日本人の損得"感情"についてのルポ。自称"貧乏臭い"という著者が、日本人の金銭感覚について考察する。「損したくない」「得したい」という気持ちは、誰にでもある感情だが、その気持ちが強すぎて、辻褄が合わないおかしな行動をする人達がいる。著者はそういう行動に素朴な疑問を提示する。テーマは、スーパーの買い物、ポイント収集、家電の買い方、定価や貨幣、不動産の仕組み、ビジネスや人生における損得"感情"まで、独自の視点で考察しており、大変面白く読めた。
この本で紹介されている事例を読むと、他人事とは思えないことがある。わずかなポイントを得るために、無駄な買い物をすることはよくある。例えばスーパーで100円で1ポイント(1円)のサービスを得るために、98円の商品に30円の小物を付けて買ったりする。そういう行動は理論上明らかにおかしいのだが、ポイントの損得感情が働くとつい買ってしまう。今、流行の行動経済学には違和感を抱く著者の主張は、納得できる部分も多かった。
ちなみに、自分は損得感情は強いほうである。この本の内容は確かに面白かったが、定価に相応しいかどうか考えてみると、とりあえず値段相応という結論になった。損しなくて良かったかも。