アメリカでは忘れられた戦争と言われている朝鮮戦争ですが、この本を読むと戦後の東アジアが成立するまでの政治状況と、その後のアメリカが介入したベトナムやイラクやアフガニスタンなどの戦争で苦戦した理由がよく判ります。
朝鮮戦争が起きたのは、太平洋戦争のわずか5年後なのですが、当時の米軍は第二次大戦を経験した兵士が退役して若返った後だったので、兵士のほとんどが経験不足でした。北朝鮮が破竹の進撃で、釜山の近くまで攻め込んだため米軍は参戦しますが、当初は戦闘で逃げる兵士が続出していました。軍隊(陸軍)というのは新陳代謝があって、兵士は常に入れ替わってますから、彼らのレベルを維持するのはなかなか難しい。朝鮮戦争に参戦したのは、韓国、英、オランダなどの連合軍でしたが、戦闘になると逃げてしまって任務を果たさず、少なからず当てにしていた米軍は大変だったようです。
マッカーサーや彼の取り巻きも、前の大戦で強い米軍を率いて優位に立った経験からか、作戦は机上の空論、武器の優位性や人種偏見から北朝鮮や中国を格下に見くびる態度、自軍の強さを信じた楽観主義が蔓延していたようで、中国参戦の気配や負け戦の情報が信じられない。現場の状況把握ができず、学校で教えられたような彼らの古臭い作戦で多くの兵士が犠牲になりました。結局、著者もマッカーサーやアーモンド将軍の無能振りには辛辣です。
毛沢東は参戦を決意した時、米軍の核の使用を覚悟していて、数十万の犠牲は仕方ないと考えていたそうです。それは国家存亡の危機には、それくらいの犠牲が掛るという認識があったからで、百人単位の兵士の損失でも重大と受け止める米軍とはスケールが違ってます。もしマッカーサーが主張したように、数百万人の中国軍を相手に全面戦争していたら、おそらく勝てなかっただろうというのが筆者の考えです。
「朝鮮戦争」は、学校では全く教えられることのない戦争の歴史ですが、現代の軍事や政治にも通用する教訓があってとても勉強になりました。歴史の表舞台に出てこない兵士達の真実の声も織り交ぜて、朝鮮戦争での米軍の状況はよく判りました。でも筆者はアメリカ人であるせいか、戦場となった朝鮮或いは朝鮮民族への言及が少ないのが気になりました。この土地はもともと戦場ではなく、彼らの国だったわけですから。
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