高度に発達したIoTが風邪を引いた。
切れたテレビが再び明るくなりドクターはメスを手にして戻ってくる。それは予定にないオペだ。カーテンが開く。窓が開く。風が入る。虫が入る。乾いた洗濯物がぐちゃぐちゃに乱れてドラムの中に帰って行く。ガタガタガタ。エアコンが送風を止めてクラウド上の写真ファイルを吸い込んでいく。
「ああ。思い出が!」
冷蔵庫の扉が全開になってジュース、野菜、玉子、魚の切り身が飛び出してくる。冷凍庫の奥が抜けてカラオケボックスとリンクされる。知らないおじさんのエコー。「風になりたーい♪」
ドライヤーが程度を超えた熱を出して魚を炙る。魚はノックアウトされてケトルの腹にぶつかった。ケトルは真っ赤になってフェイクニュースを沸かした。
「名人は手番を放棄しておやつの権利を選択しました」
スタイラスペンが立ち上がってトースターにライオンを描くとトースターは即座に赤外線を放ちニラを焼いた。ニラはひまわりに変化した。香ばしい匂いにつられて猫が寄ってくる。働かないセキュリティー。猫はおかあさん。ひまわり驚異の成長、夏のように部屋を照らす。レンジが200Wで黒い歴史を解凍する。ラジオから交通インフォメーション。
「スマホタウンでAIアカウントが大量発生。スクランブルエッグを中心に激しい渋滞が起きてシロクマが騒いでます」
うそだ! みんな狂っている。
僕はもう早く眠りたい。
どうやってスイッチを切ればいいの。
「オッケー、グーグル」
「フー・アー・ユー?」
助けて! ホワイト・ハッカー!