眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

冷たい時計

2009-09-23 19:42:14 | 猫の瞳で雨は踊る
私はどうして
余計な注文をしてしまったのだろう

飲み干してしまった時
私は行かなければならない

時間のゲージに降ろされた
指よりも細く透明な縦笛を
頼りなく口に含んで吸い上げると
時は螺旋を描きながら私の中へ消えてゆく

消えてゆく苦しみに
せめて少しは抗おうとするみたいに
きらきらと冷たい石がまとまりながら落ちながら
自身をゆっくりと縮小させていく

どうせ消えてしまうのなら
私は何も言わなければよかった

私は私が招いた
さよならの時計を
もう少しで飲み干すのだ

そのためだけに私はここを訪れた

*

猫から奪い返したケータイを、マキは熱心に読み解いた。
「ねえ、ノヴェル。
あなたは時計なんて持ってないでしょ?」
マキは、右手の時計を見せびらかすようにして言った。
けれども、眠りに落ちた猫にとってその興味はすっかり夢の中にあった。
「あなたが縛られるのは、夢だけね」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする