原村滞在中は、リンボウ先生(=林望さん)の本を読んでいた。
イギリスはおいしい2の読み残した部分を読み、その後はリンボウ先生の役立たず試乗記を読んだのだった。

後者は、かなり古い型のクルマまで含め、リンボウ先生が多数の国産車や外国車に次々と乗って、それらをコメントするという内容である。
「闘うように操る」 リンボウ先生らしい書き方だね。

これは英国車の古典的スポーツカー、ケイターハムについてのタイトルだ。
クルマもこのクラスになると、闘わないと操れないのである。

「英国車」と一般的に言われるクルマでも、資本はすでに英国ではないというクルマのブランドだらけである。
例えば、ミニやロールスロイスの資本はBMW(独)だし、ベントレーはフォルクスワーゲン(独)で、ジャガーやランドローバーはタタ(印)である。
スウェーデンのボルボはたしか中国資本だったな。まあそんな具合だ。
私のクルマはジャガーXのエステート(ワゴン車)で4WDである。購入当時ジャガーの最廉価車種だったし、今では登録から16年近く経っていて、売っても価格がつかないか、あるいは逆に処分費用としてのカネをとられそうなクルマだ。古いのでそれなりに故障するしね。新車当時ですら、「そんなの買う?」って笑われたりもした。
当時の我が家には大型犬2頭がいるし、標高1,600mにある山荘に冬にその子たちと一緒に移動できるワゴン車(背の高いSUVには興味がない)が必要だったのだ。そのためにはまずは四駆であり、荷物と座席部分の間にしっかりした金属製ドッグ・ガードを設置できるオプションがあることが必要だった。それって日本ならスバル・アウトバック(実際前に乗っていたのはそれ)、あとはボルボ、レンジローバー、そしてジャガーなどなど・・・。しっかりしたドッグ・ガードがあるってのは、狩猟を想定したもので、かなり選択が限られて来る。そんな背景があって、このクルマに乗ることになったのだ。
私がこれを買った16年前、ジャガーは、ランドローバーやボルボとともに、フォード(米)の海外ブランドのひとつだった。まだその頃は新興国(北アフリカ、中東、東・南アジア)からの需要は今ほどはなく、それらフォード傘下の海外ブランドのクルマの最大の販売ターゲットとなる市場は、当然米国だった。

だから当時、ジャガーを出来るだけ多く売るためには、米国人が好むジャガーを作る必要があったのだ。
米国人がジャガー等の英国車に抱くイメージは「古いクルマ」というイメージであった。
昔のクルマのダッシュボード周りは木製で、今ならそれがたとえ木製であっても、垂直に立ち上げ始めてすぐにそれを水平に近くグニャッと曲げることも可能だろうが、昔はそうは行かなかった。だからこのクルマのダッシュボードは垂直に近い状態で立っている。その結果運転席から見た時の、フロント・ウインドウを通した視界も垂直方向に狭く感じる。
右左折時、ウインカーを動かしてライトが点滅する時に出るカチカチという音は古臭く、弱弱しい。
このクルマは実際、意図的にそんな作りになっている。それが米国人が感じる英国車のクラシックなイメージで、フォードはそんな英国車を米国でたくさん売ろうとしたのだろう。

その目論見は失敗し、このクルマは売れなかった。
2009年にはこのXタイプという車種は生産が中止されるが、その少し前にフォードはジャガー、ランドローバー、ボルボの3ブランドを手放してしまう。ジャガーは資本的にはインドのタタ・グループの傘下に入った。
米国人が持つ英国車への郷愁みたいなものから、ジャガーは解き放たれ、今では自由にイマ風にデザインされ、欧米だけでなく発展途上国も含め世界各地で売られている。
購入層の内容がじわりと変化しており、ジャガーというエンブレムが付いていれば、それまでのジャガーの特徴である内装やサスペンションがどうだったか等ということに無関係で無関心な層が、購入者の中心をなすようになったのだろう。それゆえ往年のジャガーをよく知る人々は、逆にジャガーに興味を失ったりもしている。
そのあたりはファッションのブランド品と似ていて、年齢的にあるいは地政学的に新しい購入層が生まれると、それを生産する側も新たな工夫を始める。
原村に来るたびに大量の落ち葉がクルマの中に入る。そして冬は雪も入る。

冬季はピレリのスタッドレスでここへやって来る。

そういえば、ピレリ(イタリアのタイヤメーカー)も、何年か前に中国の資本に買収されたね。
時代ですねえ。
諏訪大社上社前宮の交通安全お守り。今年も無事故で過ごせますように。

今のところ、クルマを買い替える予定はない。
2024年春の車検(登録から17年)も通すでしょうねえ。
古いクルマゆえ重い税金がかかる。古いものを大事にしようという常識に逆らう税制になっていて、我が家はそれに耐えながらまだこれに乗っている。そのうち電気自動車になるんだろうけど。買換えまでは、革のシートに一生懸命クリームを塗って維持しましょうね。
【つづく】