やっぱり駄目だった。差がつきすぎていた。力の半分も出せずに破れてしまった。こんな時もあるのか。応援するものがいつも勝つとは限らない。僕はゆっくりと沈みながら再び眠りに落ちていく。現実から逃れるなら最も近い逃げ道だから。
夢の中で彼は頭を下げた。目が覚めて彼が反省の言葉を口にするのを聞いた気がした。なんだやっぱり負けたのか。夢の奥の間で感想戦が行われ、僕はすぐそばで見守っていた。研究手順の周辺が繰り返し並べられていた。
「君も何か言えば?」という顔をして観戦記者が僕を見た。(素人の僕がいったい何を言うことがあるだろう)時々、目が覚める。テレビはコマーシャルをやっている。わからない。どちらが夢の方だったか。半分ごはんの残った茶碗を下げる。返却口がよくわからない。面倒だから後は人任せに……。取材陣がぞろぞろと廊下を歩いて行く。戦いはとっくに終わったはずだった。
目が覚めるとliveの文字がついていた。感想戦の雰囲気ではない。19時を回り夕食休憩のない試合がまだ続いていた。絶望的な評価値を越えて彼はずっと指し続けていたのだ。「50秒、1、2、3……」
秒読みの声が聞こえてくる。
「詰みました」
(こんなことがあるんですね)
解説の先生が逆転を告げた。
ああ、また勝ったよ。
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