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消費増税でどうなる? 日本経済の真相 【2014年度版】 |
クリエーター情報なし | |
KADOKAWA/中経出版 |
この方は、元財務省官僚で経済評論家である。昔そこで仕事していただけあって、財務省の裏には実に詳しい。これがこの人のウリなんだろう。この書籍のテーマ、毎年書いているようだ。同じタイトルの本をかつて読んだことがある。
歳入庁や、円安、経常収支など気になる話題はあるが、今回は原発の経済性について、感想を書く。即脱原発や徐々に脱原発かで、先の選挙でも論点になっていた。この本では、経済的にどうだ、ということが買いてある。結論は、経済的には「フェードアウト」(徐々に消える)そうだ。
内閣府試算の現在の発電コストは、原発が8.9円/KW時以上、最も安いのが石炭で9.5円、次に安いLNG火力は10.7円、そして自然エネルギーである太陽光は33.4~38.3円、陸上風力が9.9~17.3円だ。
これに原発は再処理・廃棄物処理費などのバックエンドコストがかかり、2~3円以上のコストアップ。さらに技術開発の補助金が1.6円。発送電分離で送電費が2~4円。そして事故の保険費用、福島原発の損害を40兆円と見積もれば、それをカバーする保険料は3.0円。これらを足し算すると、8.6~11.6円。
従って原発コストは、先の内閣府の数字に、もろもろの費用を合算すると17.5~20.5円。自然エネルギーよりは安いが、石炭やLNG火力よりは高い。経済原理では、価格競争力がなくなり、原子力はフェードアウト、となる。氏の議論は以上である。
実際は、不安定な自然エネルギーにはバックアップが必要であること。原子炉の減価償却などがあり、またCO2をほとんど出さない燃料であること、純国産エネルギーであり、安全保障時の観点もある。また石炭やLNG価格が変動すれば、また変わる。それに自然エネルギーも量産効果があり、さらにコストも落ちる。いろいろな要素があり、価格競争力だけではない。
世界中は、まだ原発の増産体制だ。このビジネスチャンスを放棄するのはもったいない。原発を廃棄するにも技術開発費用が掛かる。この費用も捻出しないといけない。まあ、業界の主力エネルギーであるLNGは、しばらく基幹エネルギーであるのは変わらないな。ガス主任技術者の仕事はしばらくなくならないね。