「追われています」
また問題を起こしやがったか。しかし、プライベートな問題には、一切関与するつもりはない。大事なのは試合に勝つことだ。
「だったら突き放してやろう。1点取ってこい!」
ぽんと背中を押して送り出す。責任はピッチの上で取れ。
ボールを持てば野性味を帯びたドリブルが客席を沸かせた。2人3人に囲まれても失わない。激しく当たられても倒れない。けんかで鍛えたフィジカルが、威力を発揮している。
危機はピッチの外から迫る。チャントの向こうからサイレンの音。旗を振って警備員が誘導してきたパトカーが、ベンチの前に止まる。すぐにドアが開いて、警官が降りてきた。
「犯人蔵匿の容疑で逮捕状が出ています」
「間違いありません」
「何か言うことは?」
「いいえ」
すべては私を含めた責任者の責任だ。ピッチ内外で野蛮な行いが後を絶たない。このようなリーグでは長く繁栄できないだろう。私の後で指揮を取るのは君だ。君は悪い流れをすべて断ち切ってくれ。悪いものは悪い。決して許さないでほしい。情けはまずは最も傷ついたものへ向けられるべきだろう。道理を外れておきながら、愛を求めたり、夢を与えたりできるものか。人としてまっすぐ立たなければ、足下の技術なんて意味がない。どうかここから学んでほしい。同じ過ちを繰り返さないため、私はせめて教訓の1つにでもなりたいのだ。さよなら、美しいピッチよ。ゲームはまだ続いていく。愛すべきみんなのフットボールが。
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