キマグレ競馬・備忘録

競馬、MLB、スポーツ観戦、趣味など気になる事を書いています。

本「街場の共同体論」

2017年10月23日 | Book

読書の秋ということで、内田樹のエッセイを読んでみました。

「人と人の結びつき」をテーマとして、家族、格差社会、教育、コミュニケーション、師弟関係について日本の状況を考察する。著者の身の回りの出来事から、世界の趨勢まで幅広く問題提起し、どうあるべきか自身の考えを提示する。

これまでこのシリーズを何冊も読んできたが、この本はテーマ別によくまとまっていて、とても判りやすかった。例えば近年、日本の社会が経済優先の思想に重点が置かれたため、家族制度が崩壊し、格差社会を生み、教育精度の歪みを生んでいる。特に学校教育については学生が「自身の学力を高めること」ではなく、「少ない努力でいかに学歴を手に入れるか」を競っている状況を指摘する。そしてそれが彼らにとって当たり前であることを、著者は危機的な状況と感じている。
自分も著者の指摘はよく判る。数年前、新入社員に業務の背景を説明していたら「無駄な知識は要らないので、何をやるかを早く教えて欲しい」と言われたことがある。曰く、「最小限の努力で最大のパフォーマンスを発揮するのが自分のポリシーだ」と。彼は能力はありそうだったが、周りと上手く行かなかったのか、結局5年ほどで退職してしまった。
自分が入社した頃は、知識や技術の習得に時間が掛かることから、よく「石の上にも三年」と言われた。今はそのような時間は無く、結果を求めすぎる、或いは急ぎ過ぎる社会になってしまったことにも一因があるかもしれない。この本を読んで、そんなことを考えた。
内田樹の本を読むと彼の思想に感化されてしまい、世の中の出来事にいろいろ意見したくなる。でも誰も聞いてくれるわけではなく、テレビで放送される事件や事故の報道に向かって文句を言うだけの自分が何だか情けない。


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