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世の中一寸先は闇
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= さようなら日本 =
前夜、私はホテル日航関西空港に泊まった。次の日、少し早かったが、11時半にホテルをチェックアウト。歩く歩道の向こう側のターミナルビル4階の日航ABCカウンターでスーツケースを受け取って、余裕たっぷり出発ロビーのEブロックに向かった。前日の下調べでは、そこにアリタリアのカウンターが開いているはずだった。
おや~ァ? ないな! 変だぞ!! どうして?
出発便のディスプレイのところに行って目を凝らした。12時台の便が4便。1時台の便が5便。2時台の便が4便。3時台のが・・・
その中に、私の便、アリタリアAZ792便14 時20分発ローマ行きは・・・ ン? 無い! なんで~ェ? 悪い予感がした。
目の前の 〔?〕 印の案内ボックスのお嬢さんのところに急いだ。「すいません、AZ793便のチェックインカウンターはどこですか?確かEブロックのはずですが・・・」
「少々お待ちくださいませ。」 分厚いファイルをパラパラとめくり、もう一度パラパラと繰りもどして、中の一枚のページをじっとみながら。「お客様、その便は今日は飛んでおりません。」
「えーェ?!そんなーァ!見てくださいこれ。 ほら、ここに (自分のチケットに代わる用紙を見せた):
2 Voli
AZ - Alitalia
Volo 792
Data: martedi 6 dicembre 2011
Da: Kansai International Arpt, Osaka Japan
A: Fiumicino Arpt, Rome Italy
Partenza: 14:20 Arrivo: 19:15
Stato: confermato
つまり、復路 AZ アリタリア航空 793便 日付:2011年12月6日火曜日 関西空港 大阪 日本 14時20分(発) フィウミチーノ空港 ローマ イタリア 19時15分(着)
ステータス: コンファームド(確認済み)、 と書いてある。
最近の航空券は、E-チケットとか言って、手軽にメールの添付ファイルで届き、それをプリントアウトしてパスポートとともにカウンターに提示すれば、簡単にチェックインできるようになった。私は、今まで何度もその方法でヨーロッパを往復してきた。それなのに今回に限って躓いた。しかも、ボックスのお嬢さんは冷静に、アリタリアのローマ便が飛んでいるのは、月、木、土、日だけですね。火、水、金は飛んでいません、と言い切った。飛ばない火曜日にぼくの予約が入っている? いったいどういうことだ!
大阪のアリタリアのオフィスに問い合わせた。「お客様は昨日5日の便に予約が入っていました。予約された便にお乗りにならなかったのでその切符は規定によりすでに無効です。あらためての変更はできません。新しく切符を買って予約していただくしかありませんね。とにかくこちらで申しあげられることはそれだけです。後は発券元の代理店とお話しください」と、冷たく突き放された。
のんきに、今夜は久しぶりにローマのイタ飯だ、と思っていたのに、「世の中、一寸先は闇」 とはこのことか!
今夜のホテル代ぐらいはまだ何とかなるが、新しい航空券を正規料金で請求されでもしようものなら、たちまちお手上げではないか。どうしよう。
デジカメのシャッタータイミングは難しい 着陸の瞬間に押しても 右のタイヤの擦れた煙は後ろに残った
チェックアウトしたばかりのホテルに舞い戻り、8時間の時差があるローマの夜が明けるのをじりじりしながら待った。日本の夕方4時過ぎにやっと連絡がとれた。「なんとか対処するから、30分ほど待ってくれ」 と言われた。30分のわけがあるものか。何しろ相手はローマに住むスペイン人だ。案の定、4時間後の7時を過ぎてやっと電話が鳴った。
「済まなかった。代わりに8日の便が取れた。今は外だから帰ったら新しい予約の詳細をメールに添付してすぐ送るから、安心しろ」と言う。 すぐ送る?怪しいものだ。
悪い予感が的中して、深夜の12時まで待ったが、頼みのメールは来なかった。そして、睡魔に負けて不安のままいつしか寝てしまっていた。
虫が知らせたか、早朝4時過ぎに目が覚めた。トイレに行ってから、やおらパソコンを開け、祈る思いで立ち上がるのを待った。「あった!あったぞ!!」 これで一件落着!
「世の中、一寸先は闇だ」 という言葉があるが、すべて順調に運んで当たり前と思っているまさにその瞬間に、今回のようなアクシデントに突然見舞われる。東電の幹部だけではなく、3.11の地震と津波の被災者のだれが、次の瞬間に自分が死ぬ、あるいは家族や家を奪われると予測して、それに備えが出来ていただろうか。
聖書を少しでもかじった人なら、ノアの洪水や、ソドムとゴモラの滅亡、紀元70年のイスラエルの滅亡が突然に訪れたことをすぐ思い出すに違いない。
ぬるま湯に浸かり、怠惰に流れ、人を顧みず、自己中心的に生きているこの瞬間に、私の「死」も突然やってくる。わたしに「死」を迎える万全の心の準備ができているか?!
ここまでは前置き。ここから本題の =さようなら日本= に入るはずだったが、長さの都合で次回に譲ることにする。明日の午後、仕切り直しでローマに発つ。そうすれば、来年の6月末まで、シャワーばっかりの生活に戻ることになる。妙高や関、燕の温泉とまではいかずとも、せめて、ホテルの湯船にどっぷりつかって、神経を休めることにしよう。
日航ホテルのエレベーターホールの生け花
(つづく)