神が宿るところ

古社寺、磐座、不思議・パワースポット、古代史など極私的な興味の対象を見に行く

飯綱神社(茨城県笠間市)(常陸国式内社・その13の2)

2018-12-15 23:14:26 | 神社
飯綱神社(いいづなじんじゃ)。愛宕神社奥社。
場所:茨城県笠間市泉101。国道355号線と茨城県道43号線(茨城岩間線)の交差点(コンビニ「セブンイレブン岩間泉店」があり、「愛宕神社」への案内看板がある。)から西へ、約1.2kmのところで右折(北へ)、道なりに「愛宕山」山頂へ向かい、約2.6kmで広い駐車場。「愛宕神社」の社殿までは、駐車場から徒歩で数分。「飯綱神社」は「愛宕神社」の社殿背後の石段を上ったところにある。
社殿によれば、「愛宕山」(305m)は大同元年(806年)に「筑波山 知足院 中禅寺」の開基・徳一大師が開山し、山頂に「愛宕神社」を創建したという。密教系修験道の霊山とされ、元は「風穴山」といわれていたが、愛宕信仰の高まりにより「愛宕山」という名になったとのこと。平田篤胤が天狗小僧・寅吉に取材して書いた「仙境異聞」では「岩間山」と称しており、十三天狗が棲んでいるとしている。「愛宕神社」は火伏の神で、火事が多かった江戸庶民の信仰を受けたようで、一時は多くの参拝客を集めたとのこと。現在の祭神は、「伊邪丹大神」(イザナギ)、「火具土命」(カグツチ)、「火結命」(ホムスビ)、「水波女命」(ミズハノメ)、「埴山比売命」(ハニヤマヒメ)の5柱。
さて、この「愛宕神社」の境内社である「飯綱神社」(現在の祭神・「手力雄命」(タヂカラオ))を常陸国式内社「夷針神社」に比定する説がある。「飯綱神社」は境内社ではあるが、「愛宕神社」本殿の背後の更に高い場所に鎮座し、「奥社」、「本宮」などと呼ばれている。このような扱いは、要するに「愛宕神社」を勧請する際に地元神に敬意を示したということなのかもしれない。これが式内社「夷針神社」であるとの伝承があり、戦前はその名を称していたが、戦後に旧称(「飯綱神社」)に復したという。当神社を式内社「夷針神社」に比定する論者の根拠としては、「夷針」を「イシミ」と読み、これが当地の「泉」(旧・泉村)という地名に関係づけるものである。因みに、伝承では、「和名類聚抄」に記載がある「茨城郡夷針郷」は当地を含む地域で、「夷針神社」の名に因むもの、とする。「夷針郷」の所在・範囲が不明であるので、正否は不明だが、同書には「茨城郡岩間郷」も記載されており、当地が平安時代に「石間」という表記での記録もあることから、整合的ではないと思われる。
ところで、「愛宕山」開山の徳一(とくいつ)大師(749年?~843年)は奈良時代~平安時代初期の法相宗の僧で、最澄(伝教大師)や空海(弘法大師)と論争した記録が残っていることでも有名だそうで、ということは、実在の人物であって、常陸国や陸奥国南部で多くの寺院を建立したのも事実らしい。ただし、近世より前には「愛宕神社」の記録がないこと、「飯綱神社」=「夷針神社」であるとしたときに「愛宕神社」との関係についての説明がないことが気になる。近くの「筑波山」や「加波山」などにも天狗伝説がある(修験の霊山でもある)ことから、修験同士の権威付けのために、所在不明となっていた式内社「夷針神社」を持ち出してきたのではないか、と疑われる。
蛇足(最近多いな)。「愛宕神社」は山城国・丹波国の境にある「愛宕山」(924m)に鎮座する「愛宕神社」(現・京都市)が総本社とされる。近世までは神仏混淆・修験の聖地(寺院としては「白雲寺」)として本殿に「愛宕大権現」の本地仏である「勝軍地蔵」が、奥の院(現・若宮)に「愛宕山」の天狗・「愛宕太郎坊」が祀られていたという。また、「飯縄神社」・「飯綱神社」の総本社は信濃国「飯縄山」(1,917m)に奥社がある「飯縄神社」(現・長野県長野市)で、こちらも神仏混淆(本地仏:大日如来)で元は「飯縄大権現(大明神)」を祀っており、「飯綱三郎」という天狗が棲んでいたとされる。因みに、現・滋賀県の「比良山」に「比良山次郎坊」が居たということになっている。この3天狗を含めて「八天狗」があまたいる天狗の中の代表格であるが、笠間市の「愛宕山」のように、1つの山で2天狗の信仰が併存するというのは珍しいのではないだろうか。


笠間市のHPから(愛宕山紹介・天狗伝説)

笠間観光協会のHPから(愛宕神社)


写真1:「愛宕神社」鳥居。山頂付近の広い駐車場から。


写真2:社殿前の石段に向かうところにある鳥居。


写真3:社殿前の石段は少し暗くて雰囲気がある。「従是女人禁制」の石碑も。


写真4:社殿(拝殿)。本殿は覆屋に囲われている。


写真5:「愛宕神社」の背後にある急な石段。


写真6:「愛宕神社奥社」こと「飯綱神社」の拝殿。


写真7:「六角殿」。これが「飯綱神社」の本殿であるという。奥の石祠は「十三天狗祀」。


写真8:「愛宕神社」境内の「徳一大師宝塔」


写真9:同じく、「パワースポット」の説明石碑。わざわざこのような石碑を建てる感覚が面白いと思って撮影したが、肝心の「岩脈」を撮り損ねた。


写真10:駐車場を少し下ったところからの参道。この脇にある社号標は「日本火防三山の一 愛宕神社」とある。「日本三大〇〇」の一種なのだろうが、他ではあまり聞かないようだ。


写真11:年季が入った参道もあり、これはこれで、とても雰囲気がある。
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