眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

モダン・ジャッジ(無意識のさばき)

2021-03-23 10:38:00 | ナノノベル
「記憶にない……」
 確かにそれは私の声であるようだ。しかし、はっきりとそんなことを言ったという記憶はない。だとすればそれは無意識の内に現れた声と言うことができる。当然、そこには意図はない。意味もなければ狙いもない。含みもない。野心もない。悪意もなければ命令もない。興味もない。予定もない。感覚もなければ強制もない。情熱もない。詩情もない。記録もなければ確証もない。自覚もない。資格もない。義理もなければ責任もない。ワインもない。カクテルもない。肉もなければ魚もない。車もない。面識もない。ないないない。全くそれはもう何もない薄っぺらい言葉だったのだ。

「VAR!」

 リプレイを繰り返し追いかけて真っ赤な唇の動きを捕らえた。小走りに戻ってくると主審はペナルティースポットを指した。

 PKだ!

 意識的であるかどうかは問題ではない。
(舌が出たなら許さない)
 それが現代のジャッジだった。

コメント
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