今日も舞台の上ですべってしまった。僕が去った後で登場するコンビがとる笑いの量のなんとすごいことか。まるでお客さんは笑いに飢えているかのように聞こえる。さっきの僕は本当の僕じゃない。本当にやりたいお笑いは全然違うのだ。本気を出せない自分がもどかしい。
それもみんな僕のせい。あるいはみんなのせいなのだ。
(ああ、誰もわかってくれないけど)
時々、姉からの手紙を読み返している。
・
絶対に本気を出さないこと
あなたの笑いの力は善なの
だけどこの星では強すぎて
悪にもなってしまうのよ
星の器に合わせなさい
くれぐれも加減を忘れないで
徐々にあなたは馴染んでいく
星のカラーに染まっていく
それまでがまんしなさい
いいこと
これはあなたのためなの
あまり目立たないようになさい
自分の居場所だけを守りなさい
絶対に本気を出してはだめ
自分の力を見くびらないように
ね
・
今の僕は三流芸人をなんとか演じている。
客に与えられるものと言えば、不満、未練、心残りのようなものだ。
もしも全力を出して伝わってしまったら、みんなのお腹が爆発してしまうことは容易に想像できる。
(自分の力を見くびらないで)
そうだ。
あの星を滅ぼしたのは僕だった。