日々好日・いちよう

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桐野夏生著「IN」

2012-05-30 | 読書
一昨日読み終えた一冊
集英社文庫 桐野夏生著「IN」
2009年5月 単行本として出版され、
待ちに待ち、ようやく今月に文庫化された。



禍々しいカバーは鹿目尚志作 オブジェ(BC・光)

作家の鈴木タマキは恋愛における「抹殺」をテーマに
「淫」と言う小説を書こうとしていた・・裏表紙

目次は「淫」から始まり
「隠」「因」「陰」「女因(漢字が見当たらない)」
最後に「IN]」
「隠」「因」の間に「無垢人」が入るこりよう(?)

かつて話題になった「無垢人」の小説の登場人物を検証しながら
鈴木タマキの終らせた恋愛に拘泥し検証する。

タマキの相手は担当編集者

小説家に密着する編集者とはどんな役目の人なのか?
日頃不思議に思っていた。
小説は完全なる個人作業、作家の頭の中の創作を文字化するもの、
との認識だったが、編集者とは
「そうそう」とか「ちょっと違うかも」とか「別の視点は」とか
助言し、マラソンのタイムキーパーか伴走者のようなものなのだろう。

終始挟み込まれる「無垢人」は私小説で
作者の婚外恋愛を赤裸々に書いた事で有名になったが
タマキの婚外恋愛と照らし合わせて物語は進行する。

婚外恋愛(不倫)を題材にするにしても桐野夏生は一筋縄では行かせない
堅く、ギシギシと甘くはない。
社会はあれども、家庭はない。
個人はあれども汎用性はない(当たり前だが)

そんな硬派な小説家と編集者の物語だが
文庫化された解説の伊集院静も硬派で素晴らしい。

読み進みながら「無垢人」が島尾敏雄の「死の棘」をイメージしていたが
やはりそうだった事が明かされる。
(死の棘は未だ読み終えていない)

小説の中で印象に残った言葉「俺、会社に居たない」が
この小説の秀逸部分だった事が書かれている。
同感!!と思いつつうれしくなった。

タマキの恋愛は完全に終る事になり
「無垢人」の後日談はまだまだ続いき小説は終りを迎える。

ミステリアスでありながら、心の奥深く食い込む
すぐに読み返したくなるほど、読み応えのある「IN」でした。

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