチエイジングへの関心が高まる中で、栄養分を点滴などで取り入れる療法などが現れている。だが施術前に血液検査などをした上で、足りない成分を補うという。
「手軽さを売り物にバーと呼ぶなんて。日本のものは、お医者さんも使う人も、ちょっと安易ではないですか」
う~ん…(滝汗 お金を払って高濃度の酸素を吸わせてくれる酸素バーがあることは知っていましたが、点滴バーというのは、ごくごく個人的には、非常に抵抗がありますね…。
というのも、点滴というものは、費用対効果の問題もさながら、静脈に針を刺すわけで、いくら医師が行なうとしても、針を体に刺す以上、最悪医療ミスが発生したり、ショック症状に襲われる可能性がゼロではありませんし、町のお医者さんだって、薬で治るような症状で点滴なんて打ちません。それなのに『医療上の必要性もないのに点滴を行なった結果、万が一にもそのことが原因で顧客が死亡したり、ショック症状が原因で重大な後遺症が残ったとしたら、一体誰が責任を取るのか』という一番大事な問題が置き去りにされているのではないでしょうか…。
いくら本人が自己責任で点滴を打ったとしても、重大症状が出れば、家族は納得できるものでもないでしょうし、糖尿病患者のインスリン注射じゃるまいし、もし裁判沙汰になるような重大事故が起こったらどうするつもりなんだろう…と他人事ながら心配になってきます。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200901100099.html
東京都心で滋養強壮や美白を売り文句にした「点滴外来」が増えている。おしゃれな内装で「点滴バー」と名乗るところも。サプリメント(栄養補助食品)と比べて体内に直接取り入れるため吸収率が高く、抜群の効果があるというのだが――。
金曜の夕方。恵比寿ガーデンプレイス(東京都渋谷区)のTENTEKI10にはひっきりなしに利用者が訪れていた。 「今日はブルーパックで」 「イエローにビタミンCを足して」 予約不要、10分で終了の手軽さが売りだ。08年1月に開店してから約3500人が訪れた。男女比は半々という。
渋谷区に住む婚礼用生花店員の女性(23)はビタミンCを点滴した。「疲れ切ってます」。結婚式が立て込む春と秋には、朝4時の出勤や午前2時までの仕込みがざらだ。「点滴はやってる最中から元気になる。値段は張るけど、即効性には代えられない」
会社員の男性は、女性看護師につぶやいた。「週末も仕事なんで。いま元気つけておかないと」
同じビルには外資系証券会社が入る。点滴を打つ間も惜しんで、持ち込んだ資料を読み込む社員もいるという。
年末年始には「風邪対策」や「宴会準備」と銘打ったメニューが好評だった。
担当医によると、以前から疲労や風邪を理由に点滴を望む患者は多かった。だが医学的には、点滴をするほどでない場合も多い。「現代医療では疲れは置き去りにされている。でも睡眠不足やストレスは万病のもと。何とか要望に応えたかった」。点滴スペースを設けてからは「こういうのを待っていた」という声が多いという。広報担当の矢ノ倉利幸さんは「医者は『ゆっくり寝て栄養をとって』というが、寝られないほど忙しいからみんな困ってここに来る。これが社会の実情です」。
六本木で美容外科や形成外科を開くサフォクリニックは、08年6月から点滴外来クリニカルバーを開いた。ここでは点滴を「ドリップ」、注射を「ショット」と呼ぶ。
医師の問診で薬剤を決めると、カウンターで女性看護師が薬剤を「カクテル」。落ち着いた音楽が流れる中、骨盤矯正ソファに座り、「活性酸素を取り除く」という空気を吸いながら点滴を受ける。
ここでは、美白効果をうたった高濃度ビタミンCが一番人気。劉輝美・副院長は「点滴とサプリメントや運動を組み合わせて解毒や浄化をすることが老化防止には有効です」と話す。
インターネットで「美容点滴」と検索すると、無数の医院が出てくる。特に官庁への届け出は不要なので、厚生労働省も「実態は把握していない」という。
こうしたブームについて、ベストセラー「がんばらない」の著者、鎌田実・諏訪中央病院名誉院長は「点滴は脱水症状などへの一時的な効果しかなく、成分の多くが排出されてしまう」と疑問視する。「日本には昔から『注射や点滴をすれば元気になる』という幻想がある。それがストレス社会の中で商売に利用されている」
ファッションエッセイストのフランソワーズ・モレシャンさんによると、フランスでも老化を防ぐためのアンチエイジングへの関心が高まる中で、栄養分を点滴などで取り入れる療法などが現れている。だが施術前に血液検査などをした上で、足りない成分を補うという。
「手軽さを売り物にバーと呼ぶなんて。日本のものは、お医者さんも使う人も、ちょっと安易ではないですか」
う~ん…(滝汗 お金を払って高濃度の酸素を吸わせてくれる酸素バーがあることは知っていましたが、点滴バーというのは、ごくごく個人的には、非常に抵抗がありますね…。
というのも、点滴というものは、費用対効果の問題もさながら、静脈に針を刺すわけで、いくら医師が行なうとしても、針を体に刺す以上、最悪医療ミスが発生したり、ショック症状に襲われる可能性がゼロではありませんし、町のお医者さんだって、薬で治るような症状で点滴なんて打ちません。それなのに『医療上の必要性もないのに点滴を行なった結果、万が一にもそのことが原因で顧客が死亡したり、ショック症状が原因で重大な後遺症が残ったとしたら、一体誰が責任を取るのか』という一番大事な問題が置き去りにされているのではないでしょうか…。
いくら本人が自己責任で点滴を打ったとしても、重大症状が出れば、家族は納得できるものでもないでしょうし、糖尿病患者のインスリン注射じゃるまいし、もし裁判沙汰になるような重大事故が起こったらどうするつもりなんだろう…と他人事ながら心配になってきます。