眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

野蛮な手先

2022-08-12 10:01:00 | 夢追い
 土地が足りなかったか。家の居間が新しくできたフットボール・スクールの練習場にされていた。広さとしては明らかに不十分だったが、場所を選んでいるようでは真の一流には届かないというのは理解できた。畳でつるつると滑って転んではボールを失った。異国の選手は平然と立っていることに驚く。パスは何本もつながった。惜しいシュートもあった。全体的に言えばチャンスの数は少な目だったと思う。シュートが打てた場面をコーチに指摘された。

「パスが目的か?」

 メキシコのコーチは強い口調で問いかけた。それには少し考えさせられた。
 居間の中は最初は清潔だったけれど、誰かがスパイクに泥をつけていた。だんだんと汚れが目立つようになると、いつの間にかそれが普通になって、みんなスパイクに泥をつけて集まり始めた。どうせ他人の家だからということか。

 衛生面が低下して畳の下からゴキブリが出てくるようになった。僕はティッシュを持ってゴキブリに被せると握りつぶした。最初は2枚3枚重ねていたのが、1枚でも平気なようになった。それどころか直接指に触れてもなぜか平気だった。生殺し、半殺し、徐々に僕のやり口は大胆で野蛮なものへと変わっていった。誰かが買って出なければ……。社会には手を汚す存在が必要なのだ。けれども、1つ1つ当たっていたのではきりがない。もっと大事なのは彼らの出所を押さえること。

 畳の隙間を開けて地下の階層を下りていくと駐車場になっていた。夕方の渋滞が発生して抜け出ることは命がけだった。四方を敵の車に囲まれる。母は運転席から飛び出して手で車の角を押さえ向きを変えようとした。僕も何かしないと。

「僕、後ろでハンドル切れるよ」

 頼りになるねと母は笑った。実際にどうやって窮地を抜けたのかはわからなかった。気がつくと駐車場を出て細い坂道を走っていた。目的地まで関所を通らずに着いた。あまり混雑している様子はない。昔、人気の喫茶店だった。

コメント
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