眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

【短歌】夢幻初手

2021-03-01 09:18:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
初手緑茶カトキチうどんレンチンし醤油をかけていただきます

初手はiPhoneタップからnoteチェック音沙汰なしで平常運転

初手Bluetoothを飛ばしSpotifyプレイリストはお目覚めロック

初手がぶりカプリコ食べて生きている今日もやっぱり詩を書く一手

初手生茶ついでに冷凍庫をあけて現れたのはカトキチうどん

初手誰も教えてくれぬ昨日まで学んだ棋譜は消えてしまった

初手ポカリスエットを飲むカーテンをあける動作に意味はあるのか

初手何もはじめられない体温が35℃に満たない朝だ

初手ははてどうしたものかわからない昨日に続く毎日迷子

初手君の不在を抱え切れなくて寝返る夢の浅瀬ふたたび
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ホーム・マカロン

2021-03-01 03:16:00 | ナノノベル
 駆け出して行く時のときめきは何度経験しても消えることがない。ときめきが強すぎるのか、僕の学習能力が浅いのかわからない。いつだって、もっともっと先へ行きたいと思う。思いが余ってついつい強く引っ張りすぎてしまうことがある。

「マカローン♪」
 りんちゃんの声が遙か後ろから聞こえたのは、その手が放れてしまったからだろう。けれども、僕は止まることができなかった。もっともっともっと……。まだ見ぬ景色が見たい。抑え切れない欲望。

 見知らぬ街に僕は独りだった。抵抗の消えた道をわけもわからず歩く内に、引き留めるもののない寂しさを感じ始めた。ときめきが何だった? 後悔が押し寄せてくる。りんは無事だろうか。本当なら、まだ幼いあの子を命をかけて守らなければならないはずだった。
 スギのドラッグストア。だけど、僕の街のじゃない。無人のポリスボックス。迷子の捜索願い0件。どこかで見かけたようなホームセンター。馴染みのおでんの匂い。どこにでもあるセブン。

「独りで待ってるの? 偉いね」
 見知らぬ紳士の大きな手。褒めないでくれ!(死にたくなるよ)僕は欲望にまみれた負け犬さ。
 コンビニを離れてふるさとをたずねて歩く。カレーの匂いが帰巣本能を狂わせてしまう。正しくペアを組んだ犬の散歩。軽蔑するような眼差しから逃げる。何度もすれ違うスギのドラッグストア。もうずっと回っているのかもしれない。何日分もの散歩をした。もう歩けない。けれども、止まることもできない。(好きにしな)僕はもうたずねることをあきらめた。何も見ない。何も想像しない。

「よう帰ってきたの」
 ばあちゃんとりんは居間でみかんを食べていた。
「マカロンにルーラ教えたのよ」

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