今年惜しまれながら亡くなったホーキングの自叙伝。
筋萎縮性側索硬化症を患った物理者が自己の半生について語る。
科学的な業績としてはブラックホールに関する量子宇宙論が有名。
彼が良く知られるようになったのは、病と戦いながら自己の理論を構築し、
一般向けに平易な文章で宇宙論を解説した本がベストセラーになったことによる。
他の著作と同様、薄い本に簡潔な記述で大変読みやすかった。
恵まれない家庭で育ち、若い頃から天才的な能力を示しながらも病を患い、
意思疎通や行動に大きな制限を受けているが、彼の本にはその状況を
悲観するような記述がひとつもない。今ある状態を受け入れて前向きに
自己の理論を展開し、そして評価されている。
彼の印象から家庭的で温和な人物を想像していたが、実生活では二度の離婚経験があり、
その経緯についての記述があったのは意外だった。病の影響で、周りで世話をする人には、
いろいろ苦労もあるようだ。
意思疎通は大きな問題で、日本でも「飯・風呂・寝る」の三語しか話さない夫に
愛想を尽かす妻がいるが、もしかするとそういう家庭環境になってしまったのかなと思った。
(有名な科学者には大変失礼だが、、)
それはともかく、裕福で良い家系に育って平和な環境で大きな苦難もなく、
同様にベストセラーを書いて有名になったドーキンス博士の自叙伝とは、
全く対称的で面白かった。