菅直人首相は福島第一原発での無責任ぶりを棚に上げて、浜岡原発の全原子炉を停止させるということで、起死回生のホームランを放ったと思っているようだが、福島県の方は一向に改善していないし、飯舘村の避難だって進んでいない。それなのに、民主党支持者のなかには、急に菅を持ち上げる人間まで出てきた。現在進行形のことをさておいて、目くらましに利用されただけなのに、マスコミの騒ぐことといったらない。放射能が漏れ続けていることで、福島県内は、浜通りにとどまらずに、中通りまで深刻になってきている。一般市民が、放射線を図る機械で計測した数字が公表されるに及んで、危険が明らかになりつつあるからだ。急に高くなったといわれているのが郡山市だが、嘘か信か、これまでは地上から10メートルのところで計っていたともいわれる。福島第一原発から話題をそらして、菅首相は戦犯から英雄になろうと画策したわけだが、そこに飛びついて、世論の流れを変えようとしたのは、いうまでもなく民主党の関係者であった。すぐにやるべきことをしないで、得意の情報操作によって、政権を浮揚しようというのだからたまらない。どうせ思わせぶりにあげたアドバルーンなわけで、これから二年間の暫定処置と言っていることからも、そのうち言葉を濁すことになるはずだ。
国が御前崎の浜岡原発の全原子炉を止めるために、中部電力に要請したというのは、それなりに評価できる決断ではあるが、大事なのは今後のエネルギー政策をどうするかということだ。近く予想される地震に備えてというのであれば、あくまでも暫定的なことになり、原発の抜本的な見直しということにはならないからだ。唐突な発表であったために、誤解を招いているようなところがあるのではないか。また、地震・津波対策であれば、全国にある全ての原発に適用されるべきだ。しかし、菅首相や民主党政権のやっていることは、あまりにも場当たり的な気がしてならない。福島第一原発の放射能漏れをどう収束させるかで全力を傾けるべきでなのに、それはうっちゃっておいて平時を装う今の姿は、指導者として許されることではない。そして、目先の危機的な状況を打開できずに、表面だけ反原発のムードに便乗しようというのは、あまりにも姑息だ。中部地方は、トヨタの拠点工場があるところで、そこの生産にも影響が出そうだから、自動車労連あたりからの横槍が入って、そのうち腰砕けになるのではなかろうか。東京や首都圏を守るために、浜岡原発を止めるというのであれば、菅首相は不退転の覚悟が求められるのである。単なるリップサービスでは、すぐに頓挫するのが目に見えている。