滑り台にのって、一羽のカラスが遊んでいた。
誰もいないのに、ブランコはゆらゆらと宙になびいていた。
ベンチにも腰掛けず、老婆は三角定規のように土の上に座っていた。
膝小僧の上に深い皺の刻まれた指を絡ませ、その視線の先には鳩がいた。
鳩は、仲間同士でおはじきをして遊んでいる。
「猫を見なかった?」
「どこの猫だい?」
忙しい鳩に代わって、老婆が答えた。
「銀色の猫ならあっちだよ」
姿勢を崩さずに、指だけを向けた。
それにつられて、鳩が一瞬首を向けた。けれども、すぐに向き直った。
銀色の猫は、ライオンだった。
僕は、ライオンの口から水を飲んだ。
幼い二人は、ボールを蹴り合っていたが球筋は不安定だった。
逸れる度に、遠くまで走って拾いに行き戻ってくる。
けれども、ボールを蹴る動作は自信にあふれ、口元からは笑みが零れる。
また、大きくパスが逸れて、こちらに向かって飛んできた。
ボールってのは、こうやって蹴るんだよ。
僕は、お手本を示すように、小さな兄に向けてボールを蹴り返した。
それは鉄棒に当たって跳ね返り、僕に向かって返ってきた。
鉄棒に殴られたような、あるいは巨大な隕石が衝突したような衝撃が、僕を襲い、僕は猫のことを忘れた。
僕は、気を失ってしまった。
誰もいないのに、ブランコはゆらゆらと宙になびいていた。
ベンチにも腰掛けず、老婆は三角定規のように土の上に座っていた。
膝小僧の上に深い皺の刻まれた指を絡ませ、その視線の先には鳩がいた。
鳩は、仲間同士でおはじきをして遊んでいる。
「猫を見なかった?」
「どこの猫だい?」
忙しい鳩に代わって、老婆が答えた。
「銀色の猫ならあっちだよ」
姿勢を崩さずに、指だけを向けた。
それにつられて、鳩が一瞬首を向けた。けれども、すぐに向き直った。
銀色の猫は、ライオンだった。
僕は、ライオンの口から水を飲んだ。
幼い二人は、ボールを蹴り合っていたが球筋は不安定だった。
逸れる度に、遠くまで走って拾いに行き戻ってくる。
けれども、ボールを蹴る動作は自信にあふれ、口元からは笑みが零れる。
また、大きくパスが逸れて、こちらに向かって飛んできた。
ボールってのは、こうやって蹴るんだよ。
僕は、お手本を示すように、小さな兄に向けてボールを蹴り返した。
それは鉄棒に当たって跳ね返り、僕に向かって返ってきた。
鉄棒に殴られたような、あるいは巨大な隕石が衝突したような衝撃が、僕を襲い、僕は猫のことを忘れた。
僕は、気を失ってしまった。