中共においてジャーナリストや人権派弁護士へ弾圧が相次いでいる。次々と身柄を拘束されており、当局は引き締めに躍起になっている。ジャーナリストである賈葭氏は習近平国家主席の辞任を求める公開書簡に関係したことで、当局に連行されたとみられている。中共では逮捕状もなしに、問答無用でしょっぴくことができるのである。民主党の枝野幸男幹事長が望んでいるように、法律などどうでもいいのである。そこまでしなければ中共は自らの体制の維持が難しくなっているのだ▼ハンナ・アレントは「自由は自己と自己とのかかわりにおいてではなく、自己と他者のかかわりのなかで実現される」(『過去と未来の間』引田隆也・齊藤純一訳)と述べるとともに、「活動にも公的空間という舞台とその空間を共有する人々とが必要とされるのである」(『同』)と主張した。そこで強調されるのが権力と暴力との違いである。このことに関して川崎修は『ハンナ・アレント』のなかで「権力と暴力の区別のメルクマールは、複数の人間の間の関係が相互的か一方向的かという点にある」と解説している▼中国共産党の一党独裁はあくまでも一方向的であり、命令と服従の関係が定まっている。アレントは民衆の支持にもとづいていない政府を否定するとともに、民衆がお互いに影響を及ぼすことができる公共の場の大切さを訴え、言論や表現の自由が認められない社会を容認しなかった。カール・ヤスパースの弟子であったアレントは、ナチズムだけではなく全体主義を生涯の敵としたのである。
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