久し振りに競走馬に関する本を読んでみました。
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著者は、JRA研究所で馬学講座を担当していた方で、以前、自分も栃木の研究所に著者のセミナーを聞きに行ったことがあります。この本では、馬とはどのような生き物かという観点で、競争馬を分析しています。内容は、競馬ファンの素朴な質問に答える形式で書かれて大変読みやすく、紹介されている事例は、雑誌や競馬関連本で知っている事も多かったけれど、著者の色々な経験がユーモアを交えて丁寧に説明されていたのが良かったと思います。馬の習性の研究というのは、馬の行動に対する仮説を立てて、観察を行い、統計的に分析するという地道な作業です。仮説の証明に至らないケースも多いようで、失敗談も紹介されています。色々なケースを試してみて、馬の様子を観察する。上手く行けば、馬に対する知見を得られる。それを1つ1つ繰り返して検証する。競馬ファンの素朴な疑問に答えるためにも、様々な検証が必要ということのようです。生き物を理解するというのは大変なことで(これは人間にも当て嵌まると思うけれど)不確定要素が多く、それが競馬という競技の魅力になっていると思いました。この本では、競走馬の習性の考察が中心なので、競馬に関係する記述が少ないです。そういう意味では、競馬ファンには多少物足りないかもしれません。
因みに以前のセミナーで、著者に「競馬で馬を選ぶとしたら、どんな馬を選びますか」という質問をした人がいました。回答は、あくまで個人的な意見ですがと断った上で、「スタートの良い馬を選んだほうが良い」と言ってました。「スタート直後の1秒をアドバンテージにするのは簡単だが、ゴール前で1秒の差を挽回するのは大変だから」ということでした。馬の気持ちになってみれば、なるほどと思う意見だったと記憶しています。
スタートが良い馬を選ぶには、出走馬のビデオを繰り返し見るしか無さそうです。