眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

あったらしいインタビュー様式

2020-08-07 03:23:00 | ナノノベル
「とすると現在は特別な事態には至っていないと判断されているということでよろしいでしょうか?」
「今、時代はまさに新しいゴー・トゥー時代に入っているわけであります。もはやかつてのようにですね、いつまでも退屈な家の中でソファーの上でくつろいだり、コーヒーを飲んだりですね、愛犬と戯れたりしている必要は全くないわけであります。家でゆっくりとミュージック・ビデオを見たりするのもいいですけど、それよりもむしろ積極的に家から飛び出して行っても悪くないわけであります。ステイ・ホームからゴー・トゥーへと乗り換えられているわけですから、しっかりとした安全、安心の様式を守りながら、出かけて行けば問題がないわけです。出かけて行けば遅かれ早かれ帰ることにはなるわけですから。途中でもしも調子が悪くなったりですね、ここは人が多いなとか、こいつはやたらと声が大きいなとか、ここはソーシャルディスタンスを全く守っていないじゃないかとか、そういう事態に直面したらですね、これはもう引き返して家に帰れば済むわけです。それは改めて言うまでもなくですね、外出の基本としては危険なところには近づかないという決まりがあるわけですから、危険な山岳地帯、海域、反社勢力の集合場所、危険なクラスターには近づかないということさえきっちりと守っていただければ、全く問題がないと考えられるわけであります」

チャカチャンチャンチャン♪

「それでは逆に、どのような段階に達すれば、再度特別事態宣言が出されるのでしょうか?」
「今、時代はまさに新しい安心と安全の様式、感染の拡大防止と経済の活性化という2つを合わせた新時代に突入しているわけであります。新しい旅の様式というのはですね、これはもうみんなでわいわいどんちゃん騒ぎするような旅とは違うわけであります。ゴー・トゥーというのは、言葉の通りどこかに行くわけですけれど、多くの人に近づくということと同じにはならないわけであります。むしろ、極力人との触れ合いを回避する。人に近づかない、人に話しかけない、話すにしてもささやくように話す。そうしたことを守った上で移動することを推奨しているわけでありまして、何も自由気ままに好き放題に行って来なさいなどとは少しも言ってはいないわけであります。安全への配慮を怠らなければ旅には壁がないわけでありますから、町をまたぎ県をまたぎ、遠くへ遠くへ、誰もいないような遠くへ行っても何も問題がないと思うわけであります。そうしてこそですね、孤独を愛することができ、孤独の向こうにはですね、今までにない新しい自分との出会い、まさに未知との遭遇が待っているわけであります。今に至ってはですね、もうステイ・ホームなんて一切口にもしないわけでありますから、ゴー・トゥー自分探しの旅、経済と自分探しとを両立することができるというわけであります」

チャカチャンチャンチャン♪

「それでは最後に。イエスかノーかで率直にお答え願います。今後、特別事態宣言が出る可能性はあるのでしょうか?」
「動き始めた時代の流れを私たちの力で変えることはできません。これはもう天地がひっくり返りでもしない限り無理なわけです。あの時はこう言ったとかああ言ったとか、それはもう言った言わないのくだらない世界になりますから、過去の発言には全く意味も興味もないわけであります。時代は今、ステイ・ホームからウィズ・ウィルスへと移り変わっていますから、人類に考えられる限りの安心・安全の対策をした上でなら、自粛なんてせずにですね、むしろ不要不急であっても積極的に外の世界に出て行って、行く先々でそれぞれにお金を落として行ってほしいわけであります。動き始めた経済を一瞬たりとも止めることはできません。数字の上では多少のリスクはあっても総合的に見たら訴追の恐れなんかは全くないわけでありますから、出るものを控える必要もありません。私は高い備長炭を置いて下駄箱全体を注視し続けてまいります。そして今までの常識などにとらわれることなく、躊躇なくアクセルとブレーキを同時に強く踏み込むことによって、新しい時代の扉を開いて行くことができると確信しているわけであります」







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