碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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タレントマネージメントという仕事

2008年10月02日 | 本・新聞・雑誌・活字
先日、かつて大学で私のゼミに所属していたメンバーが、何人か集まった。卒業して5~10年という面々で、毎年、11月には全体集会?みたいなゼミの同窓会が行われるが、今回のはそれまでの「つなぎ」となる小さな飲み会だった。

来られる人が来る、といったものだったが、テレビ局にいるメンバーが多く、キー局のほとんどが揃っていた。

中に一人、久しぶりに会った女子がいて、彼女はタレントのマネージメントをやっている。彼女が担当し、面倒をみてきた女性タレントは、今や誰もが名前を知っている人だったりして、テレビや雑誌で顔を見るたび、その背後に教え子である彼女がいる(仕掛けている)と思うと、面白い。

マネージメントの世界では、まだ駆け出しといわれるキャリアだが、その女性タレントを十分「売れっ子」にした手腕は見事だ。これからもっと学んでいけば、いずれ”大物マネージャー”になっていくかもしれない。勉強、勉強。

ということで、オススメの参考書は、野地秩嘉さんの『芸能ビジネスを創った男~渡辺プロとその時代』(新潮社)だ。

ザ・ピーナッツ、クレージー・キャッツ、小柳ルミ子、天地真理、森進一、ザ・ドリフターズ、キャンディーズ・・・こう並べると芸能界50年史が出来上がってしまう。

彼らを擁していたのが渡辺プロダクションだ。この本は、創業者・渡邊晋と彼の“王国”の軌跡を、丁寧な取材で追ったノンフィクションである。

まず驚かされるのは、現在当たり前になっている日本の芸能ビジネスの基本を、ナベプロが、いや渡邊晋が作ったという事実だ。

一人のスターを組織的に売り出す手法。タレント個人が原盤制作権を持てるシステム。「8時だョ!全員集合」など、番組制作も組み込んだ事業展開。いわば近代産業化である。

もちろん順風満帆な時だけではない。タレント、マネージャーの独立や、一種の“大企業病”も発生する。

しかし、その対応の中に、渡邊晋という稀有な経営者の真骨頂がある。金や権力を求めない。穏やかで威張らない。部下でも年下でも、多くの知恵を集めた上で、自らの判断を下すのだ。

そこには「帝王」「ワンマン」というイメージとはほど遠い、何ともいえない爽やかさがある。

芸能ビジネスを“表通りの仕事”にすること、芸能プロを“普通の会社”にすることを目指した男が逝って22年。この本のおかげで、ようやくその実像が見えてきた。

「芸能ビジネス」を創った男~ナベプロとその時代
野地 秩嘉
新潮社

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