私はどうして
余計な注文をしてしまったのだろう
飲み干してしまった時
私は行かなければならない
時間のゲージに降ろされた
指よりも細く透明な縦笛を
頼りなく口に含んで吸い上げると
時は螺旋を描きながら私の中へ消えてゆく
消えてゆく苦しみに
せめて少しは抗おうとするみたいに
きらきらと冷たい石がまとまりながら落ちながら
自身をゆっくりと縮小させていく
どうせ消えてしまうのなら
私は何も言わなければよかった
私は私が招いた
さよならの時計を
もう少しで飲み干すのだ
そのためだけに私はここを訪れた
*
猫から奪い返したケータイを、マキは熱心に読み解いた。
「ねえ、ノヴェル。
あなたは時計なんて持ってないでしょ?」
マキは、右手の時計を見せびらかすようにして言った。
けれども、眠りに落ちた猫にとってその興味はすっかり夢の中にあった。
「あなたが縛られるのは、夢だけね」
余計な注文をしてしまったのだろう
飲み干してしまった時
私は行かなければならない
時間のゲージに降ろされた
指よりも細く透明な縦笛を
頼りなく口に含んで吸い上げると
時は螺旋を描きながら私の中へ消えてゆく
消えてゆく苦しみに
せめて少しは抗おうとするみたいに
きらきらと冷たい石がまとまりながら落ちながら
自身をゆっくりと縮小させていく
どうせ消えてしまうのなら
私は何も言わなければよかった
私は私が招いた
さよならの時計を
もう少しで飲み干すのだ
そのためだけに私はここを訪れた
*
猫から奪い返したケータイを、マキは熱心に読み解いた。
「ねえ、ノヴェル。
あなたは時計なんて持ってないでしょ?」
マキは、右手の時計を見せびらかすようにして言った。
けれども、眠りに落ちた猫にとってその興味はすっかり夢の中にあった。
「あなたが縛られるのは、夢だけね」