日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

夏樹静子「見えない貌(かお)」

2009-09-07 | 読書
土曜から日曜日に分厚い本の一気読みをしてしまった。
文庫本というのに953円(税抜き)
厚さ25mm 667ページ 光文社8月20日発行

夏樹静子さんは長い間身体が不調で、書けない時が続いたようだが
体調が戻ってから雑誌「小説宝石」に連載した小説だろうか?



社会派ミステリーの今の世の中を写し取った物語
ネットの出会い系サイトで知りあい
付きあった揚げ句に殺された24才の主婦
相手は40代の見てくれ、風貌・性格とも不釣り合いなのに
出会い系サイトに続きメールをやり取りして深い仲になった。
年齢差から援助交際と疑われ
最愛の一人娘を殺された打ち沈む母親、
意表をつく母親の行動と次の事件

ここまでは被害者側の物語
親子に、寄り添いとんでもない不気味な殺人者を憎む、読者の私

裁判が始まり新米女性弁護士が殺人犯の弁護の担当になり、調べ回る
「悪人の弁護をする人が居るなんて信じられない」
非協力的な被害者の周辺を調べるうちに新しい事実が見えてくる。
反社会的な援助交際と見えていた加害者が
実は心優しい父親で離婚した妻とともに家族が慕っていた。

この辺りから凶暴な筈の加害者がドンドン身近になり
なんとか軽い判決になるように祈りつつ読み進む。

出会い系サイトを発端とした凶暴な事件の報道が見られるようになったが
事細かく調べて「なるほど」こういう仕組みか・・
いいとこ取りのうそ八百が当たり前の世界を納得させられる。

メールのやり取りは電話や対面と違いほんの些細な一言で誤解を招く
その反動で口当たり目辺りのいい文章になりがちで、
これまた勝手な誤解を招きやすい。
そんなこんなを考えながら最期のどんでん返しに巻き込まれる。

裁判員裁判が始まり重い判決がでるようになっている。
犯罪とは縁もゆかりもない社会の私達
被害者の惨状を見聞きするにつれ
犯罪者の態度を見ると「赦せない」と感じるのは理解できる。

70代になっても作品を発表し続ける夏樹静子さん
裁判員裁判のミステリーも期待し、
これからも読み続けたい作家でいて欲しい。
コメント
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