その種を蒔いたのはアメリカではなかったか。読売新聞によると、カーター新国防長官は去る19日に行われた国防総省の職員との対話集会で、世界の不安定要因の一例として「アジア太平洋地域における過去をめぐる癒えない傷と、確固たる安全保障制度の欠如」を挙げたという。戦後70年間日本を骨抜きにしたのはアメリカではなかったか。自分たちの正義を正当化するために、ことさら日本を悪者にしたのではなかったか。それが現在まで尾を引いているのではないか。さらに、アメリカが自らの国益を重視するあまり、中共の軍事的覇権を容認している節すらある。日本が独自に国家として身構えなくてはならなくなっているのは、ある意味ではアメリカのせいなのである。永井陽之助が『二十世紀の遺産』で、マックス・ウェーバーの国際社会についての見方を紹介している。「国際秩序は、国内秩序と本質的に異なって、中央政府当局の欠如した一種の無政府状態であり、民族国家こそ、その生存と優越を求める闘争において唯一の究極的価値の担い手である。国際社会は、融和しがたい、神々の闘争の場であって、暴力(強制力)こそ最後のことばになる」。永井は「そこでの可能な選択は、善いか悪いかでも、美しいか、醜いかでもなく、『結果』によって判定される、賢明か愚劣かの違いがあるのみである」と解説している。日本が生き残っていくためには、厳しい現実と付き合っていくしかないのである。事実がそれを要求しているわけだから。
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