「眠りは絶やせぬ炎。聖火のようなものね。生き物はみんな眠るために生きている。そうとも考えられるわ。夜を越えて明日へ渡る。最も身近な約束ね。眠りは素晴らしい。夢も素晴らしい。生きるということは睡魔とつきあい続けること。あなたそう思わない? 睡魔と闘っている人もいるわ。私の敵は睡魔を浚っていく者の方よ。敵も色々ね。いるべきもの、いるはずのものを浚っていくなんて。その正体はまだこの世の科学では解明されていないのね。難しい本も随分読んでみたけれど、慣れてしまったのか私には効かないみたい。だから私はあちこち探しているの。行き当たりばったりね。中には寝る暇が惜しいなんて人もいるという話だけど、私からすれば何か新しい次元のように感じられるわね。そういう人は起きている間に夢を見ているの。夢と現が曖昧になって行くの。素敵な人生じゃない。あなたもそう思うでしょ」
「まもなく上映になりますけど、どうされますか」
「大人1枚。ここでなら上手くいくかも」
「面白すぎて眠れないかも……」
「本当?」
「個人の感想ですけど」
「ふふっ。それならそれで来た甲斐もあるというものだわ」
「ごゆっくりどうぞ」