海水注入で炉心冷却開始 東電、福島第1原発で 日本の原発史上、最悪の事故に 2011年3月13日 日経
東日本巨大地震で被災した東京電力福島第1原子力発電所1号機について、経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後、「炉心溶融でしか考えられないことが起きている」と発表した。
原子炉のある建屋が爆発、格納容器の破損はないとするが、核分裂に伴うセシウムやヨウ素を周辺から検出。東電は同日、原子炉に海水を注入し、炉心を冷やす作業を始めた。ほぼ半世紀になる日本の原発史上で、最悪の原子力事故になった。
原子炉の核燃料が溶け出す炉心溶融が起きると、制御不能のまま核分裂が連続して起き、大惨事につながりかねない。日本で原発の運転が始まって半世紀近くたつが、炉心溶融が起きた例はない。
1号機周辺では午後3時半ごろ、爆発音が聞こえ、10分後に白煙が噴出。原子炉がある建屋などの天井が崩落した。この爆発で東電の社員2人と協力会社の作業員2人がけがをし、病院に搬送された。
枝野幸男官房長官は夜の記者会見で「格納容器が爆発したわけではない」と説明した。原因に関しては「炉心の水が少なくなって発生した水蒸気が格納容器の外側の建屋との間の空間に出て水素になり、酸素と合わさって爆発した」と分析。「放射性物質が大量に漏れ出すものではない。爆発前に比べて放射性物質の濃度は上昇していない」と主張した。
東電と福島県による放射性物質の濃度のモニタリング結果も紹介。爆発直前の午後3時29分には、一般人が年間に受ける放射線量の限度(1000マイクロシーベルト)に相当する1015マイクロシーベルトに上昇したが、爆発直後の午後3時40分には860マイクロシーベルトに、午後6時58分には70.5マイクロシーベルトに下がったとしている。
今後、原子炉と格納容器の破損による災害を防ぐため、容器を海水で満たす措置をとると説明。「水を満たす措置は原子炉容器で5時間からプラス数時間、格納容器を満たすのに10日間ぐらいかかる」との見通しを示した。
経済産業省原子力安全・保安院と東京電力によると、12日午後8時20分から福島第1原発1号機に水の注入を開始。海水にホウ酸を混ぜ、炉心上部からスプリンクラーのように水を放出して冷やす。
原発は万一の事故に備え、「5重の壁」と呼ばれる構造で放射性物質を閉じ込める。今回の爆発では一番外側の原子炉建屋の破壊が確認されたが、内側の防壁は保たれている。
建屋崩壊時は、原子炉の格納容器の圧力が高まって壊れる可能性もあったため内部の空気を出す作業を進めていた。1号機は地震発生で自動停止したものの、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動せず、炉を十分に冷やせなくなっていた。
東電は12日午後、原子炉内の水位低下が進んでいると発表した。午前9時に燃料の上部50センチメートルが露出していたのが、10時30分には90センチメートル、午後1時には1.5メートルに拡大。午後3時半ごろに1.7メートルになった。燃料の長さは4メートルで全体のほぼ半分が露出していたことになる。
原子炉に海水注入決断、廃炉も…福島第一1号機 2011年3月13日 読売
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110312-OYT1T00810.htm
地震による自動停止で原子炉内の圧力上昇と過熱を引き起こし、炉心溶融が心配されていた東京電力福島第一原発1号機に、東電は海水を注入するという決断をした。
枝野官房長官が12日夜の記者会見で明らかにした。
海水は、海から引いてたくさんの量を使用できるので、冷却の効果が高い。もともと原発には緊急用の海水注入系があり、温めた蒸気の冷却などに海水を使用している。原発が海辺に建設されるのは、このためでもある。特に、今回の緊急冷却では、海水にホウ酸を添加して使用する。原発の水は、冷却材であると同時に、中性子の速度を落として核分裂反応を起こしやすくする効果がある。
水を注入した結果、再び核分裂が活発化しないよう、反応を抑えるのがホウ酸の役目だ。ホウ酸注入は、非常時の冷却では効果があり、軽水炉には専用の注入システムが常設されている。問題は、1号機の今後だ。海水を使用した場合、設備の復旧が難しくなる。特に今回の事故では、核分裂によって生じた放射性物質が外部に放出されていることから、ウラン核燃料の少なくとも一部が、金属被覆を溶かして露出し、融解を引き起こしている可能性がある。
そのような深刻な汚染が起きたうえに海水を注入した原子炉を、再び健全な状態に戻すのはコストもかかり、実現はかなり難しい。
仮に、原子炉を廃炉にする場合、国への審査手続きが必要になるほか、放射能の高い核燃料の冷却、施設の放射能汚染を取り除く作業(除染)などが必要になる。また、構造物も40年にわたる運転で中性子線にさらされ、放射化しているため、放射線の影響を防ぐための措置を講じた上で解体する必要がある。
電力不足、長期化も 東電が14日から計画停電 他社の融通も期待薄 2011年3月13日 日経
東京電力は福島第1、第2原子力発電所の被災により、14日から地域ごとに順番に電力供給をストップする計画停電(輪番停電)を始めると発表した。他の電力会社からの電力供給量も限られ、生活に欠かせない電力不足は長引く可能性がある。原発の新規建設への警戒心が強まることも避けられず、官民そろって目指してきた「原発立国」に暗雲が垂れこめている。
東京電力は12日、都内の本社で記者会見し、週明けの月曜日から電力供給区域内で順番に供給を止める計画停電を実施する方針を明らかにした。企業のほか一般家庭も含む。13日の日曜日は実施しないが、週明け以降、電力需要が拡大し、供給力が足りなくなる見通しのため。計画停電は1951年の会社設立以来初めて。
会見で藤本孝副社長は14日の電力需給予測について「需要が4100万キロワットに対し、供給力は3100万キロワット程度で、1000万キロワットほど不足する」と述べた。計画停電を実施する期間や規模は未定だが、「少なくとも1週間ぐらい続くのではないか」とし、異常事態であることを認めた。「頼れるのは火力と(稼働中の)原子力だけ」だが、被災した福島第1、第2原発の稼働が見込めない。
2007年7月に新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の全7基が停止した際、東電は一部の大口需要家向けに17年ぶりに送電抑制を実施した。あらかじめ「需給調整契約」を結んでいる大口需要家が対象で、化学や金属など一部の工場は生産ラインの停止を余儀なくされたが、送電抑制の規模は15万~20万キロワットだった。
一方、今回の計画停電は大口需要家だけでなく一般家庭も対象にしたもので、停電の規模も500万~1000万キロワット。07年に実施した大口需要家向け送電抑制に比べて対象顧客も規模も格段に大きい。
頼みの綱である電力融通は期待できない。電力会社は自社で足りない分を他の電力会社から買うこともあるが、東電と同じく周波数50ヘルツの電力は、大きな被害を受けた東北電力や遠隔地の北海道電力だけ。60ヘルツの中部電力から融通しても、周波数変換設備の能力から受電量は限られてしまう。
東電の福島第1、第2原発の設備容量は約910万キロワットで発電量では東電全体の約2割を占める。07年の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発は再稼働まで1年10カ月を要した。炉心が溶融したとみられる今回の事故は柏崎刈羽原発の被災状況を大きく上回る。07年当時に電力供給を頼った東北電力の原発も被災しており、電力需給の逼迫は中越沖地震の時よりも深刻になりそうだ。
中長期でも電力各社の原発新増設計画に深刻な影響を与えるのは確実だ。東電をはじめとする電力各社は、低炭素化社会対応の切り札として原発の新増設を相次ぎ打ち出している。政府が昨年まとめた「エネルギー基本計画」に沿って、電力各社は30年までに14基の原発を新増設し、国内全体で発電量に占める原発比率を34%から70%に高める方針。
中部電力が同社唯一の原発である浜岡原発で6号機の新設を打ち出したほか、東電も福島第1原発で7、8号機の増設と青森県・東通原発の新設を計画している。しかし、今回の事故によって地元の強い反発が予想され、計画自体が宙に浮く可能性がある。
日本は世界的にも長年の運転実績をもとに原子力を軸にした低炭素化社会を目指すエネルギー政策を推進してきたが、根本から見直しを迫られそうだ。
停電続き企業活動に支障、自家発電の燃料切れ 節電で東北以外の生産調整も 2011年3月13日 日経
電力の供給不足が企業の事業活動に影響し始めた。電力の供給が止まった地域では、自家発電用の燃料切れで設備稼働に支障が出ている。また、電力会社からの節電要請により、生産量を調整したり、東北以外の拠点でも節電要請に応えたりする動きが広がっている。
NTT東日本は11日夜に14万2000回線が利用不可能となっていたが、この約9割は予備電源で対応していた局舎で自家発電機の燃料が不足したことなどが原因だった。
NTTドコモは停電となった地域で、燃料で動かす自家発電機、予備蓄電池の敷設などで機能を維持している。自家発電は1~2日程度しか持たないため、今後も停電が拡大すると基地局の中断が増えるとみている。
住友化学は殺虫剤の原料などを生産している三沢工場(青森県三沢市)で停電のため自家発電で操業を続けていたが、燃料切れにより近く運転を停止する見通し。
日立市を中心に茨城県に多くの製造拠点を持つ日立電線も自家発電はできるが、「設備の稼働をまかないきれる能力はない」という。
大同特殊鋼は11日に東京電力から節電の要請があったことを受け、電気炉を使い航空機や船舶向けなどの鍛造品を生産している渋川工場(群馬県渋川市)の生産を調整した。「対応可能な限り生産量を下げることで協力している」(広報室)という。同工場は12日も稼働、13日も操業する予定だ。
パナソニックは12日、東日本巨大地震の電力供給不足の事態を受け、首都圏などで屋外広告灯を消灯する節電対策を実施すると発表した。東芝は各事業所や工場が協力を始めている。キヤノンは、東北以外の拠点でも電力供給不足懸念があることから、東京電力などの要請があれば、研究開発部門や間接部門などで節電に協力する考えだ。
江崎グリコは大阪市内の戎橋そばのネオン看板と本社ネオン、東京都内の渋谷駅前にある街頭ビジョンを12日夜から当面の間消灯する。
今は 何よりも被災地の人命救助が最優先で経済的損失がどうのこうの言っていられる状況ではないと思いますが、中長期的にはこの原子力発電所の炉心溶融?問題が大きく日本経済にも響いてきそうですね…。
勿論被ばくした方や周囲に住む方の健康問題や精神的なケアの問題も気がかりですが、今回の地震ではその影響がどれだけ出てくるか全く予想がつかない(おそらくは神戸の地震の時とは比べ物にならない位大きな影響が出てくるでしょう)だけに、原発建設の問題やその原発の海外での受注といった経済的な問題ばかりでなく、今後の東北・関東地方の方の生活問題をどう1つ1つ着実に解決していくのか、その手腕が問われるように思います。
東京電力も、14日から企業だけでなく一般家庭も対象に計画停電を行うようですし、そうなるとたとえ製造設備が無事でも生産そのものができない可能性も出てきて、直接被害を受けていない企業も含め、機会損失という間接的な被害を被り、結果的に企業業績を直撃する可能性も…。
事故発生当日の日経平均先物は開始直後に1万円割れしていましたが、被害状況がどれだけ大きなものとなっているのか丸1日以上たった現在でも把握し切れていない状況を考慮すると、今後どんな予想外の悪材料が出てこないとも限らないだけに、ここしばらくはほとんどの上場企業の株価への影響も避けられないものと思われます。
東日本巨大地震で被災した東京電力福島第1原子力発電所1号機について、経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後、「炉心溶融でしか考えられないことが起きている」と発表した。
原子炉のある建屋が爆発、格納容器の破損はないとするが、核分裂に伴うセシウムやヨウ素を周辺から検出。東電は同日、原子炉に海水を注入し、炉心を冷やす作業を始めた。ほぼ半世紀になる日本の原発史上で、最悪の原子力事故になった。
原子炉の核燃料が溶け出す炉心溶融が起きると、制御不能のまま核分裂が連続して起き、大惨事につながりかねない。日本で原発の運転が始まって半世紀近くたつが、炉心溶融が起きた例はない。
1号機周辺では午後3時半ごろ、爆発音が聞こえ、10分後に白煙が噴出。原子炉がある建屋などの天井が崩落した。この爆発で東電の社員2人と協力会社の作業員2人がけがをし、病院に搬送された。
枝野幸男官房長官は夜の記者会見で「格納容器が爆発したわけではない」と説明した。原因に関しては「炉心の水が少なくなって発生した水蒸気が格納容器の外側の建屋との間の空間に出て水素になり、酸素と合わさって爆発した」と分析。「放射性物質が大量に漏れ出すものではない。爆発前に比べて放射性物質の濃度は上昇していない」と主張した。
東電と福島県による放射性物質の濃度のモニタリング結果も紹介。爆発直前の午後3時29分には、一般人が年間に受ける放射線量の限度(1000マイクロシーベルト)に相当する1015マイクロシーベルトに上昇したが、爆発直後の午後3時40分には860マイクロシーベルトに、午後6時58分には70.5マイクロシーベルトに下がったとしている。
今後、原子炉と格納容器の破損による災害を防ぐため、容器を海水で満たす措置をとると説明。「水を満たす措置は原子炉容器で5時間からプラス数時間、格納容器を満たすのに10日間ぐらいかかる」との見通しを示した。
経済産業省原子力安全・保安院と東京電力によると、12日午後8時20分から福島第1原発1号機に水の注入を開始。海水にホウ酸を混ぜ、炉心上部からスプリンクラーのように水を放出して冷やす。
原発は万一の事故に備え、「5重の壁」と呼ばれる構造で放射性物質を閉じ込める。今回の爆発では一番外側の原子炉建屋の破壊が確認されたが、内側の防壁は保たれている。
建屋崩壊時は、原子炉の格納容器の圧力が高まって壊れる可能性もあったため内部の空気を出す作業を進めていた。1号機は地震発生で自動停止したものの、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動せず、炉を十分に冷やせなくなっていた。
東電は12日午後、原子炉内の水位低下が進んでいると発表した。午前9時に燃料の上部50センチメートルが露出していたのが、10時30分には90センチメートル、午後1時には1.5メートルに拡大。午後3時半ごろに1.7メートルになった。燃料の長さは4メートルで全体のほぼ半分が露出していたことになる。
原子炉に海水注入決断、廃炉も…福島第一1号機 2011年3月13日 読売
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110312-OYT1T00810.htm
地震による自動停止で原子炉内の圧力上昇と過熱を引き起こし、炉心溶融が心配されていた東京電力福島第一原発1号機に、東電は海水を注入するという決断をした。
枝野官房長官が12日夜の記者会見で明らかにした。
海水は、海から引いてたくさんの量を使用できるので、冷却の効果が高い。もともと原発には緊急用の海水注入系があり、温めた蒸気の冷却などに海水を使用している。原発が海辺に建設されるのは、このためでもある。特に、今回の緊急冷却では、海水にホウ酸を添加して使用する。原発の水は、冷却材であると同時に、中性子の速度を落として核分裂反応を起こしやすくする効果がある。
水を注入した結果、再び核分裂が活発化しないよう、反応を抑えるのがホウ酸の役目だ。ホウ酸注入は、非常時の冷却では効果があり、軽水炉には専用の注入システムが常設されている。問題は、1号機の今後だ。海水を使用した場合、設備の復旧が難しくなる。特に今回の事故では、核分裂によって生じた放射性物質が外部に放出されていることから、ウラン核燃料の少なくとも一部が、金属被覆を溶かして露出し、融解を引き起こしている可能性がある。
そのような深刻な汚染が起きたうえに海水を注入した原子炉を、再び健全な状態に戻すのはコストもかかり、実現はかなり難しい。
仮に、原子炉を廃炉にする場合、国への審査手続きが必要になるほか、放射能の高い核燃料の冷却、施設の放射能汚染を取り除く作業(除染)などが必要になる。また、構造物も40年にわたる運転で中性子線にさらされ、放射化しているため、放射線の影響を防ぐための措置を講じた上で解体する必要がある。
電力不足、長期化も 東電が14日から計画停電 他社の融通も期待薄 2011年3月13日 日経
東京電力は福島第1、第2原子力発電所の被災により、14日から地域ごとに順番に電力供給をストップする計画停電(輪番停電)を始めると発表した。他の電力会社からの電力供給量も限られ、生活に欠かせない電力不足は長引く可能性がある。原発の新規建設への警戒心が強まることも避けられず、官民そろって目指してきた「原発立国」に暗雲が垂れこめている。
東京電力は12日、都内の本社で記者会見し、週明けの月曜日から電力供給区域内で順番に供給を止める計画停電を実施する方針を明らかにした。企業のほか一般家庭も含む。13日の日曜日は実施しないが、週明け以降、電力需要が拡大し、供給力が足りなくなる見通しのため。計画停電は1951年の会社設立以来初めて。
会見で藤本孝副社長は14日の電力需給予測について「需要が4100万キロワットに対し、供給力は3100万キロワット程度で、1000万キロワットほど不足する」と述べた。計画停電を実施する期間や規模は未定だが、「少なくとも1週間ぐらい続くのではないか」とし、異常事態であることを認めた。「頼れるのは火力と(稼働中の)原子力だけ」だが、被災した福島第1、第2原発の稼働が見込めない。
2007年7月に新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の全7基が停止した際、東電は一部の大口需要家向けに17年ぶりに送電抑制を実施した。あらかじめ「需給調整契約」を結んでいる大口需要家が対象で、化学や金属など一部の工場は生産ラインの停止を余儀なくされたが、送電抑制の規模は15万~20万キロワットだった。
一方、今回の計画停電は大口需要家だけでなく一般家庭も対象にしたもので、停電の規模も500万~1000万キロワット。07年に実施した大口需要家向け送電抑制に比べて対象顧客も規模も格段に大きい。
頼みの綱である電力融通は期待できない。電力会社は自社で足りない分を他の電力会社から買うこともあるが、東電と同じく周波数50ヘルツの電力は、大きな被害を受けた東北電力や遠隔地の北海道電力だけ。60ヘルツの中部電力から融通しても、周波数変換設備の能力から受電量は限られてしまう。
東電の福島第1、第2原発の設備容量は約910万キロワットで発電量では東電全体の約2割を占める。07年の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発は再稼働まで1年10カ月を要した。炉心が溶融したとみられる今回の事故は柏崎刈羽原発の被災状況を大きく上回る。07年当時に電力供給を頼った東北電力の原発も被災しており、電力需給の逼迫は中越沖地震の時よりも深刻になりそうだ。
中長期でも電力各社の原発新増設計画に深刻な影響を与えるのは確実だ。東電をはじめとする電力各社は、低炭素化社会対応の切り札として原発の新増設を相次ぎ打ち出している。政府が昨年まとめた「エネルギー基本計画」に沿って、電力各社は30年までに14基の原発を新増設し、国内全体で発電量に占める原発比率を34%から70%に高める方針。
中部電力が同社唯一の原発である浜岡原発で6号機の新設を打ち出したほか、東電も福島第1原発で7、8号機の増設と青森県・東通原発の新設を計画している。しかし、今回の事故によって地元の強い反発が予想され、計画自体が宙に浮く可能性がある。
日本は世界的にも長年の運転実績をもとに原子力を軸にした低炭素化社会を目指すエネルギー政策を推進してきたが、根本から見直しを迫られそうだ。
停電続き企業活動に支障、自家発電の燃料切れ 節電で東北以外の生産調整も 2011年3月13日 日経
電力の供給不足が企業の事業活動に影響し始めた。電力の供給が止まった地域では、自家発電用の燃料切れで設備稼働に支障が出ている。また、電力会社からの節電要請により、生産量を調整したり、東北以外の拠点でも節電要請に応えたりする動きが広がっている。
NTT東日本は11日夜に14万2000回線が利用不可能となっていたが、この約9割は予備電源で対応していた局舎で自家発電機の燃料が不足したことなどが原因だった。
NTTドコモは停電となった地域で、燃料で動かす自家発電機、予備蓄電池の敷設などで機能を維持している。自家発電は1~2日程度しか持たないため、今後も停電が拡大すると基地局の中断が増えるとみている。
住友化学は殺虫剤の原料などを生産している三沢工場(青森県三沢市)で停電のため自家発電で操業を続けていたが、燃料切れにより近く運転を停止する見通し。
日立市を中心に茨城県に多くの製造拠点を持つ日立電線も自家発電はできるが、「設備の稼働をまかないきれる能力はない」という。
大同特殊鋼は11日に東京電力から節電の要請があったことを受け、電気炉を使い航空機や船舶向けなどの鍛造品を生産している渋川工場(群馬県渋川市)の生産を調整した。「対応可能な限り生産量を下げることで協力している」(広報室)という。同工場は12日も稼働、13日も操業する予定だ。
パナソニックは12日、東日本巨大地震の電力供給不足の事態を受け、首都圏などで屋外広告灯を消灯する節電対策を実施すると発表した。東芝は各事業所や工場が協力を始めている。キヤノンは、東北以外の拠点でも電力供給不足懸念があることから、東京電力などの要請があれば、研究開発部門や間接部門などで節電に協力する考えだ。
江崎グリコは大阪市内の戎橋そばのネオン看板と本社ネオン、東京都内の渋谷駅前にある街頭ビジョンを12日夜から当面の間消灯する。
今は 何よりも被災地の人命救助が最優先で経済的損失がどうのこうの言っていられる状況ではないと思いますが、中長期的にはこの原子力発電所の炉心溶融?問題が大きく日本経済にも響いてきそうですね…。
勿論被ばくした方や周囲に住む方の健康問題や精神的なケアの問題も気がかりですが、今回の地震ではその影響がどれだけ出てくるか全く予想がつかない(おそらくは神戸の地震の時とは比べ物にならない位大きな影響が出てくるでしょう)だけに、原発建設の問題やその原発の海外での受注といった経済的な問題ばかりでなく、今後の東北・関東地方の方の生活問題をどう1つ1つ着実に解決していくのか、その手腕が問われるように思います。
東京電力も、14日から企業だけでなく一般家庭も対象に計画停電を行うようですし、そうなるとたとえ製造設備が無事でも生産そのものができない可能性も出てきて、直接被害を受けていない企業も含め、機会損失という間接的な被害を被り、結果的に企業業績を直撃する可能性も…。
事故発生当日の日経平均先物は開始直後に1万円割れしていましたが、被害状況がどれだけ大きなものとなっているのか丸1日以上たった現在でも把握し切れていない状況を考慮すると、今後どんな予想外の悪材料が出てこないとも限らないだけに、ここしばらくはほとんどの上場企業の株価への影響も避けられないものと思われます。