「いつでも音楽のことだけを考えるように」
小説の結末へたどるページは破られている。謎ばかりが残るからあとは自分で考えるしかなくなった。
カフェへと続く道はどこも封鎖されている。ささやかな楽しみさえも私には許されないと言うのか。noteはいつだってメンテナンス中だ。そのすべては先生の嫌がらせ工作に違いなかった。幸せ通せんぼ。
(音楽のことだけをただ考えるように。日常にあるもののすべてが音楽的に見えるようでなければ本物とは呼べません。そこに集約されていなければ一番になることは決してないのです。そのために先生にできることならば何としても……)
どうしてそれ「だけ」じゃないといけないのか。限られたらしい人生は私のものであるはずではなかったのか。
一枚めくると楽譜は途切れていた。頭は真っ白になったが指先は未知へと立ち向かって行く。
(私はいつだって創り出してきたのだ)
どんなジャッジが下されようと構わない。私は私の指が求めるままに従おう。美しくなくてもいい。共感を呼ばなくてもいい。辻褄さえも合っていなくていいのだ。先生聴いているか。これが私だ。あなたが教えた通りにはならなかったかもしれないが、今奏でられるものこそが本当の私だろう。誰一人としてついて来なくても私は振り返らない。私は私のために鍵盤に触れているだけ。それが、私にとっての音楽。私にとっての……。
「この曲は……」
「えっ?」
「課題曲と違うのでは」
「失格だ!」
「いいえ、素晴らしい」
「……」
「素晴らしい」
「素晴らしく間違っている!」